箱根駅伝2021は、全日本大学駅伝で上位に入った駒澤大、東海大、明治大、青学大、早稲田大、東洋大あたりが優勝争いを繰り広げることになるだろう。しかし、他にもダークホースといえる大学がいくつかある。区間エントリーの状況から、"大穴校"の戦い…

 箱根駅伝2021は、全日本大学駅伝で上位に入った駒澤大、東海大、明治大、青学大、早稲田大、東洋大あたりが優勝争いを繰り広げることになるだろう。しかし、他にもダークホースといえる大学がいくつかある。区間エントリーの状況から、"大穴校"の戦い方を探っていきたい。

 まずは帝京大だ。前回は3位と3秒差で過去最高タイの4位。全日本大学駅伝は7位で3年連続のシード権を獲得するなど"上位崩し"ができる可能性が最も高い。



前回も1区と2区を担った帝京大の小野寺悠(左)と星岳(右)

 1~3区は前回と同じく小野寺悠(4年)、 星岳(4年)、遠藤大地(3年)が登録された。星と小野寺は、10000m記録挑戦競技会で大学記録を更新する28分 20秒63と28分30秒17をマークしており、前回以上の走りが期待できる。遠藤は全日本4区で区間12位に沈んだが、箱根3区は過去2年連続で快走。前回は区間新で駒澤大・田澤廉を2秒上回った。前回は3区終了時で4位につけており、今回も3区までは計算できる。おそらく4区は、補欠登録になっている10000m28分52秒37の中村風馬(3年)に交代するだろう。

 選手層が厚いチームだけに、前回3位の復路は今回も強力だ。そうなると課題は"山"になる。前回の5区は区間18位(1時間14分40秒)。今回は細谷翔馬(3年)が登録されているが、どれくらいでカバーできるのか。1時間10~11分台で好走できると、過去最高順位となる「3位以内」が見えてくる。

 前回、過去最高の3位に入った國學院大は、往路で活躍した3人が卒業した影響もあり、全日本大学駅伝は9位に終わった。区間エントリーでは、今季10000mで大学記録の28分17秒84をマークした中西大翔(2年)を2区、前回10区で区間4位と好走した殿地琢朗(3年)を5区に登録した。一方でエースの藤木宏太(3年)、10000m28分20秒台の河東寛大(4年)と木付琳(3年)、5000mで13分49秒24のタイムを持つ臼井健太(4年)を補欠登録している。順当ならこの4人は当日変更で入れてくるはずだ。

 前田康弘監督は、1区が高速レースになると読めば、前回1区2位の藤木を投入してスタートダッシュを狙ってくるだろう。3~4区も河東、木付、臼井のうち2人の起用が濃厚。5区殿地は「1時間11分台」を想定しており、6区には前回区間8位の島﨑慎愛(3年)が入っている。山区間はまずまず走ると予想する。選手層は薄いが適材適所のオーダーは魅力十分。前回(往路2位)のように往路を好位置で折り返して、上位校を脅かしたい。

 予選会を過去最速タイムでトップ通過した順天堂大と同2位の中央大も今回は面白い戦いができそうだ。ともに選手層が厚く、トップを奪えるスーパールーキーの存在がまぶしい。

 全日本大学駅伝8位の順天堂大で注目の三浦龍司(1年)は1区に登録された。一方で中央大・吉居大和(1年)は補欠登録。中央大は1区と3区の当日変更が有力で、吉居は1区に入る可能性が高い。

 ふたりは10月の箱根予選会で激突している。三浦が先行する吉居を終盤に逆転して、ハーフマラソンのU-20日本最高となる1時間1分41秒で日本人トップ。吉居はU-20日本最高タイの1時間1分47秒だった。三浦は全日本1区でも爆発的なラストスパートで区間賞・区間新をさらったが、12月4日の日本選手権は直前練習で右脚を打撲して欠場。吉居は同選手権の5000mでU-20日本記録を13分25秒87に短縮し、3位に入っている。

 三浦の回復具合が気になるが、ふたりとも万全の状態ならエキサイティングな戦いになるだろう。ハイペースになれば東海大・佐藤悠基(現・SGホールディングス)が保持する区間記録(1時間1分06秒)の更新も期待できる。

 2区は順天堂大が野村優作(2年)、中央大は森凪也(3年)が配置されており、ふたりの実力はほぼ同等だ。山に関しては、順天堂大が5区に学生駅伝未経験の津田将希(3年)を入れて、前回5区で区間14位(1時間13分51秒)の真砂春希(4年)を補欠登録。中央大は前回5区で区間9位の畝拓夢(うね・たくむ)(4年)と、同6区で区間10位の若林陽大(2年)が登録された。

 中央大・藤原正和監督は、5区で「1時間11分台」、6区で「58分前後」を想定しており、山には自信を持っている。特殊区間の優位性を考えると、「3位」を目標に掲げる中央大のほうが総合力は高い。両校ともスーパールーキーの快走で勢いに乗って、上位でレースを進めていきたい。

 それから、前回シード権を獲得している東京国際大と創価大も序盤はトップ争いに割って入りそうな予感がある。

 前回5位の東京国際大は、2区にルカ・ムセンビ(2年)を入れているが、前回3区で驚異的な区間記録を打ち立てたイェゴン・ヴィンセント(2年)と交代すると見ていい。10000m28分39秒63の丹所健(2年)も当日変更で1区に入れると予想する。丹所は前回も1区を務めて区間13位で走っているだけに、大きく外す心配は少ない。そして2区に入るだろうヴィンセントは、前回3区で駒澤大・田澤廉に2分差をつけており、花の2区でも大幅に区間記録を更新してもおかしくない爆発力を秘めている。

 前回9位の創価大は、1区に前回4区の区間4位で10000m28分19秒26の福田悠一(4年)を投入。2区には10000m27分50秒43のタイムを持ち、日本インカレ10000m2位のフィリップ・ ムルワ(2年)を登録した。こちらもロケットスタートの準備は万端だ。

 箱根駅伝は10区間217.1㎞の勝負となるため、選手層が厚く、総合力の高いチームが有利になる。しかし、"武器"があるチームが突破口を開き、そのまま逃げ切るような展開になることもある。ダークホース校の攻勢にも注視したい。