NHK杯フリーの鍵山優真。GPシリーズ初優勝を果たした 11月下旬に開催されたフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦のNHK杯。鍵山優真のショートプログラム(SP)は、うれしさと悔しさが入り交ざるものになった。 前戦の東日本選…
NHK杯フリーの鍵山優真。GPシリーズ初優勝を果たした
11月下旬に開催されたフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦のNHK杯。鍵山優真のショートプログラム(SP)は、うれしさと悔しさが入り交ざるものになった。
前戦の東日本選手権のSPは、冒頭の4回転サルコウの着氷でリズムを崩し、自信を持っていた4回転トーループもパンクして2回転になった。さらにトリプルアクセルはステップアウトと、思わぬミスが続いて71.72点の悔しい結果だった。
だが、今回は最初の4回転サルコウ+3回転トーループをしっかり決めると、次の4回転トーループも3.61点の加点をもらうジャンプとし、完璧な滑り出し。
「前半のジャンプは練習どおり。特に3回転トーループは練習よりうまく跳べて、自己評価で満点に近いジャンプができました」
鍵山がそう振り返った序盤の滑りに、関東選手権で出した98.46点を上回る高得点への期待が膨らんだが、前半の成功が後半のトリプルアクセルへの気持ちを変化させてしまった。トリプルアクセルはもともと苦手意識があったジャンプで、鍵山は「前半でいけると思い過ぎて、慎重になってしまった。いつもなら1・2・3のタイミングで跳ぶところを、今回は構えの時間が長くなって、体を巻き込んだ跳び方となり抜けてしまった」と反省した。
SP演技の鍵山。
「後半、慎重になった」と振り返る
結局、そのトリプルアクセルはパンクしてシングルになり0点。東日本では不安から慎重になったが、今度は完璧を求めて大事にいき過ぎてしまった。
それでも「表現に関しては(振り付けの)ローリー・ニコルさんに言われていたことに加えて、自分で音楽を感じて表現したり、表情を作ったりできたのでよかった」と手応えをつかんだ。実際、スピンやステップはすべてレベル4として、2位の友野一希に3.99点差をつける87.26点で1位発進した。
東日本では、大会2週間前にフリーのプログラムが完成したばかりということもあって大きく崩れていたが、今回は「曲かけやジャンプの回数を増やした」という練習の成果が出た。
また、鍵山は東日本では4回転サルコウを2本入れていたが、そのサルコウで転倒してからミスを連発したため、今回は構成を変更。フリーで跳ぶ3本の4回転ジャンプのうち、2本をトーループとした。すると、最初の4回転サルコウで4.07点の加点をもらい、その後の4回転トーループ+3回転トーループ、単発の4回転トーループもきれいに決めた。
鍵山はこれで流れに乗り、SPでミスをした後半のトリプルアクセルは3連続ジャンプと単発をともにしっかり跳んだ。3連続ジャンプとともに得点源である3回転ルッツ+3回転ループは、ループが1回転になったものの、結果は2位を約45点上回る188.61点を獲得。合計を275.87点にしてGPシリーズ初優勝を果たした。
「初めてのシニアの大舞台で優勝できたのは素直にうれしいし、演技も完璧ではないがまとめられたのはすごくいい経験になりました。昨日(SP)は慎重になり過ぎてミスをしましたが、今日は(コーチの)お父さん(正和)からも『練習どおりに最後まで思い切りやってこい。常にチャレンジャーだから』と言われて頑張ることができました。後半のルッツ+ループが抜けたし、スピンの回転が遅かったのでもっと練習しなければと思いました」
フリーは鍵山の前の選手たちにミスが続いたことで、GOE(出来栄え点)加点も少し高めになっていた感もあるが、関東選手権の287.21点に続き、275点台を出したことで鍵山はその実力が本物であることを証明した。
今回の結果を見れば、12月の全日本選手権へ向けて、羽生結弦と宇野昌磨を追いかける選手として、鍵山が頭ひとつ抜け出していると言えるだろう。
鍵山は「(羽生、宇野と)肩を並べるためには4回転の種類を増やしていかなければいけないし、表現ももっと伸ばす必要がある。課題はたくさんある」と意欲的だ。17歳のさらなる成長に期待したい。