2020年、ZERO1 田中将斗と全日本プロレスからレンタル移籍した秋山準等レジェンドレスラーとの闘いを経験した“DDTの未来”竹下幸之介。残念ながら勝負に敗れたものの、そこから得たものは大きかったに違いない。そして12.27後楽園にて「D…

2020年、ZERO1 田中将斗と全日本プロレスからレンタル移籍した秋山準等レジェンドレスラーとの闘いを経験した“DDTの未来”竹下幸之介。残念ながら勝負に敗れたものの、そこから得たものは大きかったに違いない。そして12.27後楽園にて「D王 GRAND PRIX 2021」優勝決定戦で、再度秋山に挑む竹下。前編は、田中将斗戦と11月の秋山準戦を振り返ってもらった。

--3月20日後楽園、FMWに影響を受けていた竹下選手が田中将斗選手と戦いました。あの試合を振り返っていただけますか?
竹下:あの試合に関してはKO-D無差別級王者の田中選手に僕が挑戦するタイトルマッチ。田中選手が外敵と言うこともあり、第一に僕の使命は「ベルトを取り返す」と言う事。その次に僕のパーソナル部分「田中将斗選手と闘える事の喜び」が後追いで来る感じでした。
やっぱり子供の頃から田中選手の試合を観て、その選手と試合ができる夢が叶う瞬間でした。ただ実際の試合はハードで全く余韻に浸かる暇もありませんでした(笑)。
あの試合はコロナで自粛になり、それが一旦解除された時期、「後楽園での興行が出来るか出来ないか」「コロナで世界はどうなってしまうのか」という中で行われました。
ですから「世界中に蔓延する不安感を一瞬だけでも忘れられるような試合にしたい」と思って臨んだ試合でしたね。

--コロナの影響で状況が変化する中、決意を持って臨んだ試合だったんですね。試合に関して、僕は竹下選手が「竹下ワールド」に引き込むのではなく「田中将斗ワールド」に自ら足を踏み入れたように見えました。
竹下:僕が憧れていた選手や戦いたいとずっと思っていた選手と戦う時、相手の土俵に乗って戦いたい。それは勝ち負けよりも「その選手のエキスを味わわずに後悔したくない」という気持ちがあります。
もし、どんな選手でも2度目の戦いがあるのなら、次は僕のプロレスで戦います。ただプロレスと言うのは儚いもので、次に戦うのがいつになるか分からないし、基本1回戦えたらラッキーなんですよ。
そういう意味では「僕が観ていたFMWのVHSの中に入り込みたい」という気持ちがありましたね。

--竹下選手が以前話してくれた「ゴールに向けて最長距離で向かうのがプロレス」を体感しているのかと思いました。
竹下:そこにドラマがありプロレスファンとして胸を打たれていたので。仮にそのプロセスを通らなかったら、僕が影響を受けてきたものが全て嘘になりますね。

--ところで3月の取材時、秋山準選手のことを「『プロレスとは、こうだ!』というのを、ほんの10分のタッグマッチを通して教えてくれたんです。秋山さんの衝撃度は、レスラー人生で一番大きかったです」と話していました。その秋山選手と闘ってみていかがでしたか?
竹下:(少し考えて…)その時は僕がゲストで全日本プロレスさんに呼んで頂いて戦った試合だと思うんです。今はコーチとしてDDTに来て頂いていますが、僕は秋山さんを外敵として見ています。いや「外敵」というのは変えます。僕に関しては敵ですね。DDTにとっての外敵というより、僕にとっての敵です。

--コーチとして秋山選手から指導を受ける事はあるんですか?
竹下:僕に関しては試合を通してですね。11.3大田区でシングルを行うまでの2ヶ月間、毎週秋山さんと戦っていたので、その戦いを通して教えてもらいました。

--また3月「秋山さんや他の方々と戦って、一気に自分のプロレスに対する価値観や視野が広がったんです。相手の技を吸収した上で勝つ、というのが美学になりました。」と話してくれました。秋山選手と戦い、その美学を体現できましたか?
竹下:秋山さんと戦って吸収したものは、秋山さんと戦った時に出るものではないので。秋山準と戦って勝つためのものを今探している段階ですね。
間違いなく2020年、僕自身はステップアップしたと思うし、秋山さんとの戦いを通して自分自身のプロレスが進化していると思いますが、「じゃあ秋山準にどのようにしたら勝てばいい?」というのは分からないんですよ。

--先ほどもお話頂きましたが、前哨戦として約2ヶ月間タッグマッチで秋山選手と戦った時と、いざ11.3大田区シングルマッチで戦った時、秋山選手の感触は違いましたか?
竹下:タッグは秋山さんがパートナーをコントロールする戦い、シングルは「掴みきれない強さ」というか、例えるならば「専門家の方と腕相撲した感じ」ですかね。

--プロレスの教科書である秋山選手と戦う感じですか?
竹下:秋山選手は自分の力の出し方を分かった上で、相手の力も自分の力に吸収し戦うような感じ。僕としては10割力を出したいのに、7割くらいしか出せない。11.3大田区で秋山選手に足を攻められて、僕は片足の踏ん張りが効かず、飛び技や投げ技の威力が半分以下に落ちてしまいました。その一点集中の攻めが、一つ一つ的確かつ強烈で心を折っていくような感じなんです。

--11.3大田区の時、前半は竹下選手のペースだったように思います。ただ後半に入ってから秋山選手がギアを1段階も2段階も上げてきたように感じました。
竹下:ここは反省点で今後の課題にしているところですが、力の強さと技の瞬発力は僕の方があると思うんです。しかし僕の攻撃は表面だけで真にダメージを与えていないと思っています。秋山さんの攻撃は、仮に手数は少なくても真にくる。終盤、僕の方が苦しいしキツいし勝てない。

--よくレスラーの方が「心を折りにくる」と表現しますが、それに近いですか?
竹下:それに近いですし、仮に心が折れなかったとしても、攻撃された足や腕が動かないものは動かない。その一瞬、3カウントを取るためだけじゃなくて、試合後しばらく立てなくなるような攻撃をしてきますね。
これまで秋山さんは、そういった戦い方をしてきた。僕はそういった戦い方をしてこなかった。11.3大田区の一戦で、僕はそれに気づいたので。次は自分もそういう攻撃ができるように、考えて挑むだけですね。

<後編に続く>

<インフォメーション>

DDT最強レスラーを決めるリーグ戦「D王 GRAND PRIX 2021」の優勝決定戦が、いよいよ12/27後楽園ホールで行われる。Aブロックを勝ち上がった竹下幸之介は、Bブロック1位の秋山準と対決。果たして11.3大田区の雪辱を果たせるのか!詳細はDDTプロレス公式サイトをご覧ください。→https://www.ddtpro.com/schedules/12819

動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEで、生配信が行われます。→https://www.ddtpro.com/universe

竹下幸之介 Twitter→https://twitter.com/Takesoup

取材・文・写真/大楽聡詞

写真提供/DDTプロレスリング