東日本選手権SPを滑る鍵山優真 今季のフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズはコロナ禍によって、各大会の出場選手を開催国の選手か、外国籍の場合は開催国で練習している選手のみに限定している。そのため、11月27〜29日に大阪の東和薬品…



東日本選手権SPを滑る鍵山優真

 今季のフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズはコロナ禍によって、各大会の出場選手を開催国の選手か、外国籍の場合は開催国で練習している選手のみに限定している。そのため、11月27〜29日に大阪の東和薬品RACTABドームで開催されるNHK杯の男子シングルは日本選手のみの出場となるが、GPシリーズ欠場を発表した羽生結弦とスイスを拠点にしている宇野昌磨は出場しない。トップふたりが不在の中で注目されるのは、ともに今季からシニアに昇格した鍵山優真と佐藤駿の対決だ。

 互いにライバル視しながら大の仲良しでもあるふたり。ジュニアだった昨季は、鍵山が全日本ジュニア選手権を制すれば、ジュニアGPファイナルでは佐藤がフリースケーティングで4回転ルッツと4回転トーループを鮮やかに決めて優勝。すると次は鍵山が全日本選手権3位、四大陸選手権3位と、シニアの大会で結果を出すなど、激しい進化合戦を繰り広げている。

 今季、ふたりはプログラムに組み込む4回転ジャンプを増やし、ショートプログラム(SP)で2本の4回転を入れる構成に挑戦中だ。佐藤は昨季のフリーでも跳んでいた4回転ルッツと4回転トーループを、鍵山は4回転トーループと、今季から入れた4回転サルコウを組み込んでいる。

 フリーはさらに意欲的な構成になっている。佐藤はサルコウを加え、ルッツ、トーループ2本の3種類の4回転4本。鍵山は新たに入れたサルコウを2回跳び、トーループを入れる4回転3本としている。

 今季、先に結果を出したのは鍵山だった。10月の関東選手権のSPは、ローリー・ニコル氏の振り付けで序盤からテンポが速い難しいプログラムをノーミスで滑って98.46点を獲得。フリーも4回転3本をきれいに決めると、ミスは最後のトリプルアクセルだけに抑え、合計287.21点の高得点で優勝した。



東日本選手権フリー演技の佐藤駿

 だが、次の東日本選手権では崩れた。SPは最初の4回転サルコウの着氷後にタイミングをうまく取れずに、3回転トーループが2回転になった。その後、慎重になり過ぎて4回転トーループが2回転に、さらに最後のトリプルアクセルもミスし、流れに乗り損ねる怖さを経験した。フリーは関東選手権後にニコル氏振り付けの『アバター』に曲を変えたばかりで、滑り込みが足りず、後半のジャンプがすべて崩れてしまい2位で終えた。

 その東日本で優勝したのが佐藤であり、関東選手権で大崩れをして鍵山に88.79点差をつけられる惨敗を喫した雪辱を果たした。佐藤は今季、4回転で勝負するとともに、SP、フリーともにブノワ・リショー氏振り付けのプログラムを演じ、難しいつなぎなども丁寧にこなして表現力の向上を目指している。東日本のSPは4回転ルッツがアンダーローテーションになって転倒したが、それ以外はきっちり決めて81.84点を獲得。フリーは4回転3本でミスし2回転倒したが、4本目の4回転トーループ+2回転トーループから立て直し、合計229.18点とした。

 ともに高難度のジャンプにはまだ不安が残るが、その後の練習で滑り込み、プログラムの完成度を高めているはず。互いに相手より一歩でも早くレベルを上げようとしている彼らの今季3回目の対決が楽しみだ。

 しかし、先輩たちが手をこまねいたまま見ているわけはない。10代の後輩ふたりに対抗する筆頭は、2018年の世界選手権5位の実績を持つ友野一希だろう。近畿選手権はSP86.47点とまずまずの出だしだったが、フリーは4回転に苦しみ、優勝はしたものの215.61点にとどまった。西日本選手権も4回転サルコウが不発で212.92点の2位。まだ調子は上がってきていないが、きっかけをつかめば一気に復調するはずだ。

 その西日本を221.22点で制したのが山本草太。ケガによる長いブランクから昨季戻ってきた彼は、今季はSPで4回転2本とトリプルアクセル、フリーではトーループ2本とサルコウ1本の4回転3本を入れる構成で臨んでいる。「上しか見ていない。追いつけるように努力する」という気持ちが、どこまで4回転ジャンプの質を上げているか楽しみだ。

 ほかに、ケガで9月のドリームオンアイスを欠場した田中刑事も、中四国九州選手権から復帰して西日本選手権では3位と、徐々にコンディションが上向きになりつつある。

 日本男子の層を厚くするためにも、彼ら3人が伸長著しい鍵山と佐藤の存在を刺激にして、どんな演技を見せてくれるかにも注目したい。