『いわかける!』で主演を務める上坂すみれ東京2020オリンピックから実施競技に追加され、日本でも競技人口が増加しているスポーツクライミング。世界的に活躍する日本人プレーヤーが続々誕生しているだけでなく、スポーツ経験があまりない人でも気軽に楽…



『いわかける!』で主演を務める上坂すみれ

東京2020オリンピックから実施競技に追加され、日本でも競技人口が増加しているスポーツクライミング。世界的に活躍する日本人プレーヤーが続々誕生しているだけでなく、スポーツ経験があまりない人でも気軽に楽しめるということもあり、いま注目のアクティビティとしても人気が高まっている。

そんなスポーツクライミングを世界で初めて題材にしたアニメ『いわかける!- Sport Climbing Girls -』が、ABCテレビ・テレビ朝日系列24局全国ネットで今年の秋から始まった。石坂リューダイ氏による同名コミックスを原作に、ふとしたきっかけからスポーツクライミングの世界に飛び込んだ女子高生・笠原好(かさはら・このみ)が、パズルゲームで培った天才的なセンスを活かしながら全国の頂点を目指すストーリーだ。

主人公の好を演じたのは、人気声優の上坂すみれ。学生時代に運動部だった経験がなく、自身のことを「根っからの文系」と認める彼女は、スポーツクライミングの世界にのめり込む女の子を、どのように演じたのか。そして、スポーツクライミングの魅力をどのように感じたのか。話を聞いた。

――『いわかける!』に出演する前から、スポーツクライミングのことはご存じでしたか?

上坂すみれ(以下、上坂) 「ボルダリング」という言葉は知っていました。街ナカでガラス張りのボルダリングジムを見かけていて、ちょっと楽しそうだなって。だから興味はあったんですけど、なかなかひとりで入っていく勇気はありませんでした。

どんなスポーツか詳しく知ったのはオーディションのお話をいただいてからです。オリンピックの競技になったんだとか、ボルダリング以外にも種目があるんだとか、原作を読んでいろんな発見がありました。私は運動をあまりやってこなかったタイプなので、この作品でカラダを動かすことの楽しさとの出会いを感じました。

――上坂さんが演じた笠原好は、さまざまな大会で優勝した天才パズルゲーマーであり、持ち前の観察力と分析力を活かして、スポーツクライミングの世界でも初心者ながらめきめきと頭角を現していきます。このようなキャラクターを演じるうえで意識した点はありましたか?

上坂 好は本当に初心者としてクライミングを始めたので、演じるときは「基本はあくまで普通の女の子なんだ」という点を意識しました。部活の仲間に専門用語を聞き返したり、「こんなのもあるんだ」っていう驚きの感覚を大切にしましたね。視聴者の方と同じ目線で、好も物語が進む中で少しずつクライミングを知っていきます。そうやってどんどん分からないものが分かるようになったり、できなかったことができるようになったりするワクワク感が伝わるように、「クライミングって楽しい!」という気持ちで演じていきました。

――その一方、好はスイッチが入ったときは人格が変わったような驚異の集中力を見せる人物でもありますよね。

上坂 そうですね。わりと二重人格っぽい感じというか。普段の好は女子高生らしいかわいい面があるんですけど、試合になるとゲームで鍛えられたオブザベーション(観察)力で、たちまち目の前の壁の攻略法を見つけ出してしまうんです。

だから、みんなでいるときと、ひとりで競技に向かい合っているときでは、両極端なお芝居をしています。ただ、二重人格っぽいといっても、それは「周りが見えないやばい子」じゃなくて、「集中力がものすごい天才的な子」なんだよということが伝わるように気をつけました。



