宮司愛海連載:『Manami Memo』第19回フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第19回は、フジテレビの『東京2020オ…



宮司愛海連載:『Manami Memo』第19回

フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第19回は、フジテレビの『東京2020オリンピック』アスリート・メーンキャスターであり、番組でも共演している宮里藍さんをゲストに迎え、スペシャル対談を行なった。まずは、ふたりが初対面で互いにどのような印象を持っていたのか。さらに、宮里さんの鋭い質問に宮司アナがタジタジに!? 楽しい会話を繰り広げた。



会話が弾んだ宮司愛海アナと宮里藍さん

宮司 宮里さんに初めてインタビューをさせていただいた際、(ゴルフ中継担当の)竹下陽平アナウンサーから「いい方だよ」という話は聞いていたのですが、本当に素敵な方だなという印象しかありませんでした。

宮里 ありがとうございます。

宮司 初めて話をうかがってみて、「なんてこの人は"聞き上手にさせ上手"なんだろう」と思ったんです。

宮里 えーっ、本当ですか?

宮司 聞いているこちらが、あたかも優秀なインタビュアーになったかのように錯覚してしまうくらい、質問しやすい話し方をしてくださったんです。「宮里さんって、本当に人間力がある方だな」と、すごく感激したのを覚えています。

宮里 この対談、なんか褒め合いになる感じがして、すごく照れ臭いんですけど(笑)。私もまったく同じようなことを思っていました。「宮司さんはすごく話しやすいな」というのが、最初に会ったときの印象です。

宮司 うわっ、うれしい。

宮里 現役の間もいろんなインタビューを受けてきたんですけど、宮司さんは不思議と「初めまして」の感じがなくて。すごくリラックスして話ができました。私自身は、一方的に喋ることも得意としていますけど(笑)、そのときは話をうまく引き出してもらえて、すごく楽しくお仕事させてもらいました。

宮司 そして今度は、東京オリンピックで、その興奮を一緒に伝えるキャスターとしてご一緒させていただくことになりました。最初にオリンピックのアスリート・メーンキャスターに就任すると聞いたときは、どんな心境だったのでしょうか。

宮里 オリンピックには何かしら携わりたいなという気持ちがずっとあったので、ゴルフの枠だけにとどまらないキャスターという形でお仕事をいただけたときは、すごくうれしかったです。そういった立場で、いろんな人に(情報を)伝えていく経験はまったくなかったので、最初は「本当に務まるのかな」という不安もありましたが、オリンピックに携われるワクワク感がそれを越えていく感じでした。

宮司 『S-PARK』でご一緒するようになってからも、宮里さんのコメント力や着眼点は、アスリートだったからこそでもあるのでしょうが、天性のものがすごくあるなと感じています。"天性の"と、私が言うのも偉そうですけど(笑)。

宮里 でも、私がそういった形でコメントさせていただく立場になったとき、最初に気づいたのは、私は本当にプロゴルファーとして「ゴルフ界にどっぷり浸かってきたんだな」ということでした。やっぱり「他の競技のことも知らないと難しいな」という壁が、最初はありましたね。

 ですから、その選手がどういう思いでこの大会に臨んでいるのかとか、自分と照らし合わせて、想像しながらコメントすることしかできないなと思ったんです。宮司さんたちプロの仕事を間近で見ていると、「自分もああいうふうにやりたいな」と思うんですけどね(笑)。

宮司 そうなんですか?

宮里 でも、そこまで欲張りになると、自分のやるべきことというか、自分の役回りを忘れてしまいそうだったので。選手としての視点を持ちつつ、コメントするということでいいのかなと、最近、ようやく思えるようになりました。

宮司 最近なんですね。

宮里 最初の頃は大変でしたから。以前、宮司さんにも少し話したことがありますけど、コメントしていることに対しての手応えだったり、「可視化できる点数が欲しい」みたいなことをずっと思ったりしていました。 周りの人から「すごくよかったよ」と言われても、自分が手応えを感じる瞬間は少ないので、そこでの葛藤もありますね。

宮司 宮里さんのキャスターとしての最初のインタビューは、テニスの錦織圭選手だったと思います。振り返ってみて、いかがですか?

