宮司愛海連載:『Manami Memo』 第20回フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第20回も前回に引き続き、宮里藍さ…
宮司愛海連載:『Manami Memo』
第20回
フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第20回も前回に引き続き、宮里藍さんをゲストに迎えてのスペシャル対談。今回は、東京五輪でも金メダルの期待がかかるなど注目度の高い女子ゴルフについて、宮司アナが宮里さんに詳しく聞いた。
女子ゴルフの話題で盛り上がった宮里藍さん(写真左)と宮司愛海アナ
宮司 2020年を振り返ると、いろんなスポーツの大会が中止を余儀なくされて、女子プロゴルフツアーも多くのトーナメントが中止になり、なかなか開幕できませんでした。
宮里 後輩の選手たちと話をしたりもしましたが、みんな初めての経験ですごく苦労していましたね。でも、そのときに有村智恵選手が言っていたのが、「ずっとオンの状態だと、試合が始まったときに気持ちがもたないので、今はスイッチをオフにして何も考えずにやっています」ということでした。その言葉には結構ハッとさせられて、それはすごく大事なことだなと思うと同時に、その気持ちの切り替えができるのはすごいなと感じました。
宮司 そしてツアーが再開したのが、6月末のアース・モンダミンカップでしたよね。
宮里 もちろん、本当にやって大丈夫なのかという不安は、みんな抱えていたと思います。プレーに関して準備はできても、どこまで感染症対策をやるのかということでは、大会直前まで相当バタバタしていたと思いますから。ですから、開幕戦が無事に終わったときは、私もホッとしましたし、選手たちもその気持ちのほうが大きかったのではないかなと思います。
宮司 2021年に延期となった東京オリンピックに目を向けると、女子ゴルフに関しては出場権争いが激しくなっています。1人目は畑岡奈紗選手がかなり有力ですが、2人目はどうなるのだろうという状況です。
宮里 畑岡選手に関して言うと、個人的には次のフェーズに進んだなというふうに思っています。自分のゴルフが確立されてきて、ちょっとこう、大人のゴルフになったというか。
宮司 どういうところですか?
宮里 私が現役で一緒にやっていたときは、ドライバーを一生懸命振って、攻めて、攻めて......という印象だったんですけど、そういう粗い部分が少し取れて、一歩上に進んだ感じです。安定感が出てきて、オリンピックの代表に一番近い選手だと思います。そうなると、確かにもうひとりの争いは熾烈ですね。
宮司 2019年は渋野日向子選手の活躍が注目されましたが、2020年はさらに下の世代の活躍にも目覚ましいものがありました。各世代がしのぎを削って、どんどんレベルが上がっている印象がありますが、宮里さんから見て、いかがですか?
宮里 2019年の渋野選手の活躍が刺激になったことは間違いないと思います。渋野選手が全英女子オープンを勝ったあと、同世代の選手に化学反応が起きたというか。「私もできる!」と思えることは、その選手の可能性を広げる一番の薬になりますからね。身近な選手が活躍すればするほど、周りの選手にとってはプラスの影響にしかならない。渋野選手の活躍をきっかけに、今は本当に若手の層が厚くなっていると思います。
宮司 2020年で言えば、古江彩佳選手が著しい成長を見せました。宮里さんから見て、古江選手のいいところはどんなところですか?
宮里 画面上で見る限りですが、縦の距離の合わせ方はピカイチだなという印象があります。技術的な話をすると、小柄なのにインパクトゾーンが長いので、ボールがクラブに乗っている時間が長い。その分、コントロール率が高くなるというか。
宮司 なるほど。
宮里 背が高い選手はクラブの軌道が鋭角に入ってくるので、ボールを切ってスピンがかけやすくなるんですけど、体が小さいとその角度がちょっと緩くなる。それだけ(ボールに対してクラブを)縦に入れにくくなって、スピンをかけるのが難しくなることがあるんですけど、そういうことをあまり感じさせませんね。
宮司 何がそれを可能にしているんですか?
宮里 結構細くて華奢な印象もありますが、昨年会ったときよりも、体つきがシュッとしたように思いました。スイング中もほとんど体幹のブレがありませんし、体の使い方も含めて、フィジカルトレーニングの効果が出ているのかなと想像しています。
宮司 それからもうひとり、笹生優花選手にも注目しているのですが、宮里さんは笹生選手をどう見ていますか?
宮里 もちろんパワーはありますが、小技も上手で隙がないなという印象です。試合後の話を聞いていると、技術的なことよりも「誰々と回って楽しかった」というようなコメントが多いですし、今はモチベーションがすごく高いんだなと感じます。現状の活躍にとどまらず、最終的にはアメリカツアーでメジャーを勝てるようなポテンシャルは、間違いなくあると思います。
宮司 2020年のツアーでは、古江選手が3勝、笹生選手が2勝を挙げましたね。
宮里 古江選手は今、勢いと自信でいい状態にあると思うので、その流れで昨年を終われたことは大きかったと思います。ただ、2021年になってそれが一度リセットされたとき、スタートダッシュがどうかなというところは見てみたいですし、それは笹生選手についても同じこと。そうした選手の争いは見応えがあるなと思っています。
宮司 渋野選手についてはどうですか?
