専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第282回 ゴルフがうまくなりたい。楽しくラウンドしたい。有意義なゴルフライフを過ごしたい――と、アマチュアゴルファーの夢は尽きません。もしそれが、安物のクラブ1本で叶えられるとし…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第282回

 ゴルフがうまくなりたい。楽しくラウンドしたい。有意義なゴルフライフを過ごしたい――と、アマチュアゴルファーの夢は尽きません。もしそれが、安物のクラブ1本で叶えられるとしたら、なんとすばらしいことでしょう。

 先日、超久しぶりに短い距離を打つためのユーティリティー(UT)を新品で買いました。価格は1万円ちょっと。これが、実にしっくりときまして、次の出番はいつかと、ラウンドを心待ちにしています。

 というわけで今回は、新しいギアやグッズを購入し、それを理由にしてゴルフに燃え出す、古典的な"やる気引き出し術"を考察してみたいと思います。まずは、情報収集の話から始めましょうか。

(1)ギア購入のきっかけ
 我々アマチュアゴルファーのニューギア購入のきっかけは、ゴルフ雑誌やテレビの宣伝などを見て、と思われるでしょうが、そこはあくまでも補助的な効果で、本当はもっと違うところにあります。

 一番のきっかけは、友だちがニューギアを使っていた、からです。

 友人が新しいクラブを自慢げに使い出した。そこで、彼の実力を知っているこちらが、腕前以上の効果を目の当たりにする。となれば、こちらとしても、ギア購入への拡大路線を進めたくなる。

 そんな感じで、アマチュアゴルファーのギア購入は、友人が買ったのを見て「これは負けられない」と思って、ということがよくあります。

 要は、隣国との軍備増強競争みたいなもの。隣国がイージス艦を購入したら、こっちはヘリ空母を買うぞといった、まさに冷戦状態ですね。



ニューギアを購入した友だちの腕前が上がったからといって、それに対抗しすぎるのはどうかと思いますが...。illustration by Hattori Motonobu

 ところで、仲間内でこんなケースがありました。

 知り合いのAさんが、ギアではなく、ボストンバッグを購入。ブランドもので、それなりの値段がするバッグです。すると、それを見たBさんが、まったく同じブランドの型で、同じ色のボストンバッグを買いました。

 両名は月に1回、他の仲間を含めて一緒にラウンドする仲です。そしてその際、Bさんが仲間たちに向かって「いいでしょ。Aさんと同じバッグを買ってしまいました」と自慢げに見せたのです。

 困惑するのは、Aさん。「別に買っていけないわけじゃないけど、よく会う仲だと、いろいろと誤解が生じるでしょ」と困り顔を浮かべます。

「安くするために、一括で購入したのか」とか、「男同士でペアルックって、何かあるんじゃないか」と、詮索されかねませんからね。

 ゴルフ関係では、真似していいのはギアやボール、シューズ、手袋まででしょう。バッグやウエア、そしてマーカーまで一緒だと、よからぬ想像をされるかもしれませんからね。ご注意を。

(2)ニューギアはどこで試せばいいか
 気になるクラブを新たに見つけると、それが自分に合っているかどうか、すごく気になります。量販店でも試打できますが、鳥かごでの試打で、コンピューターによってデータを計測するので、リアルな球筋は見えません。

 そこで、試打をするなら、実際に打球の行方がわかる大型練習場に行くことをお勧めします。近所にそういう場所がない場合は、パソコンやスマホなどで探して、休みの日に行くか、あるいはゴルフ帰りに立ち寄るテはあります。

 大型練習場では、試打クラブが豊富にそろっていますし、メーカーもこぞって試打会を開催しています。言うまでもなく、試打クラブの在庫の有無、試打会のスケジュールなどは、あらかじめホームページなどでチェックして訪ねるようにしましょう。

