2016年、大逆転でのV逸を喫したソフトバンク。プエルトリコのウインターリーグに参戦していた松坂大輔投手を除く日本人全選手の契約更改が年内に完了した。大幅アップを勝ち取る主力選手がいる一方で、ベンチメンバーなどにダウン更改が目立った今冬。前…

2016年、大逆転でのV逸を喫したソフトバンク。プエルトリコのウインターリーグに参戦していた松坂大輔投手を除く日本人全選手の契約更改が年内に完了した。大幅アップを勝ち取る主力選手がいる一方で、ベンチメンバーなどにダウン更改が目立った今冬。前回の投手編に続き、今回は野手編として契約更改を振り返ってみたい。

■悲喜こもごもだったソフトバンクの契約更改

 2016年、大逆転でのV逸を喫したソフトバンク。プエルトリコのウインターリーグに参戦していた松坂大輔投手を除く日本人全選手の契約更改が年内に完了した。大幅アップを勝ち取る主力選手がいる一方で、ベンチメンバーなどにダウン更改が目立った今冬。前回の投手編に続き、今回は野手編として契約更改を振り返ってみたい。

 まずは、増額をつかんだ選手は以下の通りだ(※金額は推定)。

○今宮健太(9000万円→1億4500万円 5500万円増)

 大幅なアップを勝ち取ったのは、ソフトバンク不動の遊撃手の今宮。5500万増で1億円の大台を突破した。昨季は打率.245と振るわなかったが、自身初の2桁本塁打となる10本塁打、そしてキャリアハイとなる56打点をマークした。課題だった打撃面で成長の兆しを感じさせる1年だった。それでも、この額は驚異。それだけ、ソフトバンクという球団が12球団随一の守備力、そして5年間にわたり、大きなケガなく、遊撃手というポジションを守っている貢献度を高く評価しているということだろう。

○中村晃(1億2000万円→1億5000万円 3000万円増)

 昨季1億円プレーヤーの仲間入りを果たしていた中村晃も3000万の増額となった。昨季は3年続けてきた3割を逃し、.287。だが、99四球を選んだ選球眼があり、出塁率は.416と高い。相手投手を苦しめる粘り強さや、三振の少なさなど、印象は地味ながら、チームへの貢献度は高い。複数のポジションを守り、かつ打順も問わないユーティリティーさはソフトバンクにとって頼もしい存在だろう。

○内川聖一(3億3000万円→3億5000万円 2000万円増)

 一昨季に逃した3割に、昨季は2年ぶりに到達する.304。18本塁打と他球団の4番に比べれば、一発はないが、106打点。芸術的な右打ちは健在で、チャンスにめっぽう強かった。27併殺打は2年連続リーグワーストとなってしまったが、上位打線に中村晃、柳田悠岐という高出塁率の2人がいたことも影響。数多くのチャンスで打席に回ってきたため、打点が増えた反面、併殺となるリスクも増えたと見るべきだろう。複数年契約を結んでいるが、年俸変動制のため、2000万のアップとなった。

■タイトル獲得もダウン提示となった柳田

○城所龍磨(1900万円→4000万円 2100万円増)

 110%のアップ、そして2年の複数年契約を勝ち取ったのが城所だ。最大限の評価を受けたのはもちろん、交流戦MVPの活躍。打率4割超えをマークし、そこまでプロ通算1本塁打だった男がサヨナラ弾や満塁弾を放つなど、交流戦だけで5本塁打を放った。それまで「キドコロ待機中」のグッズが人気だったが、あまりの活躍に「キドコロ活躍中」といったグッズも売り出されるなど、営業面での貢献も球団から評価された。

 見て分かるように、主にチームの中核を担う不動の主力が大きなアップをつかんだ。この一方で、厳しい風が吹いたのは定位置を奪いきれなかった若手、中堅どころが中心だった。

○柳田悠岐(2億7000万円→2億6000万円 1000万減)

 不動のレギュラーで、唯一のダウン提示を受けたのが柳田だ。打率はチーム内の規定打席到達者の中でトップの.306。18本塁打、73打点。ただ、トリプルスリーを達成した15年からは全ての部門で数字が下がってしまった。一方で、100四球を選び、出塁率.446はリーグトップで最高出塁率のタイトルを獲得。チームへの貢献度は高かったため、ダウン提示は若干厳しいか。右薬指の骨折でリーグ終盤を欠場した点も査定に響いたのは否めない。

○明石健志(7000万円→5500万円 1500万円減)

 右肩痛でシーズン序盤からリハビリ生活を余儀なくされ、わずか47試合出場に終わった。夏場に復帰した後も、状態はなかなか上向かずに、打率.230止まりでシーズンを終えた。レギュラー候補として期待されていただけに、大幅なダウンもやむなしといったところだろうか。

■新たに複数年契約結んだ選手も

○川島慶三(4000万円→3500万円 500万円減)

 明石とともにセカンドのレギュラー候補に位置付けられていたが、シーズン序盤にクロスプレーで右足を負傷。夏場までファーム暮らしとなった。わずか20試合出場に終わり、打率.125。松田宣浩とともに、ムードメーカーとしても期待されたが、役割は果たしきれなかった。

○福田秀平(2500万円→2300万円 200万円減)

 野手で1回目の交渉を保留したのが、この福田だった。外野の一角を奪う存在として期待されて迎えたシーズン。81試合に出場したが、打率.231、3本塁打。試合数と打率以外は15年を上回る数字を残したにも関わらず、提示はダウン。オフに結婚を発表したこともあり、慎重な判断をするためにも保留したが、2回目の交渉も提示額は変わらず、200万減となった。

○江川智晃(2100万円→1900万円 200万円減)

 和製大砲と期待されてきた江川も、はや12年目となった16年。42試合に出場し、4本の本塁打を放った。柳田が負傷離脱した後は「3番中堅」に入り、いきなり2安打3打点と活躍したが、好調が長続きしなかった。

 ソフトバンクは投手陣だけでなく、野手の主力どころは複数年契約を結ぶ選手多い。内川は変動制だが、固定制の松田宣浩(4億)、長谷川勇也(2億)、鶴岡慎也(7600万)は現状維持。そして、FA権を保持していた本多雄一、高谷裕亮、城所龍磨が新たに2年契約を結んだ。

 このオフは野手も主力どころに年俸の変動が少なかった反面、若手や中堅どころでのダウンが目立った印象だ。2017年。その若手、中堅の台頭が、至上命令となるV奪還へと結びつく鍵となる。