専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第290回 ゴルフをやっている人間と、やっていない人とでは、ゴルフに対する認識がだいぶ違っています。 常日頃、ゴルフをやっている人は、スポーツや健康的なレジャーとして捉えています。…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第290回

 ゴルフをやっている人間と、やっていない人とでは、ゴルフに対する認識がだいぶ違っています。

 常日頃、ゴルフをやっている人は、スポーツや健康的なレジャーとして捉えています。

 ところが、ゴルフをまったくやらない人にとっては、そのイメージだけを見て「時間に余裕がある、金持ちの人の道楽」となってしまいます。やっかみもあるでしょうが、決していい印象は持たれていません。

 とりわけ、ゴルフをやる人間の身近にいながら、ゴルフをやらない世の奥様方の、ゴルフに対する見解は手厳しいです。

 おおよそ「高いお金を払って、遠いところまで行って、丸一日時間を潰して、ストレスを溜めて帰ってくる、意味不明の遊び」と見ています。そして、その思考の先には「だったら、たまには子どもの面倒を見てよ。自分ばっかり遊んでないで」という思いがあるわけですな。

 だから、どのゴルフ場の売店にもお土産コーナーがあるんですね。そこには、ゴルフにまったく関係のない、地元名産の米とか漬物とか、クッキーやスイーツとか、よく置いてあります。これは、接待ゴルフやコンペなどで使う場合もありますが、多くは家庭用です。

 要するに、「丸一日、大切な休みをゴルフに使ってしまい、家庭サービスを疎かにした、せめてもの罪滅ぼし」として、世のお父さんたちはそこでお土産を買って、家に持って帰るのです。

 最近、家庭内がピリピリしているなと感じたら、迷わずお土産を購入。帰ったら先手必勝で、すぐに奥様に手渡しましょう。さすれば、必ずや道は開けるでしょう......って、なんだんね。

 そういえば、年末にゴルフの予定があって、宅配便でキャディーバッグを配送するためにコンビニへ持っていきました。その時、店が混んでいて順番待ちをしていたら、同じマンションの住人が声をかけてきました。

「荷物、デカいですね、楽器ですか?」と言われて、面食らいました。え~、これはどっからどう見ても、ゴルフバッグでしょ。カバーには一応、『マルマン』って、メーカー名まで書いてあるし......。

 そのご近所さん、ゴルフをしないから、デカい弦楽器だと思ったんですね。いやいや、だとしても楽器は普通、宅配便を使わないでしょ。大事に手持ちするんじゃないですか。



ゴルフをやらない人にとっては、キャディーバッグさえ知らないんですね...。illustration by Hattori Motonobu

 まあ、そんなエピソードからもわかるように、ゴルフをしない人はキャディーバッグすら見たことない。そういうことなんですね。

 というわけで、昨春から続いている新型コロナウイルスの感染拡大のなか、ゴルフに対する世間の認識のズレがまざまざとわかりました。

 昨年の3月頃から、ゴルフはブルジョアの遊びみたいな捉えられ方をされて、憎悪の対象となりました。そこから、"ゴルフ系"芸能人の新型コロナウイルス感染があって、その憎悪はピークに達しました。

 そして現在、ゴルフをやっていない人が持つ変な誤解も何とか解けたように思いますが、ゴルフをしていることを世間に堂々とアピールするのは今なお危険です。

 例えば、フェイスブックでつながる私の友だちの多くは、ゴルフ関係が多いです。友だち申請を受ける時、プロフィールを見れば相手の趣味や職業がわかりますから、こっちの職業についても、相手は理解してくれるだろうと思っています。

 けど、どこか遠いゴルフリゾートなどに行って、ゴルフを満喫している写真などをアップすると、ごくたまに「いいなぁ~、タダでゴルフに行けて」とか言ってくる人がいます。「いやいや、これは仕事ですよ」と言っても、大抵納得してくれません。

