★上坂すみれインタビュー(後編)『いわかける!』で主人公の笠原好役を演じた声優の上坂すみれさん東京2020オリンピックで実施競技に追加され、日本でも年々競技人口が増えているスポーツクライミング。そんなスポーツクライミングを世界で初めて題材に…

★上坂すみれインタビュー(後編)



『いわかける!』で主人公の笠原好役を演じた声優の上坂すみれさん

東京2020オリンピックで実施競技に追加され、日本でも年々競技人口が増えているスポーツクライミング。そんなスポーツクライミングを世界で初めて題材にしたアニメ『いわかける!- Sport Climbing Girls -』が、ABCテレビ・テレビ朝日系列24局全国ネットで放映中だ。

パズルゲームで培った天才的センスを活かし、全国の頂点を目指す主人公・笠原好(かさはら・このみ)を演じたのは、人気声優の上坂すみれ。インタビュー後編では、アニメの見どころだけでなく、スポーツクライミングの魅力についても引き続き話を聞いていく。

――『いわかける!』はスポーツクライミングの描写だけでなく、クライミング部の仲間たちや他校のライバルなど、印象的なキャラクターが多く登場する点も魅力となっています。特に同級生の上原隼(うえはら・じゅん)は、幼い頃からクライミング一筋というキャラクターで、好がスポーツクライミングにのめり込むきっかけを作った人物でもあります。この正反対な性格の2人の関係性が徐々に変化していく過程も、アニメの見どころですね。

上坂すみれ(以下、上坂) 隼ちゃんは本当にストイックですよね。反対に好はずっとゲーマーだったせいか、天真爛漫に「友達ができてうれしい!」という気持ちが先走って、ちょうどいい距離の取り方があんまりよく分かっていない(笑)。でも隼ちゃんとは仲良くしたいっていうところで、最初は好から一方通行の矢印なんですけど、少しずつ隼ちゃんからも返ってくるようになっていきます。

――実際、作中では好と隼が掛け合うシーンが多いですよね。

上坂 隼ちゃんを演じた石川由依さんの声がすごくソリッドでかっこいいので、初めてアフレコしたときから、「ああ、隼ちゃんだ」とすんなり入り込めました。好と隼ちゃんとの掛け合いは、やっていくうちにどんどん関係性が変わっていくので、私もやっていて楽しかったです。

――ゲーマーで運動経験がほとんどないという好の設定は、上坂さんとも重なるところがあります。

上坂 私も好にはすごく共感できました。スポーツって、隼ちゃんみたいに小さな頃からひとつのことに打ち込んできた人がエリートになるイメージがあって、それで遠ざかっていたところもあったんです。でも、好はそうじゃないですからね。好を見ていると、スポーツだって自分が夢中になれるのであれば、いつ始めてもいいんだと伝わってきます。

こういうメッセージは、きっとアニメを見ている視聴者の方にも共感してもらえると思うんですよ。深夜アニメを見ている人も、どちらかといえば、私と同じように「運動はそれほど......」という人が多いんじゃないかと思います。『いわかける』はかわいい女の子がいっぱい出てくる作品ですから、そこを目当てに見始めた方もたくさんいるでしょうし。

――スポーツクライミングの激しい描写を見ていると忘れそうになりますけど、女子高を舞台にした、美少女ばかり出てくる作品なんですよね。

上坂 そうなんですよね(笑)。青春とスポ根があって、「おまけに女の子もかわいい!」っていう盛りだくさんな作品です。

――ただ、みんなクライミングの選手だから、他のアニメではなかなか見ないくらい筋肉がたくましい。

上坂 「筋肉美女子のアニメ」っていうのは新しいジャンルかもしれないです(笑)。隼ちゃんなんて全身バキバキですよね。みんな腹筋の線がちゃんと描かれているあたりにこだわりを感じます。

――それだけこだわっているから、アニメを見ると自分もクライミングをやってみたくなるんですよね。

上坂 本当そう思います。バトルアニメを見たあとに自分も強くなった気になるように、クライミング選手みたいな気持ちにさせてくれる作品です。だから、私もそうだったように、「自分は一生オタクで過ごすんだ!」と決めていた人でも、カラダを動かしたくなるアニメじゃないかなって思いますね。


作中には、上坂さんが演じる笠原好(左上)のほか、多くの「筋肉美女子」が登場。©石坂リューダイ・サイコミ

 / 花宮女子クライミング部応援団

――かつての上坂さんのように、これまでスポーツをほとんどしていないという人に、クライミングの楽しさを伝えるなら?

上坂 そうですね......、プライドがいらないところかな(笑)。

――プライドがいらない。

上坂 これは私がそうだからなんですけど、文系の人って、失敗するのが恥ずかしいから、苦手なことはできるだけやりたくないっていうところがある気がするんです。でも、クライミングをやっていると、登るのに夢中になるので、そういう気持ちがどこかに吹き飛んでしまうんですよ。だから、「いつもの自分にさよなら」できるというか。

それにボルダリングならタイムも競わないし、勝ち負けがないんですよ。自分との戦いだけでいいんですよね。マウントの概念もないし、失敗しても恥ずかしくない。それぞれの人の体力に合わせてできるから、体育の時間が苦手だった人も大丈夫。それってすごく貴重なスポーツだと思うんです。

――他人との競争じゃなくて、「前回よりも上に登れた」とか「できなかった課題ができるようになった」という過去の自分との比較だけがあるスポーツですよね。

上坂 ゲーム的ですよね。例えば、私は『ロックマン』をプレイしているときと同じような感覚になりました。いつも同じところでやられるんだけど、繰り返し何度もやっているうちに対策がわかってきて、いつかクリアできる。そんなふうに手軽に達成感を味わえるのも、スポーツが苦手な人にはありがたいところだと思います。

――この記事が公開される頃には、ちょうどアニメがクライマックスを迎えています。最終話に向けた見どころは?

上坂 ここまで順調に勝ち進んできた好ですけど、最後にものすごい強敵との戦いが待っています。アフレコでも、「本当に勝てるのかな?」と思ったくらいの強敵です。ほかにも全国大会に集まったライバルたちはみんな個性的で、しかもそれぞれの「クライミング道」があります。そんな強敵たちがしのぎを削る大会の緊張感は、視聴者の方にも伝わると思います。

そして何より、花宮女子高校クライミング部の目標は「全一」(アーケードゲーム界における「全国一位」の略)なので、その達成に向けて応援してください!

(ヘアメイク/北川 恵)

●上坂すみれ
1991年12月19日生まれ 神奈川県出身 血液型=O型
〇2012年1月に本格的に声優デビュー。同年に初レギュラー作品となるTVアニメ『パパのいうことを聞きなさい』でヒロインを務めて以降、多くの作品に出演。代表作に『スター☆トゥインクルプリキュア』(ユニ/キュアコスモ)、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(アナスタシア)など。今後も多くの待機作が控えている。また、2013年放送のTVアニメ「波打際のむろみさん」で主題歌を担当して以降、アーティストとしても活躍している。
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