12月12日放送の「卓球ジャパン!」では、8か月ぶりの国際大会となった男子ワールドカップ2020<11月13~15日/中国・威海>で、日本人初の快挙となった2大会連続メダル獲得となった張本智和の準決勝、馬龍(中国)との激闘をDEEP解説。日…

12月12日放送の「卓球ジャパン!」では、8か月ぶりの国際大会となった男子ワールドカップ2020<11月13~15日/中国・威海>で、日本人初の快挙となった2大会連続メダル獲得となった張本智和の準決勝、馬龍(中国)との激闘をDEEP解説。

日本のエースの進化を男子日本代表監督・倉嶋洋介さんをゲストに迎えて徹底的に掘り下げた。

張本は去年のワールドカップでも準決勝で馬龍と対戦し、4-2で勝って銀メダルを獲得している。馬龍は「絶対王者」と形容されるほどの実力者ではあるが、実は張本にとっては比較的戦いやすい相手だと倉嶋監督は語る。

バックハンドをあまり強く打たず、フォアハンドで動いて打ってくるので、戦術が立てやすいのだ。ただし、バックばかりを狙うとそのボールを待たれるので、怖くても要所でフォアに送って逆を突きながらバックを攻める必要がある。去年はこの作戦がうまく行って勝ったという。

一方の馬龍は張本のミドルを狙ってミスを誘う作戦。昨年の対戦ではベンチコーチが大声で「ミドル狙え、ミドル!」とアドバイスをしており、これに対して馬龍が「やってるよ!」と怒っていたという。中国語がわかる張本に筒抜けだったのだ。「張本が中国語わかるって知ってるはずなんですけどね(笑)。興奮したんでしょう」と倉嶋監督。

今回もこうした基本的な作戦で臨んだ両者だったが、第1ゲームは張本のミドルにわずかにミスが出て7-11で落とした。自粛期間中、前陣での細かいステップに活かすためボクシングを練習に取り入れたという張本だったが、8ヵ月ぶりの実戦とあってまだ感覚を掴めない。

さらに、新型コロナの感染防止対策のため、8日間もホテルで隔離生活を送ったハンディも小さくはないだろう。

第2ゲームになると、試合慣れしてきたのか張本のバックハンドが冴えわったり、馬龍のフォアを抜き去る場面が3度もあった。その威力の秘密を倉嶋監督はこう語る。



「ラケットの引き込みや身体の向きをクロスに打つときとまったく変えずにストレートに打つので相手からはコースが見えない。しかも外側に逃げるように曲がるため、馬龍でさえ見送るしかない。張本の大きな進化のひとつです」

馬龍はこれを警戒してバックに回り込まなくなるので、次はバックとミドルを狙って崩す。そのセオリー通りのプレーで張本は、絶対王者を相手になんと11-3の大差で第2ゲームを奪取した。張本の強さの秘密は「何でも吸収しようという意識の高さ、ツアーで負けた夜からトレーニングを始める姿勢、努力する才能がずば抜けているところ」と倉嶋監督。

張本は、続くゲームを11-6、11-8と取ってゲームカウント3-1とし、決勝進出まであと1ゲームと迫った。

第5ゲーム、4-4から張本がバックハンドで馬龍のフォアを抜いて5-4としたところで馬龍がタイムアウトを要求。ここからが馬龍は強かった。

ここでタイムアウトの重要性にMC武井壮が聞くと「タイムアウトで流れが変わったなんて結果論じゃないの?という人もいますが、僕らはそうは考えていません。タイムアウトは勝負を分ける最大のポイントであり、僕らが使える権利。絶対失敗は許されないんです。ある意味命がけじゃないですけど、そういう気持ちで取っている」と倉嶋監督。

MC平野も「全日本選手権で一度だけ後輩のベンチに入ったんですけど、タイムアウトを取ろうとしたときは緊張で手が震えましたね」と語った。



果たしてこのタイムアウトの後、馬龍が突然、投げ上げサーブを使い出した。中国選手は流れが悪くなると必ずサーブを変えるという。昨年のワールドカップ決勝で張本が負けたときも、樊振東が順回転サーブをYGサーブに変えて流れが変わった。投げ上げサーブはリズムが変わるので馬龍自身もやり難いはずだが、相手もやりにくいならそれをやろうという考えだ。実際、馬龍の投げ上げサーブに対して張本のレシーブが長くなり、馬龍に3球目攻撃を許すケースが多くなり、結果、8-11でこのゲームを落とした。

続く第6ゲームも馬龍は投げ上げサーブを駆使して6-11で取り、ついに最終ゲームに。

馬龍はバックハンドを無理して振らず、卓球台から距離を取ってボールに合わせるだけにしてフォアに来るのを待つようなプレー。冷静につないで張本のミスを狙う作戦だ。攻めるだけではなく、こうした戦術の引き出しを持っているところも絶対王者ならではと言える。結果、張本は馬龍を打ち抜けず、最後は4-11で屈した。

続くメダル決定戦で張本はチャンウジン(韓国)を4-3で破り、見事銅メダルを獲得。2大会連続メダル獲得という、日本選手初の快挙を成し遂げた。



張本は試合後に「今回は調子が良くなかったがそれを相手に見せないように落ち着いて粘る試合ができた。どの試合も負けてもおかしくなかった中でメダルを獲れたので最低限の結果は残すことができたと思う。課題は攻撃力で、まだまだ攻め切ることができていないこと」と語った。日本のエースはまだまだ進化途上の17歳だ。

「卓球ジャパン!」 BSテレ東で毎週土曜夜10時放送