上坂さんが演じる笠原好。©石坂リューダイ・サイコミ / 花宮女子クライミング部応援団

――上坂さん自身はアニメのPR企画で初めてボルダリングを体験されたそうですね。

上坂 共演の石川由依(チームメイトの上原隼を演じた)さんと一緒にジムに連れて行っていただきました。まったくの初体験だったんですけど、運動神経がない私でも、すごく楽しくできたのがうれしかったです。めちゃくちゃ達成感がありました。

――少し難易度が高い課題も「一撃」(初めてのトライで完登すること)されたとか。

上坂 もう、無我夢中で登りました。指導してくださった先生が、「完登に必要なのは体力よりも勇気」とおっしゃっていたんですけど、あと少しで届きそうなところで、思い切ってジャンプするところとか、ちょっとアトラクション的な要素も感じました。しんどいことはしんどいんですけど、難しさと面白さのバランスがすごくいいスポーツだと思いましたね。

――まさに好がハマったように、パズルゲーム的な魅力もあるというか。

上坂 作中でクライミングは「岩のパズル」とも言われますけど、まさにそうだなって。

――実際に体験したことで演技の参考にも?

上坂 セリフで「あそこのホールドが掴みづらい!」とか言っていたんですが、やってみたら、それが実際にどのくらい掴みにくいのかわかりました。何事も体験してみることが大事ですね。まだひとりでジムに行くのは勇気がいりますけど(笑)。でも、企画で体験させていただいたときも、ひとりで登られている女性の方がいらっしゃいましたから、全然ひとりで来てもいいんだって思いました。

――それだけ多くの人がスポーツクライミングに夢中になっている理由は、どういったところにあると思いましたか?

上坂 私のような初心者でも楽しいし、オリンピックの競技になるくらいの奥の深さもある。しかも、カラダが大きければ、力が強ければ有利というわけでもないじゃない。頭の回転の早さとか、あと一歩を踏み出す勇気とかも必要だったりする。そういう複合的な面白さがありますよね。

それにビジュアル的にもキャッチーですよね。すぐに思いました。「これは女子が好きなやつだ!」って(笑)。カラフルなホールドがいっぱいあって、外から見ても明るい雰囲気がある。仕事帰りに気軽に達成感を味わえるし、女性に流行っているのも納得しました。

私はスポーツ全般をほとんど経験しない青春だったんですけど、それこそ部活でクライミングをやっていたら、好みたいにハマっていたかもしれないですね。

――「スポーツをやっておけば良かった」と思ったことはあるんでしょうか?

上坂 声優は文系の仕事だと思っていたんですけど、実際になってみたら全然違っていて、めちゃくちゃ体力が必要なんですよ。「声を出すって全身運動なんだ」「こんなに疲れるなんて知らなかった」って思いました。アフレコ以外に歌やダンスもありますし。だから最初の頃は「運動しておけばよかった」と思いました。

それから毎日元気でいる体力も大切ですよね。アフレコはみんなでするものだから、私がお休みしたら他の皆さんにご迷惑をかけることになってしまいます。それで数年前からボクササイズやホットヨガを始めました。特に来年はライブを、今年できなかった分、一生懸命やっていきたいと思っています。だから年末年始にカラダがなまってしまわないように気をつけたいですね。

――それこそ今年はあまり外に出られない1年でしたから、体力づくりに励まないと。

上坂 本当そうですよね。『いわかける!』のみんなのような運動は無理ですけど、文系なりに自分のできる範囲で体力をつけていきたいです(笑)。

(ヘアメイク/北川 恵)

●上坂すみれ
1991年12月19日生まれ 神奈川県出身 血液型=O型
〇2012年1月に本格的に声優デビュー。同年に初レギュラー作品となるTVアニメ『パパのいうことを聞きなさい』でヒロインを務めて以降、多くの作品に出演。代表作に『スター☆トゥインクルプリキュア』(ユニ/キュアコスモ)、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(アナスタシア)など。今後も多くの待機作が控えている。また、2013年放送のTVアニメ「波打際のむろみさん」で主題歌を担当して以降、アーティストとしても活躍している。
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