DeNAの公式ドキュメンタリー「FOR REAL―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―」(DVD・ブルーレイ、28日発売)が14日から神奈川県内6つの劇場で先行上映される。就任1年目のラミレス監督の下、球団創設5年目にして初のクライマッ…

DeNAの公式ドキュメンタリー「FOR REAL―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―」(DVD・ブルーレイ、28日発売)が14日から神奈川県内6つの劇場で先行上映される。就任1年目のラミレス監督の下、球団創設5年目にして初のクライマックスシリーズに進出した昨季の激闘の舞台裏に密着。Full-Count編集部では実際にカメラマンとして激動の1年を取材した金澤佑太氏に話を聞いた。

■DeNA公式ドキュメンタリー監督を務めた金澤氏が見た「リアル」

 DeNAの公式ドキュメンタリー「FOR REAL―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―」(DVD・ブルーレイ、28日発売)が14日から神奈川県内6つの劇場で先行上映される。就任1年目のラミレス監督の下、球団創設5年目にして初のクライマックスシリーズに進出した昨季の激闘の舞台裏に密着。Full-Count編集部では実際にカメラマンとして激動の1年を取材した金澤佑太氏に話を聞いた。

 今回のドキュメント作品では打撃2冠を達成した筒香や夏場に不振で苦しんだ山崎康ら選手が本音で語るインタビューが盛り込まれているほか、試合直前のベンチ内や試合後のロッカールーム、通常メディアが入れない禁断のエリアの様子も収めている。開幕戦から初出場したCS最終ステージで広島に敗れるまで、球団カメラだから撮れる通常ありえない映像が満載だ。DeNAのみならず、すべての野球ファンにとって新鮮なプロ野球チームの舞台裏。その中で1年間密着し続け、カメラ越しに見たDeNAナインの「リアル」、「球団公式カメラマンが見たナインの素顔」とは――。

――今永のプロ初登板当日朝の寮や、三浦の引退登板の当日にスタジアムで向かう車内の様子も収録。通常ではあり得ない距離の近さで1年間、DeNAを撮り続けている。

「私自身、今までにスポーツよりも人に寄り添ったドキュメンタリーが多かったんです。プロスポーツの現場に入るのも、取材としてプロ野球選手に接するのも初めて。グラウンド上もそうだけど、勝負以外の喜怒哀楽は一緒にいないと見えてこない部分はあるなと感じました」

――撮影していて、実際にそう感じた部分は。

「例えば、筒香選手はキャプテンとして調子の悪い選手がいた時にどう声をかけるのか。タイミングもそうだけど、彼は声のかけ方をすごく気にしている。試合中のベンチで物に当たりやすい選手がいて、打てずに戻ってきた時にバットを投げつける前に声をかける。『今の球種、何だったんですか?』『スピード、どのくらいですか?』とか聞いて『そうですか』って。本当にささいな言葉だけど、そのひと言だけで、苛立っていた選手も一呼吸置くことで気持ちが落ち着くし、周りも荒れる場面を見なくて済むので、ベンチの雰囲気も変わるんです」

■指揮官がミーティングの最後にかける「ムシカ」の意味とは……

――筒香は主将について「本来、そういうタイプではない」と言っている。

「作品のインタビューの中でも言っていますが、『チームを勝たせる4番』というものへのこだわりがすごく強い。実際に映像を見返してみると、凡打して戻って来た選手がいたら、ちらちらと見ているのが映っているんです。常にチームを気にかけている。打っても『勝たせられない4番』にはなりたくないんだろうなと。25歳の若さで、人の一歩も二歩も先を見ているんだろうなと感じるし、すごく大人ですね」

――チームは就任1年目のラミレス監督の下で躍進した。指揮官の印象は?

