11月に入り3週連続で開催された卓球の国際大会。その第3弾「ITTFファイナルズ」<11月19~22日/中国鄭州>が幕を閉じ、約1カ月に及ぶ中国遠征を終えた日本人選手たちが帰国の途についた。

 男女の世界ランク上位各16人がしのぎを削る超ハイレベルな大会を地元中国勢が席巻。男子はリオ五輪金メダルの馬龍が大会史上最多となる6回目の優勝を果たし金メダル。女子も世界ランク1位の陳夢が大会史上初の4連覇を達成した。陳夢は2週前の女子ワールドカップでも金メダルに輝いている。

 日本勢は女子ワールドカップ銅メダルの伊藤美誠(スターツ・世界ランク2位)がベスト4。前週に行われた男子ワールドカップ銅メダルの張本智和(木下グループ・同4位)は同大会3位決定戦で勝ったチャンウジン(韓国・同18位)と初戦で再び対戦し、マッチポイントを握りながら逆転負けという結果に終わった。

伊藤美誠 PHOTO:@ITTFWorld


同世代のライバルとの差に「あぁ、やられたな」

 仲間たちが次々に敗れていく中、ひとり気を吐いた伊藤は準々決勝でこれまで1勝3敗と負け越している王芸迪(中国)をフルゲームの末に破り勝利を奪った。

 準々決勝から一転、同世代の王曼昱(中国・同5位)と対戦した準決勝は伊藤のストレート負けという手痛い結果となった。これを受けて伊藤は地元中国メディアに対し、「(ゲームカウント)0-4で点数もあまり取れずに負けてしまって、王曼昱選手との差を感じた。『あぁ、やられたな』という感じで(試合中は)難しい表情も出た」と完敗を認めた。

伊藤美誠に勝利して喜びを爆発させる王曼イク PHOTO:@ITTFWorld


 王曼昱は伊藤のひとつ年上の21歳。167cmの長身から放つ両ハンドドライブに威力があり、チキータなどバックハンドの技術も高い。体格もプレースタイルも対局にある2人の対戦成績は8勝2敗で王が大きくリードしているが、直近の対戦となった2019年10月ワールドツアー・スウェーデン女子シングルス準々決勝では伊藤がゲームカウント4-1で勝っており、今回も勝機はあると思われた。

だが試合が始まってみると、ラリー力で勝る王の地力が伊藤を上回った。伊藤は約1年ぶりとなった王との対戦を振り返ってこう語る。

「最近は負けたときも得るものがあって(その後の)修正がしやすい。以前は負けて得たものが見当たらないことがすごくあったんです。もちろん優勝以外はみんな負けるんですけど、"勝って得るもの""負けて得るもの"両方が多くなったと思います」

 女子ワールドカップでの反省を生かし、わずか2週間の短期間でプレーを改善してきた伊藤。今回の出来については「50点くらいかな」と控え目だが、「30点でも40点でも勝てる実力を持ちたい」と、昨年から意識している苦しい試合でも「しのいで勝つ」ことの重要性を強調した。


日本勢はWTTマカオを回避し帰国

 卓球の国際大会はこの後、2021年に本格始動するWTTのプロモーションイベント「WTTマカオ」が25日に開幕し、29日までの5日間で開催される。そのためITTFファイナルズ金メダルの馬龍や陳夢ら中国勢、そして一部の海外選手が香港へ移動しているが、今回は世界ランクポイントがつかないために伊藤をはじめ日本人選手は出場しない。

日本人選手たちの次なる舞台は卓球日本一を決める「天皇杯・皇后杯2021年全日本卓球選手権大会」<1月11~17日>、そして「世界卓球2020韓国(団体戦)」<3月22~29日/釜山>と続く予定だ。


(文=高樹ミナ)


■ITTFファイナルズ 伊藤美誠 試合結果
<準決勝>
伊藤美誠 0-4 王曼昱(中国)

3-11/4-11/9-11/6-11

<準々決勝>
伊藤美誠 4-3 王芸迪(中国)
6-11/11-7/11-13/11-4/11-7/7-11/11-5

<1回戦>
伊藤美誠 4-1 杜凱栞(香港)
13-11/6-11/11-6/11-5/11-6