今季シニアデビューした期待のホープ、17歳の鍵山優真が、冬季国体フィギュアスケートの少年男子個人の部で、2位に30点余りの大差をつける圧勝で優勝した。 27日のショートプログラム(SP)では、4回転を跳ばないジャンプ構成というジュニア課題…

 今季シニアデビューした期待のホープ、17歳の鍵山優真が、冬季国体フィギュアスケートの少年男子個人の部で、2位に30点余りの大差をつける圧勝で優勝した。

 27日のショートプログラム(SP)では、4回転を跳ばないジャンプ構成というジュニア課題ながら95.12点の高得点をマークして首位発進。4回転2本を跳んだシニアルール下の全日本選手権SPで出した98.60点と比べ、その得点差がわずか3.48点だったことから、鍵山本人も思わず苦笑い。「ない、ない」と言わんばかりに顔の前で右手を振ってみせた。

「ちょっとさすがに出すぎたかなと思いました。出ても90点くらいだと思っていたので。何にも言えないです。これ以上もないのかなと思います」



冬季国体男子個人の部で優勝した鍵山優真、ショートプログラムの演技

 ただ、試合を重ねるごとに複雑な曲調とテンポが続く難しいプログラムを着実に滑りこなしていることは間違いない。その証拠に、4回転ジャンプがなくても、得意のスピンとつなぎとステップなどの表現力で得点を稼ぎ、演技構成点は全日本選手権から約2点もアップ。もちろんジャンプの質の向上もある。4回転と比べてストレスなく跳べる3回転でのGOE(出来栄え点)加点は2点以上が並び、技術点はただひとり50点を超えた。

「今日のSPはジュニア課題なんですけれど、一番いい演技ができたので、とてもよかったと思います」

 一方、28日に行なわれたフリーの『アバター』では、冒頭の4回転サルコウで転倒したが、4回転トーループ2本に、プログラム後半には3回転ルッツ+3回転ループの高難度の連続ジャンプやトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)2本を決めて、トップの175.70点を叩き出し、合計270.82点。完全優勝を飾ってみせた。

「4回転サルコウで珍しいミスというか、転倒をして、自分でもびっくりしましたが、その後にしっかりと立て直すことができたので、そこはひとつの成長かなと思います。つなぎやステップでは自分の感情を込めて踊ることができました。連戦で疲れている中、しっかりと集中できたのは自分にとってすごく成長を感じたし、ひとつのミスがあってもすぐに立て直して集中できたのはよかったと思います」



冬季国体男子個人の部で優勝した鍵山優真、フリーの演技

 今季6戦目で4勝目を挙げた戦いを終えて、鍵山は満足そうに振り返っていた。

 今季は非公認ながら(当時の)世界歴代5位相当の287.71点で優勝するという鮮烈なデビューを飾った関東選手権をはじめ、東日本選手権準優勝、国内選手だけで開催されたグランプリ(GP)シリーズのNHK杯初優勝、全日本選手権3位、全国高校選手権(インターハイ)優勝、そして今回の国体優勝と、計4タイトルを獲得する輝かしい成績を挙げた。

 もちろん、いずれも国内大会での結果で、世界のトップ選手たちとの競演はほとんどなく、シニアデビューの戦いとしては物足りなさがあることは否めない。強いて挙げれば、全日本選手権で羽生結弦、宇野昌磨らと戦い、2年連続表彰台に立って3位に食い込み、3月の世界選手権(スウェーデン)代表になったことで、その実力が証明されたと言っていい。

 イレギュラーなデビューシーズンを戦いながら、世界的な振付師のローリー・ニコル氏が作ったプログラムを滑りこなし、4回転ジャンプの種類を増やし、苦手意識のあったトリプルアクセルも安定感を増してくるなど、確実に成長している姿は見せた。

 周囲がいくらもてはやしても、17歳の鍵山は貪欲な姿勢を崩さずに、しっかりと前を見据えている。

「試合や練習を通して、だんだん自分の理想としている完成形には近づいてきているので、ジャンプを跳ぶだけではなくて、自分が理想としている表現力と滑りはしっかりできているのはよかったかなと思っています」

 国体の公式練習では4回転ループにも挑戦して、着氷がわずかに乱れながらも降りていたという。

「4回転ループは、入り方を変えてから恐怖心がなくなったので、正月明けからずっと練習を続けています。フリーの練習として『サルコウとトーループをやれ』と言われていたんですけど、それでも時間が余っていたので4回転ループをやってみようと思って跳んでみました。

 練習でとても確率がいいという状態ではなく、正月明けに降りたのは2回なんですけど、ここ最近はステッピングアウトなどで転ぶ回数が少なくなってきたので、少しずつ自信にはなっているかなと思います」

 北京五輪が控える来季での3つ目の大技投入もすでに視野に入っており、その成長は目を見張るものがある。

 世界選手権の開催はまだ不透明な部分もあるが、国際スケート連盟(ISU)は予定どおりに開催する方針のようだ。

「気持ちの準備はできていないんですけど、でも、ある段階がきたら、いつでも準備できるよう努力していきたい」

 デビューシーズン最後の国際大会で、思う存分、実力を発揮してもらいたいものだ。