「佇まいが1年目から既に『監督』でした。春先に最下位で苦しい時期が続いた時も、ふるまいがまるで変わらなかった。あとで『あの時は相当タフだった』と言っていたけど、でも選手たちには『顔を上げて』と同じようなフレーズしか言わなかった。それが、選手に聞いてみても『監督がブレないでいると安心できる』という声が聞こえてくる。どんと構えていて、威厳を持ってチームの真ん中にいて『ラミちゃん』とは呼べない感じです」

――ナインの若さと自身の明るさを融合させ、常に勢いがあって、雰囲気のいいチームを作り上げた。

「ノリをとても大事にしていました。『下を向かない』『頭を上げろ』と前向きに言い続けて。あと、監督の合言葉があったんです。『ムシカ』って」

――「ムシカ」?

「スペイン語で『音楽(musica)』という意味です。試合前にロッカールームでのミーティングが終わると『ガンバリマショウ』の後に『ムシカ!』って。声をかける相手は筒香選手。それを合図に、彼がいつもラテン系のノリのいい曲をかけるんです。難しい話は終わったから後は気分良く試合に入ろう、というのがルーティン。息を合わせて、ずっとやっていた。チームのムードも盛り上がりますよね」

――チームへの影響力では三浦の影響も大きかった。

「人のことを第一に考えて動かれる方でした。もちろん、トレーニングでは自分が優先だけど、それ以外で自分の行動とか発言とかは他人が第一。私がカメラを撮っている時、前を通るタイミングを誰かと一緒に重ならないように一人で出てくれたり、考えてくれていた。試合前は周りが見えなくなるのが普通なのに優しい人だなと。そういう人だから、みんな若い投手は投げた後に『今日の投球どうでした?』って三浦さんに聞くのを、今永選手も石田選手も楽しみにしていました。そういう、ロッカールームでのささいなやりとりも作品には入っています」

■惜しくもカットした場面、印象的なシーン、「リーダーとして素質を備えた」選手は…

――惜しくもカットしたシーンは。

「映像的に良かったのは4月の試合後、倉本選手が暗い中で一人でバットを振っていたシーン。開幕からベンチスタートや守備での交代があって、悩んだりしていた。そんな時にバットを振りながら『腐っちゃダメですね』と。そのシーンは入れたかったですが、泣く泣くカットしました」

――カメラを回せなかった中で見た印象的なシーンは。

「春先にチームの調子が悪い時、筒香選手が一人一人にノートに目標を書かせてミーティングをしていたことですね。あと、個人的に好きなのは3月にチームで必勝祈願に行った時、帰りのバスに乗るまでの途中、ファンの子供たちに囲まれたことがあったんです。サインをしてあげたくても、立ち止まると通路をふさいでしまうし難しい。そうしたら、筒香選手が列の先頭を歩きながら、両手を前に出して『あとは好きに触って』みたいに触れ合っていた。不器用なんだけど、微笑ましくて、子供を大切にしているんだなと感じました」

――そんな筒香が慕っている先輩の一人が石川だった。

「筒香選手や梶谷選手もみんな『石川さんが一番好きな先輩です』って言うんです。梶谷選手は右も左もわからない新人の頃に一番面倒を見てくれた人だと。筒香選手も石川選手がいるだけで、いい意味でリラックスした表情になる。ロッカールームでは位置的に真ん中にいるから話が全部、彼を通って会話になったりして。人から愛される星の下に生まれて、チームのリーダーとして素質を備えた人なんだろうなと。内面には熱いものを持っていて、今年は苦しいシーズンだったかもしれないけど、誰に言われなくても外野の練習をしている姿が印象的でした」

――実際にプロ野球に密着して感じたものは?

「この作品を撮る前からイメージが変わったのが、プロ野球選手って、みんな頭がいいなということ。頭の回転が速い。言われたことに対して、すぐに返せる。野球という厳しい縦社会でも上を越していかなきゃいけない、したたかさというスキルは知らず知らずのうちに身に着けているのかなと。ああいう性格だと、どんな仕事もこなせるだろうなと羨ましく思います」

――筒香や梶谷が故障をした直後のベンチ裏の様子など緊迫感のある映像もふんだんに収録された作品に仕上がった。

「勝負の世界を描いてはいるけど、実はロペス選手と今永選手の2人の間での心温まるシーンがあるんです。そういう部分もしっかり描かれていると思うので、ファンの人たちがグラウンドでは見えない選手たちの素の部分も楽しんでもらえたらと思います」