第38回全農日本カーリング選手権大会(2月7日~14日)が北海道稚内市のみどりスポーツパークで開催される。  2022年2月に控える北京五輪の代表選考も兼ねた大会で、女子では昨年王者のロコ・ソラーレが連覇を達成すれば、日本代表に内定…

 第38回全農日本カーリング選手権大会(2月7日~14日)が北海道稚内市のみどりスポーツパークで開催される。

 2022年2月に控える北京五輪の代表選考も兼ねた大会で、女子では昨年王者のロコ・ソラーレが連覇を達成すれば、日本代表に内定となる(※)。
※五輪の出場権は3月にスイスで開催される世界選手権などで争われる。

 そのため、代表内定を狙うロコ・ソラーレはもちろんのこと、他のチームも「ストップ・ザ・ロコ」を掲げて、大会に向けての士気は高い。例年以上に白熱した戦いとなることは間違いないだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、出場チームは従来の9チームから7チームに絞られての開催となるが、大会の中心となるのは、やはり「トップ4」と呼ばれるロコ・ソラーレ、中部電力、北海道銀行フォルティウス、富士急の4チームだ。



12月に軽井沢で行なわれたワールドカーリングツアージャパンによるエキシビション『日本TOP チーム強化試合 in 軽井沢』において、4戦全勝で優勝したロコ・ソラーレ。(C)WCT-JAPAN

 なかでも、本命視されるのはロコ・ソラーレ。「トップ4」がそろって戦った昨年11月の稚内、12月の軽井沢でのエキシビション大会で、連続優勝を飾っている。特に軽井沢での大会では、日本選手権と同じ10エンド、38分の持ち時間という本番使用のレギュレーションで、4戦全勝という結果を残した。

 大会後、スキップの藤澤五月は「勝ち切れた、というところでは自信を持っていい」と語り、サードの吉田知那美も「結果はすごくうれしい」と笑顔を見せた。

 ただ一方で、藤澤が「課題はありましたし、完璧ではなかった」と言えば、吉田知も「この大会で収穫した情報であったり、課題であったりを、いかに全日本選手権につなげていくか、ということのほうが大事だと思っている。他のチームもしっかりと対策を取ってくると思うので、油断することなく、私たちも(日本選手権までに)成長できるように準備していきたい」と、勝って兜の緒を締めた。

 女王としての慢心はなく、さらなるレベルアップを図ってきたロコ・ソラーレ。理想的な状態で本番を迎えることができそうだ。

 北海道銀行も頂点を狙えるだけの力はある。軽井沢の大会ではロコ・ソラーレを相手に、船山弓枝→近江谷杏菜→小野寺佳歩というお馴染みのラインで好ショットがつながり、多くのエンドで好形を作っていた。

「やりたいことはやれている。あとは、私がしっかり決め切れれば、点数が取れると思います」と、スキップの吉村紗也香の表情からは確かな手応えが感じられた。

 爆発力という意味では計り知れない。ラウンドロビン(総当たりの予選)6試合という今年のような中期決戦では、早い段階でアイスの状態がつかめれば、6年ぶりの戴冠も見えてくるはずだ。

 その北海道銀行と初戦で対戦する富士急も他チームにとって怖い存在だ。「伸び率という意味では圧倒的に富士急」と断言する関係者もいるほど、近年で急成長を見せたチームであり、上位を食らう力は十分に備わっている。

 試合数が少ない今季は、リードバイスの小谷有理沙がジュニアの大会に、セカンドの石垣真央、サードの小谷優奈、スキップの小穴桃里の3選手はミックスダブルスに挑戦。それぞれが個の力を伸ばす強化も図ってきた。その力が氷上でうまくかみ合えば、台風の目となる可能性は大いにある。

 一昨年の覇者で、昨年準優勝だった中部電力も虎視眈々と女王奪還を狙う。五輪選考のかかる日本選手権を前にしても、サードの松村千秋は「緊張感は、いいのか悪いのかわかりませんが、普段どおりあんまりないですね」と笑い、平常心で大一番に臨む。

 バックエンドを担う松村のチャンスメイク能力と、フォースの北澤育恵の決定力は国内でも屈指。フロントエンドを支えるリード石郷岡葉純とセカンドでスキップの中嶋星奈が安定した働きを見せれば、10戦全勝で栄冠を手にした一昨年の再現もあり得る。2月11日のロコ・ソラーレとの直接対決は、大会の行方を左右する大一番になりそうだ。

 また、今大会では5人目の選手の存在も注目されている。上記4チームは今季、いずれも新加入の選手を迎えているからだ。

 ロコ・ソラーレは2010年バンクーバー五輪などで活躍した石崎琴美、富士急は2014年ソチ五輪に出場した苫米地美智子という、それぞれ経験豊富なオリンピアンを獲得。両選手は、ストーンチェックなどの情報収集や、客観的な視点からのアドバイザー的な役割をこなしつつ、氷上の選手にトラブルがあった時には、それに対応できる技術とメンタルを備えている。2チームにとっては、かなり心強い存在になるだろう。

 対照的に、中部電力は鈴木みのり、北海道銀行は伊藤彩未という若手を加入させた。ふたりは2001年生まれで同い年。鈴木は中学2年時、伊藤は高校1年時という若さで日本選手権に出場するなど、高いポテンシャルを秘めたルーキーだ。

 チームの将来を背負うタレントでもあり、中部電力の両角友佑コーチ、北海道銀行の佐藤浩コーチ、それぞれの采配次第でアイスに立つ可能性は高い。好ショットを連発して"シンデレラガール"のような活躍を見せれば、そのチームが勢いに乗って頂点に駆け上がっていくかもしれない。

 ここ何年かで競技レベルが上がり、今や選手たちも「本当にどこが勝つかわからない」という大混戦。その熾烈な戦いを制して、北京五輪へ続く道を歩むのはどのチームなのか。1週間の戦いから目を離すことができない。