宮里 絶対に失礼なことをしてはいけないという思いはありつつ、でも、純粋に話を聞けるうれしさもあり。あっという間でしたけど、かなり緊張しましたね。インタビュー時間内での段取りを頭に入れながら、自分が質問したいことを忘れずに聞いていくのは、すごく難しいことだなと感じました。

宮司 どういうところで一番緊張しましたか?

宮里 立ち上がりですね。私も初めてだったので硬かったですし、流れに乗ってしまえば、すごく話しやすかったんですけど、そこにいくまでの雰囲気作りは難しかったです。宮司さんはインタビューのとき、最初に世間話とかするんですか?

宮司 私は結構するタイプです。実は私も以前、『めざましテレビ』を担当していた時代に、先輩の軽部真一アナウンサーに相談したことがあるのですが、「最初にほぐして話しやすくしたほうがいいときと、完全にヨーイドンで始めたほうがいいときがある」と聞きました。

宮里 へぇ~、面白い(笑)。

宮司 向こうから話しかけてくださったりとか、普通に会話できそうな空気だったりしたときは世間話をしますが、あえてしないときもあります。

宮里 その違いを今度、客観的に見てみたいな(笑)。

宮司 私もまだ教わっている身なので、偉そうなことは言えませんけど(笑)。

宮里 他にも、自分なりのインタビューのやり方ってありますか?

宮司 私の場合は、インタビューが始まる前までに自分の気持ちを作り上げるというか。会う前の準備段階で相手のことをよく知ったうえで、その選手のことをすごく好きになる、みたいな気持ちでいます。やっぱり、相手のことを身近に感じられないと、面白い話は聞き出せない。その場で考えるというよりも、そこにいくまでの準備の段階で、すべて体に馴染ませておかなければいけないと、毎回思います。

宮里 (ノートを手に取って)メモしますね。

宮司 恐縮です(笑)。

宮里 自分が初めて聞き手に回って思ったことですけど、アナウンサーの方って本当にすごいですよね。下準備でその選手や競技の膨大な情報を頭に入れておかなきゃいけないし、それを処理しながら短い時間で選手の答えを引き出すのは、相当なスキルだと思います。聞かれている側としてはそんなことを考えたこともなかったので、すごく大変なんだと思いました。やっぱり聞かれるほうが楽です(笑)。

宮司 いえいえ、私もまだまだ修行中の身なので難しいです(笑)。でも、宮里さんには、アスリートの気持ちがわかるからこそ、聞きづらいこともあると思うんですが、そういうときはどうしているんですか?

宮里 選手は自分が調子のいいときは気持ちに余裕があるので、調子が悪かったときのことを聞かれても、ある程度消化できていて、言葉にする余裕もある。でも、あまり調子がよくないときに、たぶん何百回も聞かれているであろうオリンピックに向けての話などを聞かなきゃいけないとなると、すごく難しいですよね。

 たとえば、錦織選手のときはケガをしている真っ最中で、いつ復帰して、どう調子を上げていくかがはっきりと見えないなかでのインタビューだったので、仮に出場が内定していたとしても、オリンピックについて聞かれるのはストレスがかかるだろうなと思いました。あとは、他の(ランキング)上位選手と比べられるような質問は聞きにくくて......、それは、最終的に聞けなかった気がします。宮司さんならそういうとき、どうされますか?

宮司 「聞くしかない!」という気持ちではいるのですけど、それでもやっぱり、インタビューをしている者同士でしか感じられない空気は絶対にあると思います。スタッフが同じ場にいたとしても、(そのスタッフには)感じ取れない感情の機微みたいなものは(ふたりの間で)あるので、「これは絶対に聞かないほうがいい」と思ったら、私も聞かないです。

宮里 そうなんですね。

宮司 インタビューが終わったあとに、ディレクターに「たぶん、あれは聞いたらダメだったと思います。ごめんなさい」と謝ることもありますね。

宮里 (メモを取りながら)なるほど。私も現役当時、そういう空気を出しているつもりはなかったんですけど、出ていたときもあったんだろうなって、今になって思います。たとえば、イップスになったとき、それについて触れられるのはわかっているんだけど、ちょっと構えるとか。確かに、そのときの感情の動きによって自分の受け止め方も違ったんだろうなと、今聞いていて思いました。その場の空気感とか、感情の機微を感じ取るのはすごいことですね。

