11月28、29日、愛知県蒲郡・豊田自動織機海陽ヨットハーバーで「全日本学生ヨット個人選手権」が開催されました。初日の強風4レースに続いておこなわれた2日目は風が落ちて軽風戦を予感させます。選手たちは定刻に海に出ると、やはり風が徐々に落…

 11月28、29日、愛知県蒲郡・豊田自動織機海陽ヨットハーバーで「全日本学生ヨット個人選手権」が開催されました。初日の強風4レースに続いておこなわれた2日目は風が落ちて軽風戦を予感させます。選手たちは定刻に海に出ると、やはり風が徐々に落ちていきました。APがあがって風が安定するのを待ってレース開始。470級はスタート前に風が変わるなどで2度のやり直しを経て始まりました。(BHM編集部)

470優勝の大石駿水/三浦 匠(同志社大)。大石(右)は霞ヶ浦高から今春同志社大に入学した1年生。SailGPフォイリングキャンプに参加するなど抜群のセーリングセンスを持つ今後楽しみな選手です。三浦は光高校ヨット部出身で松尾(光高校出身)のクルーとしてISAFユースワールド(2015)に出場した経験があります

 風上(本部船)側に艇団がかたまるなか、風下エッジから胸をすくようなスタートを見せたのは大石駿水/三浦 匠(同志社大)です。スタート直前に変化した風を読んだ大石/三浦は、コース中央から左へ展開しながら上マークをトップ回航し、そのまま独走体勢に入りました。

 右海面狙いの470上位グループがこぞって順位を崩したこともあり、トップフィニッシュを飾った大石/三浦は、最終レースを待たずに個人戦優勝を決めました。大石はインカレ個人戦で歴代3人目(2005年西村裕司・同志社大、2006年市野直毅・関西学院大)となる1年生スキッパーでの優勝です。

470のターニングポイントとなった第5レース。アウター側からスタートし、すぐさまポートに返して風上フリートの前に出た大石/三浦(同志社大)

「アウター側からのスタートはよく考えてのことです。ライバルチームが(風下側に)いなかったので怖い部分もあったけれど、自分たちの目を信じました。優勝できてチームも活気づくし、自分たちが練習の指針となることができます。この経験を来年の活動にいかしていけば、同志社大の総合優勝につながると思っています」(三浦・同志社大3年)

「470全日本選手権を含め11月にいくつかの大会に出場して日に日にレベルアップしているのを実感しました。(史上3人目1年生優勝スキッパーは)三浦さんに頼りっぱなしで、任せ任せのレガッタでした。それでも、自分たちの実力を発揮できたので自信につながりました。誰も成し遂げたことのない4連覇という明確な目標もできたので、それに向かって努力していきます」(大石・同志社大1年)

 スナイプ級は松尾虎太郎/川合大貴(早稲田大)が優勝を飾りました。第5レースでトップフィニッシュしたかに思えた福岡大をはじめ5艇がリコール(UFD)による失格。また、2位の髙山颯太/佐々木謙(中央大)との得点差を松尾/川合のカットレースとなる9点以上の差を広げたため、最終レースを待たずに優勝を決めました。松尾虎太郎は個人戦史上初となる3連覇達成です。

早稲田大の松尾虎太郎/川合大貴/鶴岡由梨奈(右から)。本大会では川合(鶴岡は出場せず)、和歌山全日本インカレでは主に鶴岡がクルーを務め、3人でビッグタイトルを勝ち取りました。松尾は個人成績で総合1位を取りMVPも獲得しました

「今回はいつもよりもレース数が少なく、初日の風が良かったので上位に来るチームは順位を崩しませんでした。リコールや失格に気をつけるのはもちろん、最低でもシングル(10位以内の順位)に入ろうと意識していました。最終日は、どこまで風が弱くなるのか、チーム構成(クルーが2人いて風域で乗り換えている)に悩みました。でも、悩んでも仕方ないので、気持ちを切り替えて、できることをやろうという気持ちで挑みました。(3連覇を遂げて)取れたことはうれしいのですが、実感はありません。運が良かったのもあると思っています。今年は全日本インカレでも優勝できて出来すぎの1年になりました」(松尾虎太郎・早稲田大4年)

