「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/予選1月11日~、本戦1月16~29日/ハードコート)の予選最終日。日本勢は添田豪(GODAI)と守屋宏紀(北日本物産)、穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)の3人がここまで勝ち残…

 「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/予選1月11日~、本戦1月16~29日/ハードコート)の予選最終日。日本勢は添田豪(GODAI)と守屋宏紀(北日本物産)、穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)の3人がここまで勝ち残り、本戦入りをかけて最終ラウンドを戦った。

 その結果、守屋は予選第6シードのビヨン・フラタンジェロ(アメリカ)に6-4 4-6 4-6で逆転負けを喫したが、添田と穂積が勝利。世界ランク141位の添田は同150位と互角のマルコ・トゥルンヘリッティ(アルゼンチン)を6-2 3-6 6-4で退け、22歳の穂積は同年代の21歳ビクトリヤ・トモバ(ブルガリア)を7-5 6-2で破った。添田は一昨年のウィンブルドン以来のグランドスラム本戦出場で、穂積はシングルスでは初の本戦に挑む。

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 「久しぶりにしびれた試合でした」

 マッチポイントでバックのボレーがきれいに決まった試合を、添田はそう振り返った。昨年は一度もグランドスラムの本戦に出られず、しかも予選突破での出場は2013年の全米オープン以来。最終セットは常にゲームを先行しながらも最後までわからなかった苦しい展開や、「大事な場面では失敗することが多かった」というボレーで締めくくったことも、「しびれた」要因だった。

 第1セットは添田、第2セットはトゥルンヘリッティが奪い、最終セット。添田はダブルブレークで4-0と大きくリードするが、第6ゲームで5度のデュースの末にブレークを許す。すぐにブレークしてふたたび引き離すが、またもブレークバックされた。第9ゲームはラブゲームでキープされ、少人数で大応援を繰り広げるアルゼンチン・サポーターにも押される嫌なムード。しかし5-4で迎えたサービング・フォー・ザ・マッチ、2本目のマッチポイントで果敢に前に出て難しいボレーを決めてみせた。

 32歳になってなお、これまで「得意な部分ではなかった」サーブとボレーが向上している楽しさを感じているという。昨年の11月に結婚した影響も大きい。

「違う意味でモチベーションが上がった。かっこいいところを見せたいというのもあって(笑)」

 新婚の妻は来ていないが、「急きょ応援にくるということは?」と聞かれると、「可能性はあるかもしれないですね」と声を弾ませた。本戦では「シードを倒したい」と抱負を語ったが、初戦の相手は56位のマレク・ジャジリ(チュニジア)。予選突破の勢いを生かしたい。

 予選12回目の挑戦にして初の本戦切符をつかんだ穂積の目から涙があふれた。昨シーズン終盤には227位までランキングを落とし、「予選に出られるとも思っていなかった」と振り返る。あきらめかけていた予選出場が叶い、1、2回戦に快勝。12回目の予選挑戦で最終ラウンドまで進んだのは昨年の全米オープンに続いて2度目だった。「あと一つ」で敗れる痛みは一度味わえば十分だ。

 スコア以上に競った印象の第2セットだった。1-2から5ゲームを連取したが、ラリーは長いしデュースも長い。それでも勝ちきったのは、「自分を変えたい」思いの強さだったようだ。 

 1994年生まれの22歳。ジュニア時代から粒ぞろいと期待された世代、いわゆる「94年組」の一人だ。そのメンバーから昨年、日比野菜緒(LuLuLun)が全豪オープンでグランドスラム・デビュー。今回は尾﨑里紗(江崎グリコ)が本戦ストレートインを決めている。

「そこに追いつきたいという気持ちもありましたし、この年になって(22歳)早く結果を出さなきゃ、変わらなきゃという気持ちもあった」と穂積。フォアハンドのフォーム改良に取り組んだり、「なんとかなるか」「ま、いっか」というアバウトな性格もあらためて「自分の弱さにもしっかり取り組めるようになった」と話す。

 悲願の本戦入りに同い年のライバルの影響は大きかった。同じスタートラインに立った「黄金世代」たち、さらにそこから抜け出すのは誰か。互いに刺激し合ってきた彼女たちの挑戦が楽しみだ。

(Tennis Magazine/ライター◎山口奈緒美)