専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第286回 年末は、今年のことを反省し、未来のことを予測するのにいい時期です。せっかくなので、今後のゴルフマーケットについて、新型コロナウイルスの影響や、東京オリンピック開催なども…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第286回
年末は、今年のことを反省し、未来のことを予測するのにいい時期です。せっかくなので、今後のゴルフマーケットについて、新型コロナウイルスの影響や、東京オリンピック開催なども踏まえて、考えてみたいと思います。
(1)ゴルフと新型コロナウイルスの関係性
新型コロナウイルスの感染拡大が騒がれ始めた今年の3月、4月あたりは、ゴルフが目の敵にされていました。そして、緊急事態宣言が発令された4月以降には、テレビのワイドショーなどで、休業要請の対象外となったゴルフ場や屋外ゴルフ練習場に対する作為的な絵作りが行なわれていたみたいです。
屋外練習場で黙々と打ち込んでいるお客さんたちを、わざと10人ぐらいが重なるように撮影し、「『ステイホーム』が叫ばれているこの時期、密になって練習しています」とレポートしていた......って、無理やりやん。
誰も喋っていなし、距離も離れているし、問題なかったと思うんですが。おそらくこうしたニュースを制作した人は、それだけゴルフが憎かったのかも......。
冷静に考えれば、ゴルフは外でプレーするし、最大4人だし、レストランで騒がない限り、新型コロナウイルスには感染しづらいスポーツです。しかも、花粉症でマスク慣れしている人も多く、マスクを装着してのプレーにもさほど抵抗がありません。
それなのに、俳優の石田純一さんが新型コロナウイルスに感染したあたりから、女性を連れ立ってゴルフをする姿がチャラチャラしているように見えたのか、あたかもゴルフが原因だったかのように(※実際のところは、ゴルフ後の会食が原因と言われている)、ゴルフに対して猛烈なバッシングが起きました。
本人は奥さんから十分にお灸を据えられて、すっかり懲りています。そもそも、鼻から酸素チューブを入れて大変な状況を経験していますから、もうそっとしておいてあげましょう。
石田さんの行動によって、ゴルフをしたあとに派手な2次会をやれば、新型コロナウイルスに感染しやすくなることが証明されました。貴重な情報を提供したという点では、ある種の社会貢献をしたと言えるかもしれません。
(2)盛況のゴルフ業界
そこから現在、新型コロナウイルス感染拡大の第3派の真っ只中にありますが、ゴルフ場はゴーイングマイウェイ状態で大繁盛。その勢いは止まりません。
どのコースも結構お客さんが入っています。実際、コースに行って予約表を見ると、びっしりと埋まっています。
そんな状況ですから、以前なら可能だったことができなくなっています。たとえば、早くコースに着いて、予定時間よりも早くスタートしたいケースがあったりするでしょ。その際、キャディーマスターに言って、「空いている時間に入れてよ」とリクエストします。ところが最近は、ガチで混んでいて「入れられるところがないんです」と、きっぱり言われてしまいますからね。ほんとすごいです。
ゴルフの隆盛を目の当たりにしたと言えば、ゴルフポータルサイトを運営しているGDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)の株価が、7月から11月にかけての数カ月で、約2倍になったことです。
7月まではキャンセルの嵐で赤字だったようですが、秋にかけてGo To トラベルキャンペーンも功を奏し、予約部分がV字回復!
来年にはワクチン接種が一般にも浸透していくと思うのですが、こうした現状からすると、ゴルフ業界は入場制限などをすることなく、盛況のままコロナ禍を逃げ切れそうな雰囲気にあります。
(3)プロトーナメントはどうなる?