第6レースのフィニッシュ直後、がっちり握手を交わす松尾虎太郎/川合大貴。第5レースで優勝は決まっていましたが、同レースでUFDが多発したため得点計算できないため優勝の確信は持てず、最終レースも精一杯走りました

 また、併催された全日本学生シングルハンドレガッタ(レーザーラジアル級)は、東京大1年の西尾拓大が全レース1位で圧勝しました。西尾は小学3年から地元和歌山でOP級に乗り始め、高校時代は国体(福井国体4位)を中心に3年生の時にはインターハイ(6位)にも出場した実力選手です。

「4月に入学しましたが、ヨット部の活動をきちんと始められたのは、8、9月から。普段はスナイプに乗っています。今回は好きな強風だったので楽しく乗れました。風よ吹けと思っていたので、うれしかったです。課題は微風から中風までのコース取り。これから成長していきたい」(西尾拓大・東京大1年)

シングルハンドレガッタ(レーザーラジアル)で優勝した西尾拓大(東京大)。今後、東京大ヨット部の中心になるであろう実力選手です。西尾選手はフィン級で五輪を目指して活動する西尾勇輝選手の弟です

 大会は2日間で全6レース(初日4、2日目2レース)を終えることができました。風に恵まれたこともありますが、レース運営の手際の良さ、スピーディなレース進行に際立つ大会となりました。

 また、和歌山全日本インカレと同じように徹底したコロナ対策がおこなわれ、オンラインによる開会式、艇長会議、人数制限した表彰式など、あたらしいカタチの全日本インカレとなりました。さらに応援に来られない選手や関係者に向けてSNSを使ったライブ中継やトラッキングを公開することもスタンダードになっていくでしょう。

 全日本インカレ個人戦を最後に2020年度の大学選手権はすべて終了しました。初秋まで全日本選手権の開催が危ぶまれ、主催者の尽力は相当なものだっと想像します。本当におつかれさまでした。来年の全日本学生ヨット個人選手権の日程・開催地は、まだ決定していません。決まり次第バルクヘッドマガジンでもお伝えいたします。

毎日の検温、入場者確認などでマリーナ入り口に長蛇の列ができてしまいました。写真は選手たちが朝8時の開場時間を待っている風景です。大学選手権では、他種目よりも選手の数が多いことで、試行錯誤でさまざまなコロナ対策を試してきました。一通りの方法が見えてきましたが、改善や変更できる部分もありそうです

◎2020全日本学生ヨット個人選手権 最終成績 6R終了時
470級 参加52艇
1 大石駿水/三浦匠(同志社大)17p
2 小栁倫太郎/中村大陽(日本大)23p
3 小西健治/岩田慧吾(中央大)30p
4 小木曽涼/兼子烈(慶応大)36p
5 本多佑基/狩野弁慶(日本大)36p
6 西村宗至朗/新井健伸(早稲田大)36p

スナイプ級 参加54艇 6R終了時
1 松尾虎太郎/川合大貴(早稲田大)17p
2 杉浦涼斗/廣原周(日本大)26p
3 髙山颯太/佐々木謙(中央大)29p
4 澤田皓希/篠原璃音(同志社大)30p
5 大平京ノ介/與那嶺佑樹(明海大)34p
6 佐藤海志/岡村保乃加(日本大)40p

全日本学生シングルハンドレガッタ 最終成績 6R終了時
シングルハンド・レーザーラジアル級 参加10艇
1 西尾拓大(東京大)5p
2 中濱光祐(神奈川大)13p
3 大村杏奈(東海大)14p

2020全日本学生ヨット個人選手権 470級 最終成績
2020全日本学生ヨット個人選手権 スナイプ級 最終成績
2020全日本学生シングルハンドレガッタ 最終成績