 ゴルフをやっている人であってもこうですから、「世間の目って、そういうものだな」と改めて痛感させられます。

 余計な摩擦を避けて、賢く生きている人は、今の時期、「ゴルフをバンバンやっている」なんて、人前では決して言いません。ましてや、SNSでそのことを発信するなんて、論外です。炎上を煽っているようなものですから。

 ただ一方で、東京都で新型コロナウイルス感染者が1000人を超えて大騒ぎになった頃、友だちがゴルフをしようとコースを探していたら、いくつかのコースは満員で断られたとか。相変わらずのゴルフ人気。現実はこうなんですね。

 私は現状、ゴルフのラウンドを極力控えていますけどね。

 ゴルフをする時って、たとえ自分が予約をして周りの人を誘ったとしても、家族には「ゴルフに呼ばれちゃって、参ったよ」と言っていることが多いです。ですから、ゴルフをしている人の家族は、一緒にラウンドしている同伴メンバーに対して、快く思っていないフシがあります。「ウチの人をゴルフに誘わないで頂戴ね」と。

 たぶん、私もどこかの家族からは"悪者扱い"になっているのでしょうね。

 そして今、新型コロナウイルスの第3波が襲来。首都圏をはじめ、全国のいくつかの府県や都市で緊急事態宣言が発令されたなか、ゴルフをするお父さんと、まったくゴルフをやらない家族との間で、こんなやり取りがなされているのではないでしょうか。

 お父さんは、おそらくこう言います。「ゴルフはひとりで車を運転して、外で黙々とラウンドをして、スループレーでお風呂にも入らずに帰ってくるから、絶対安全だって」と。

 それに対して、世の奥様はこう反論します。「コロナが感染する、しないの問題じゃないの。これだけ感染者が増えている最中にゴルフへ行く、という行動が不謹慎なわけ。ピントがズレまくりよ。少しはニュースを見て、今置かれている状況を考えて」と。

 こうなると、話は平行線をたどる一方です。結局、お父さんはゴルフを強行。家族に白い目で見られながら、何食わぬ顔で外出していきます。

 ただラッキーなことに、ゴルフは朝早く家を出ていくので、近所の人は誰も気づきません。帰りも、今は日没が早いので、真っ暗になってから帰宅。周囲の目はごまかすことができます。

「ゴルフは安全」と言いながら、一応世間の目を気にして、目立たないようにラウンドする。ゴルフをする人にとって、今やこれが鉄則のようです。

 ゴルフに対する世間の視線は、相変わらず厳しいと思います。それよりも、銀座の高級クラブや、ヨットやクルーザーで遊んだり、豪華客船の船旅で出かけたりするほうが、よっぽどお金もかかりますし、非難の対象になることは明らかです。でも、そういうブルジョアで、バブル的な遊びは、誰もが最初からヤバいとわかっているので、SNSで呟くような人はいません。

 翻(ひるがえ)って、ゴルフは庶民的な匂いも3割ぐらいするので、他人に公言しても大丈夫かな、と思っている人がちらほらいます。だから、一番やり玉に上がりやすいのです。

 特にSNSが普及してから、反対意見をアップする人の数が急激に上昇しています。

 例えば、SNSで何か意見を言ったとしますよね。そうした場合、あくまでも個人的な推測ですが、その意見を単に聞いただけの人の反応は、100人いたら80人は概ね肯定的です。否定的な人は2割ぐらいでしょうか。

 けど、実際にSNSで反応する人は、6割ぐらいが否定的になってしまいます。つまり、2割ぐらいの少数意見の方々が、発信された意見に対して、SNSで積極的に反対意見を繰り出してくるのです。きっと、何か引っかかることがあるのでしょう。

 片や、8割いる肯定派の方々は、SNSで意見を述べるほど熱心じゃない。だから今の世の中、何を述べても、反対意見が目立つ現象になりがちです。

 そんなわけで、ゴルフは暖かくなるまで、ほどほどに。もしやるのなら、誰にも言わないことです。