宮里 渋野選手は結果を残さなきゃいけない状況にいると思いますし、そのプレッシャーはもちろんありますよね。彼女はメジャーを勝ったことで、プラスアルファのプレッシャーが他の選手より大きいかなとは思っています。
宮司 『S-PARK』でも度々伝えていますが、渋野選手はそのプレッシャーがあるなかで、満足のいくゴルフができない時期が続いたように感じます。
宮里 2019年の成績はもちろんすごかったですし、2020年は勝てていなかったので調子が悪いようには見えるんですけど、そこの見方は難しいなと思うところもありますね。
宮司 というと?
宮里 少し噛み合わせがうまくいかなかったというだけで、一つひとつの技術を見てみると、全然調子は悪くない。一昨年より(成績が)下がっているとしても、たぶん普通のレベルにはいるんです。本人は「今シーズン(2020年)はすごく苦しかった」と言っていましたが、2カ月間アメリカツアーを回れたことはすごくいい経験になったと思いますし、やるべきことがイメージできたと思うんです。だから、2021年はがんばれるんじゃないかなって思っています。
宮司 ある意味、2020年は"成長痛"のような時期だった、と。
宮里 もちろん、本人は結果につなげられず、悔しかったでしょうが、そこは長い目で見ることが大事です。今後、世界のいろんなコースに対しての引き出しを増やしていけばいいだけの話なので、その準備段階としてはよかったと思います。
宮司 そんな若い選手たちにとって、宮里さんは目標であり、大きな存在だったと思いますが、宮里さんが後輩たちに期待するのはどんなことですか?
宮里 私が彼女たちの年齢のときに経験していたゴルフと、彼女たちが今やっているゴルフはたぶん内容が全然違うんですよね。私が20歳くらいのときの飛距離のセッティングは、今よりかなり短いので。同じコースでも、今の優勝スコアと当時の優勝スコアは5、6打、違います。
宮司 そんなにですか?
宮里 それを考えると、今の選手のほうが圧倒的に技術力も精神力もある。私としては、すごい時代になっているなと思いますし、むしろ彼女たちが、私の知らない世界を見せてくれているっていう感じなんです。
宮司 うわっ、素敵!
宮里 だから、こうしてほしいとか、こうなってほしいとか、そういう思いはなくて、これからどう成長して、どういうゴルフをしていくんだろうって、ただただそれが楽しみですね。
宮司 どのスポーツでもそうだと思いますが、年々、進化していくものなんですね。
宮里 ドライバーにしても、ボールにしてもそうですが、用具の進化はすごく大きい。でも、それにプラスして、フィジカルに対してのアプローチを見ても、私がプロになった頃は、ゴルファーのフィジカルトレーニングにはまだまだ確立した情報が少なく、ただ体をケアすることがメインだった気がします。それが、ここ10年くらいの間に大きく変わって、みんなフィジカルトレーニングも取り入れるようになりました。もう私の時代とは全然違うなと思いますね。
宮司 スポーツ科学の進歩が後押ししているわけですね。
宮里 それが大きいし、大事だと思います。ゴルフというのは、たとえば、スピン量だったり、フェアウェーキープ率、リカバリー率、パーセーブ率とか、常に数字がつきまとうものなので、それに対してスポーツ科学的要素をうまく取り入れていけば、さらに進んだ時代になっていくでしょうね。
宮司 宮里さんは、東京オリンピックのゴルフ会場である霞ヶ関カンツリー倶楽部でプレーされたことはあるのですか?
宮里 もう高校生のときなので、すっごい前です(笑)。10年前? いや、もう20年前だ! 怖っ(笑)。確か、日本ジュニアゴルフ選手権でした。
宮司 どんな印象のコースでしたか?
宮里 コースが改修されたので、今はまったく変わったと思うんです。
宮司 そうなんですね。
宮里 でも、雰囲気はすごく素敵なコースですよ。松がたくさんあって、きれいなコースという印象があります。
宮司 どんなタイプの選手に合いそうですか?
宮里 海外ツアーのコースに比べると、日本のゴルフ場はすごく狭くできているんですよね。だから、単純ですけど、"曲がらない選手"が有利になるとは思います。開けているコースが多いアメリカなどと違い、日本は視覚的にすごく狭く感じるコースが多いので、ティーショットにかかるプレッシャーは海外のコースより大きいと思います。
宮司 やり慣れている日本の選手にとっては、有利ですか?
宮里 だと思います。芝の感じも全然違うので、そこも有利だと思いますね。
宮司 すると、メダルの可能性も?
宮里 かなりありますね。というのも、日本でやること自体が絶対的にプラスになると思っているので。ゴルフ場を離れても、選手たちは自分のペースでストレスなく過ごせると思いますし、オリンピックとはいえ、ゴルフ場へ行ってしまえば、いつもの自分のスイッチに切り替えて普段のルーティーンでやれると思うので、そこはすごく期待しています。
PROFILE
宮里藍(みやざと・あい)
85年6月19日生まれ。沖縄県出身。
フジテレビの『東京2020オリンピック』
アスリート・メーンキャスター。
宮司愛海(みやじ・まなみ)
91年7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。
福岡県出身。血液型:0型。
スポーツニュース番組『S-PARK』のメーンキャスター。
スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、
多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。