大王製紙エリエールレディス(愛媛・エリエールGC松山)の最終日は、前週のチャンピオンであり、3日目にスコアを7つ伸ばした通算13アンダーの古江彩佳と、古江を2打差で追う笹生優花のふたりによるマッチレースになる――そう見立てるのは自然だった…

 大王製紙エリエールレディス(愛媛・エリエールGC松山)の最終日は、前週のチャンピオンであり、3日目にスコアを7つ伸ばした通算13アンダーの古江彩佳と、古江を2打差で追う笹生優花のふたりによるマッチレースになる――そう見立てるのは自然だった。ともに今季2勝を挙げており、コロナ禍に見舞われた2020年に輝きを放ち続けてきたからだ。

 だが、勝負は思わぬ方向に進む。笹生が出だしの1番でボギーを叩いて一歩後退すると、古江は2番でバーディーを奪うなど、前半だけで2打伸ばして独走体制に。後半に入ってからは、ピンチというピンチもなく、他の追随を許さない。終わって見れば、3位タイに終わった笹生に6打差、最終日に猛チャージを決めた2位のイ・ミニョンにも3打差をつけて、今季3勝目を飾った。

「今まで3日間大会でしか勝ったことがなかったので、4日間大会に対してプレッシャーはあったんですけど、これを機に4日間大会もがんばっていけるかな(笑)」



大王製紙エリエールレディスで今季3勝目を挙げた古江彩佳

 今季の2勝はいずれもプレーオフ決着だったが、3勝目は2日目を終えた時点でだけ首位の座を譲り、ほぼ完全優勝の内容だった。それだけに、より強さが際立つというものだ。

 好調を持続する要因は、何よりボギーの少なさである。前週は3日間でわずかひとつ。今大会でも2日目にダブルボギーがひとつ、最終日にふたつのボギーを叩いただけ。チャンスにつけられない時は耐えるゴルフに徹し、伸ばせる日には徹底的に伸ばしていく。

「ボギーが少ないところは強み。ショットがグリーンオンすれば、パーセーブできやすい状態ですし、(グリーンを外しても)パーを拾えるようになった。オフにグリーン周りの練習を増やしたことが、その要因かと思います。ボギーを叩かなければ、安定性にもつながります」

 バーディーを奪うことよりも、まずはボギーを打たないことを強く意識する姿勢は、父である芳浩さんの教えだという。

「高校2、3年生ぐらいから、コーチであるお父さんに、『バーディーをとっても、そのあとにボギーを打ったら意味がないだろ』というような話をよくされていました。ボギーを打てば、チャラになるのは痛いぞ、と」

 簡単には崩れない古江のゴルフを、一緒に回って敗れた笹生もこう評し、自身に喝を入れた。

「すごく安定していてブレないし、パターも上手。悔しさは......勝つのは100人いてひとりですから。(優勝を逃して)悲しいとか、もったいないとか思わず、(自分自身に)『もっと練習しろ!』と思います」

 来年末まで続く長いシーズンで、ただひとり最多となる3勝目を挙げ、古江は一躍、期待の新星からツアーを牽引する立場となった。最終日は11月22日で、「いい夫婦の日」。20歳の古江にも結婚観の質問が飛んだ。

 苦笑しながら、古江はこう話した。

「結婚はしたい。20代で、したいです。ひとつ目の目標はママさんになって、(ツアーに)戻ってくることなので、それを踏まえると、30代手前で出産して帰ってくるのが理想ですね」

 その前に、今季の賞金女王や来年の東京五輪も、目指したくなる視界に入ってくるのではないか。

「考えなくもないですけど、試合を一つひとつがんばりたい」

『黄金世代』や『新世紀世代』とともに、古江と同い年である西村優菜や安田祐香、吉田優利ら2000年度生まれの『ミレニアム世代』が今季の日本女子ツアーを活性化してきたが、むしろ『古江世代』と呼ぶほうが的を射ているかもしれない。