宮司 私はただ、ビビリなだけです(笑)。さて、宮里さんはゴルフ以外にもいろんな選手にインタビューをされてきましたが、東京オリンピックに向けて特に注目している競技はありますか。

宮里 個人的には、卓球にすごく注目しています。

宮司 水谷隼選手に取材されましたよね。

宮里 そうですね。東京オリンピックから新しく採用されたミックスダブルスで、水谷選手と伊藤美誠選手のペアがかなりメダルに近いと聞いていますし、実際に取材させていただいたという思いも含めて、すごく楽しみにしています。ただ......、いろんな競技のアスリートを取材させてもらいましたが、私の中では、水谷選手のインタビューにはじくじたる思いがあるんですよね(苦笑)。

宮司 そのお話、以前もされていましたね。

宮里 とにかく卓球は奥が深くて、話をうまく掘り下げられなかったというか。スピンのかけ方など、ゴルフにも通じる部分があるので、話を聞いていると、どんどん興味は湧いてくるんですけど......。

宮司 宮里さんのような、スピンを知り尽くした方が聞いたら、より深いインタビューに......。

宮里 それが全然できなかったんですよ、本当に(苦笑)。

宮司 いえいえ、卓球場でのインタビュー、よく覚えています。面白かったです。

宮里 自らの反省はともかく、水谷選手が「最後」と公言するオリンピックにどんな思いで臨むのか、そこは注目していきたいと思っています。

宮司 宮里さんは、『S-PARK』でご一緒している柔道の野村忠宏さんとは以前から親交があったそうですが、ゴルフ以外の競技の選手ではどんな方とお知り合いなんですか?

宮里 現役時代はアメリカにいたので、他競技の選手と交流する機会はまったくなかったのですが、引退してからはつながりが増えましたね。バドミントンの藤井瑞希さんや、バレーボールの狩野舞子さん。新体操の田中琴乃さんとは、以前にスポーツイベントで一緒になってから交流させてもらっています。

宮司 今名前が出た方々とは、私も一度お会いさせていただき、その節はありがとうございました(笑)。

宮里 私も楽しかったです(笑)。

宮司 それぞれが自分の道を極めてきた人たちばかりだから、誰の話を聞いても面白くて。みなさん、本当に素敵な人たちだなと思いました。

宮里 そうやって他競技の選手の話を聞くのは、毎回楽しいですね。歩んできた道はまったく違うのに、不思議と共感できるところがあって。まったく違う競技でも波があるのは一緒なので、そこで当たる壁の乗り越え方はわかり合えるものになっていくのかなっていう気がします。

宮司 さて、宮里さんは新たな年を迎えるにあたり、2021年をどんなふうに過ごしていきたいと思っていますか?

宮里 新型コロナウイルスによって世の中がどう動いていくかにも影響されるとは思いますが、今後もいろんな競技の選手とまた話ができる機会に恵まれたらいいなと思っています。そのためにも、まずはオリンピックに向けて、今いただいているキャスターの仕事を全うしたい。その気持ちが一番のモチベーションになっています。

宮司 取材してみたい選手や競技などはありますか?

宮里 こういう言い方をしたらよくないのかもしれないですが、正直、どんな竸技でもいいです。2020年は不完全燃焼な部分が大きかったというか、本来であれば、いろんな取材ができる楽しみがあったはずなのに、それができなかったので。2021年はひとつでも多くの取材ができたらいいなと思います。

宮司 本当にそうですよね。対面でのインタビューもできなかったですからね。

宮里 あと、私が理想にしているのは、番組でご一緒している野村忠宏さんですね。野村さんの言葉は、短くてもぎゅっと詰まったメッセージが伝わるので、いつも横目で見ながら、そのスキルを盗もうとしています(笑)。

宮司 でも、野村さんには野村さんにしか、宮里さんには宮里さんにしか言えないことがあって、私たちはふたりのバランスにすごく助けられています。引き続き、2021年もよろしくお願いします。

宮里 こちらこそ、よろしくお願いします。