 あと、大手ゴルフチェーンが運営しているコースは、ショップが充実していて、試打クラブも数多くあります。コースのショップは、人気商品が試打できるケースがほとんど。そのままラウンドに持ち出して、思う存分、試打してみてください。

(3)試打しやすいのは有名ブランド
 結局のところ、世に一番出回っているのは、国内外の有名ブランドのクラブです。その分、試打するのも容易ですから、そういうクラブを愛用するのがよろしいんじゃないでしょうか。

 私のようにニッチなブランド好きだと、クラブを探すのにひと苦労。ゆえに、試打することもなかなかできません。仕事のラウンドなどで、たまたま関係者が持っていたから試打ができたりするわけで、一般的にはニッチなクラブ嗜好に走ると、かなりのハンデを背負うことになります。

(4)プロ愛用クラブに対する所望の変化
 最近のPGAツアー選手の使用クラブは、ほとんど外国ブランドで、日本メーカーのクラブは少なくなりました。シャフトはまだ、日本メーカーもがんばっていますが......。

 さて、アマチュアのギアは当然、ツアー選手仕様とは別の扱いになります。これは、自動車レースと一緒。なんぼF1グランプリで優勝した車とはいえ、そのスペックで一般道路は走行できませんし、素人には簡単に扱えません。

 車も、クラブも、プロと仕様が違うので、アマチュアへの影響は限定的だと思います。

 ですから、PGAツアープロが使っているから、といった謳い文句でクラブを売ることには限界を感じます。ブライソン・デシャンボー選手がいくら活躍しても、彼の個性的なクラブを使おうとするアマチュアは、稀だということです。

 日本のクラブ販売における戦略が変わったのは、宮里藍、横峯さくら両選手が宣伝するようになってから。それまでは"AON(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)"全盛で、力強いパワーゴルフが主流でした。

 それが、等身大の女子プロがさわやかにプレーして、ビッグドライブを見せる――それによって、「オレよりヘッドスピードがないのに、あれだけ飛ぶんだ!?」「じゃあ、買ってみようかな」となったわけです。

 今は、若手の美人女子プロ&アマがたくさんいます。しかも、みんなレベルが高い。お気に入りの選手がいれば、アマチュアの我々としては「彼女たちが使うなら、我々も」という発想でもいいんじゃないですか。

 有名メーカーのクラブは、誰が打っても当たるように設計されています。あとは、見栄を張らずに、Sシャフトをやめて、SRかRシャフトにしましょうか。自らに合ったクラブ選びには、そういう謙虚さも大事だと思いますよ。

(5)いっぱしのクラブアナリストへ
 新しいクラブ1本を買って、そこそこのスコアを出せば、同伴メンバーが必ず聞いてきます。「それって、いいのか?」とね。

 ニューギアに対して常にアンテナを張っていれば、そこでいろいろと自慢話ができます。「飛距離は大したことはないけど、曲がらないよ。スコアメイクにはすごく役立つ」とかね。いっぱしのクラブアナリスト気取りで、友だちに対して優位に立てることでしょう。

 その結果、クラブを真似されても、そんなに悪い気はしません。むしろ、仲間意識が増します。それに、友だちが自らの真似をして買ったクラブを使っている限り、あなたは永遠に"紹介者"という役を維持できます。しばらくは、ゴルフ仲間の中心的な立ち位置にいることができます。

 しかも、いいスコアがバンバン出る。となれば、「じゃあ、次は何を狙ってみようか」なんて、あれこれニューギア導入を再び考える。それもまた、楽しいものです。

 とにかく、クラブ選びは失敗しないように、メジャーブランドから選びましょう。そして、必ず自分で打って確かめましょう。決して宣伝に煽られないように、ですね。

 1~2万円程度のギア購入で、10回ぐらいのラウンドが楽しくなります。つまり、10万円以上の消費が有意義になるのです。まさに"海老で鯛を釣る"作戦じゃないですか。

 ということで、たまには新しいクラブを買いましょうかね。