全日本フィギュアでフリー演技をする鍵山優真 12月25〜27日に開催された全日本フィギュアスケート選手権。ショートプログラム(SP)2位からフリーは宇野昌磨に逆転されるも3位を確保した鍵山優真。昨年と同じ位置で表彰台に上がった。結果について…



全日本フィギュアでフリー演技をする鍵山優真

 12月25〜27日に開催された全日本フィギュアスケート選手権。ショートプログラム(SP)2位からフリーは宇野昌磨に逆転されるも3位を確保した鍵山優真。昨年と同じ位置で表彰台に上がった。結果について鍵山は、「昨年は何も考えずに挑戦しての結果だったけれど、今回は表彰台を狙って3位だったので、すごく満足しています。内容的に悔しい部分もありましたが、それでも攻めた演技ができた」と笑顔を見せた。

 シニアデビューシーズンながらも昨季は四大陸選手権3位の実績があり、今季も関東選手権は287.21点、NHK杯では275.87点と高得点を出していた。これまでの実績を見れば、全日本の表彰台も順当なものだった。

 だが、シニアの大会で「初めて最初から表彰台を狙って臨んだ」というプレッシャーからか、演技はSP、フリーともに全体的に余裕がなく、硬さも見える滑りだった。

 鍵山は競技前日の公式練習から好調さを見せ、「ショートはひとつミスをしたら終わりなので、すべてをかける思い」で集中していた。冒頭の4回転サルコウ+3回転トーループは、4回転+2回転になったが、これはとっさに判断して意図的にレベルを落としたという。「4回転が少し回り過ぎたので、3回転トーループは無理かなと思い、不安になったので2回転にした」と冷静だった。

 その後の4回転トーループはきれいに決め、コンビネーションスピンも慎重にこなしてレベル4とした。NHK杯でミスをした、「苦手意識がある」というトリプルアクセルも3.09点の加点。関東選手権の得点を0.14点上回る98.60点を獲得したものの、ステップシークエンスは硬さが残る動きで、持ち味である「踊る滑り」を発揮し切れていない印象だった。



SP演技の鍵山

「ショートはジャンプのことを一番考えていて、演技は二の次といった感じになってしまいました。少し慎重になったというか、丁寧に滑ろうと思い過ぎて、それで多分、今回はNHK杯よりちょっと"踊り不足"だった部分もあったと思います」

 こう振り返った鍵山だが、重圧の中でもきっちりノーミスの演技をやり切ったことが、高く評価された。

 今回の滑走順はドローではなく、SP成績の逆の順番となった27日のフリー。鍵山は宇野昌磨と羽生結弦に挟まれる滑走順となった。

「羽生選手や宇野選手と公式練習などで一緒に滑れたことはいい刺激で収穫にもなりましたが、6分間練習は今シーズンで一番緊張しました。それに宇野選手の後だったからその点数が聞こえて......。190点と聞いた時は、『やべェ』と思いました」

 鍵山のフリーは、冒頭の4回転サルコウが空中で軸が少し斜めになるジャンプとなり、予定していた3回転トーループを付けられない滑り出しで、次の4回転トーループもステップアウトになるミス。動揺もあったのか、続く3回転フリップは「ノット・クリア・エッジ」(明確でない踏み切り)と判定され、GOE(出来栄え点)を伸ばせなかった。

 それでも途中から持ち直し、4番目の4回転トーループに3回転トーループを付けて3.53点のGOE加点を獲得。トリプルアクセルからの3連続ジャンプは着氷でよろけて2番目のオイラーがダウングレードになる判定で最後のサルコウも2回転になったものの、3回転ルッツ+3回転ループからはしっかり立て直した。

「トーループでミスをした後は根性で連続ジャンプのリカバリーをしたし、練習ではできていなかった後半の3回転ルッツ+3回転ループもやれてよかった」

 ただし、中盤のフライングキャメルスピンと、ジャンプをすべて終えた後のステップシークエンスはレベル2。全体的につなぎの滑りに余裕がなく、SPと同じように「踊り切れていない」部分は課題として残った。

 鍵山はこう振り返る。

「フリーは2番目の4回転トーループでステップアウトした瞬間に『あっ、やべ』と思った。不安と緊張がすごく頭の中をよぎって、演技どころじゃなくなりました。ちょっとミスをしても、落ち着いて演技ができるようになるのが課題です。失敗をしても他の部分で引きずらないようにして高い得点を出せる選手にならないと世界では戦えないと思うので、今持っている技の精度をもっと上げていかなければいけない」

 鍵山のフリーの得点は180.97点。合計278.79点で2位の宇野には6.02点差。今シーズン、国内の大会で見せていた実力は十分に発揮する結果だった。

 また鍵山は、今回の全日本を通して羽生と宇野の存在は「まだまだ遠い」と実感したという。

「フリーでノーミスをしても勝てなかったと思っています。自分にはまだまだ足りないものがあるので、もっともっと練習が必要だと思いました。宇野選手は羽生選手が最終目標だと言いますが、僕もふたりを目標にしているので。次に戦う時にはどのくらい近づけているかを、もっと練習して確認できればいいかなと思います」

 次なる機会は、開催が実現すれば、3人とも代表に選ばれた3月の世界選手権になる。大会最終日の深夜に行なわれた世界選手権の代表記者会見では、各選手に目標順位を問う質問が出た際、鍵山は言葉に詰まってしまった。すると、前の席に座っていた羽生は後ろを振り向いて、何か声をかけた。羽生はその言葉をこう説明した。

「鍵山選手が自分の気持ちにウソをつこうとしていたので声を掛けました。彼の強さは負けん気の強さや向上心で、それらが彼の武器なので大事にしてほしいと思います。僕は初出場の世界選手権で3位になったけど、あの時の演技は忘れられないし......。勢いとエネルギーでいけたと思うので、(鍵山が)全日本選手権で優勝したいと言っているように、その気持ちで世界選手権も頑張ってほしいと思います」

 そんな先輩からのエールを、鍵山はどう受け取ったのか。狙って獲得できた3位という結果とともに、17歳はこの大会で大きな収穫を得たようだ。