今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、プロトーナメントは男女ともにその多くが中止となりました。それでも、夏場を迎えるあたりから女子のトーナメントが徐々に行なわれるようになり、開催が実現した試合は無観客で行なわれてきました。
だいたい、新型コロナウイルスの感染率が日本の何十倍もひどいアメリカでさえ、6月からツアーが再開。無観客での開催ですが、以降はおおよそスケジュールどおりにトーナメントが行なわれてきました。ですから、ゴルフのトーナメントはお客さんさえ入れなければ、開催するのは十分可能です。
ただスポンサーありきのトーナメントですから、すべての試合が開催されることはありません。コロナ禍にあって、世評から判断してあえて自重する企業もあるでしょうし、そもそも業績が悪化してトーナメントをスポンサードしている場合じゃない、という企業もあるでしょう。
また、無観客ということもあって、テレビ視聴率が期待できなければ、開催を躊躇するスポンサーもあるはずです。そうなると、日本では「黄金世代」や「プラチナ世代」など、役者がそろっている女子の試合のほうが多く開催されることになります。
あと、基本的に女子の試合は距離が短いので、コース側も大がかりな準備をしないで済む点も大きいと思います。グリーンを速くする、ラフを伸ばす、といったことである程度対処できます。
しかし男子のトーナメントとなると、距離を延ばすとか、あるいはパー72をパー70にして難しくするなど、プチ改造が必要になる場合があります。そうやって、お金をかけてコースセッティングして試合を開催するとなると、やはりそれなりに視聴率が取れないと意味がないですよね。男子の場合、そこが難しいところです......。
ひとまず、今年のトーナメントは終了しました。来年のツアーはどうなるかわかりませんが、最初の試合まで時間がありますから、新型コロナウイルスの感染状況を見ながらの判断になると思います。もし早い段階でワクチン接種が浸透すれば、観客を入れての開催も可能になるのかな、と。
となれば、ゴルフを含めた東京オリンピックも、有観客で開催される可能性は大です。
(4)東京オリンピックはどうなる?
当初、東京オリンピックの開催は無理かと思っていましたが、ちょっと風向きが変わってきました。
IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長が念押しのためなのか、11月に急きょ来日しました。これは、スタイルを変えてでも、開催しそうな雰囲気ですね。
IOCは、とても強気です。とりあえず開催してテレビで放映すれば、放映権料でお金を稼げますからね。
次回の2024年に延期するのもありかと思いましたが、その時の開催地はパリ。前回のパリ大会が1924年に行なわれていて、ちょうど100周年となります。となると、パリがその年の開催を譲ることはないでしょう。
ならば、1年延期を決めた来年の夏に規模を縮小して開催するしかないのです。観客を減らし、すべての種目をやることもないでしょう。おそらく参加国も減ると思います。オリンピックは参加することに意義がある――と言いつつ、本音と建て前は違います。
モスクワオリンピック(1980年)だって、西側諸国がソ連(現ロシア)のアフガニスタン侵攻に対して抗議し、50カ国近くがボイコットしました。でも、オリンピックは成立したのです。
それゆえ、新型コロナウイルスで参加できない国があっても、それは「ごめんなさい」ということで、仕方がないでしょう。ただ、国が代表団を送れない、あるいは送らないという場合は、オリンピック旗のもとに選手が集まり、そこから任意で参加するとか、エントリー方法はあるのです。
そんななかでのゴルフ競技。当初は「炎天下での最悪の条件」と言われていましたが、新型コロナウイルスのことを考えれば、暑いほうが感染しにくいでしょうし、観客を入れなきゃ一番安全な競技、といった見方になっています。なんか、皮肉なものですね。
(5)世界は日本をどう見ているか
世界中がコロナ対策と称し、ジャブジャブとお金を使って、予算を組んでいます。だから、金余りになって、株価が上がっています。
特に日本がスゴすぎで、29年ぶりの高値を記録しました。
リーマンショックの際には株価が元に戻るまで3年かかったのに、コロナショックではわずか半年で回復。飲食店を中心にして、軒並み会社が倒産しているのに、実態とかけ離れているのではないか。それは、みんなが思っていることです。
じゃあ、なぜ株価が上がっているのか?
コロナ対策をしつつ、経済も回していく――その難題を日本はクリアできるのでしょうか...。illustration by Hattori Motonobu
日本の株を買っている投資家は、6割以上が外国人投資家です。そんな彼らが、なぜ日本株を買うのか? それは、新型コロナウイルスの被害状況が欧米に比べたら、軽微に見えるからです。欧米に比べたら、死者が少ない。「日本経済は大丈夫だろ」と読んで、株を買っているのです。
もうここまで来たら、コロナ対策と経済の両方を回すことにしないと。そして、ワクチン接種を早急に実施する――そう考えている人も多いのでしょうが、そんな目論見は外れることも往々にしてあるんですけどね......。
とりあえず個人的には、今は黙々とゴルフを続けます。少しでも経済を回さないと、ですね。