イ・ボミをはじめとする韓国勢が優勝戦線に絡み、大混戦となった伊藤園レディス(千葉・グレートアイランド倶楽部)の最終日――。18ホールの戦いを終え、通算12アンダーのトップに並んだのは、3日間(54ホール)ノーボギーのプレーを見せた酒井美紀…

 イ・ボミをはじめとする韓国勢が優勝戦線に絡み、大混戦となった伊藤園レディス(千葉・グレートアイランド倶楽部)の最終日――。18ホールの戦いを終え、通算12アンダーのトップに並んだのは、3日間(54ホール)ノーボギーのプレーを見せた酒井美紀と、9月のデサントレディース東海クラシックでプロ初優勝を遂げた古江彩佳のふたりだった。

 3ホール目までもつれたプレーオフの末、優勝したのは躍進著しい『ミレニアム世代』の古江だ。

「こんなに早く今季2勝目を挙げることができるとは思っていませんでした。9月に優勝して、それからの時間が過ぎるのも早かったんですけど、2勝目が今とは(笑)」



伊藤園レディスで今季2勝目を挙げた古江彩佳

 前日のラウンド後、トップタイに立っていた古江は日が暮れるまでアプローチの練習に取り組んだ。58度のウエッジを手にして、8ヤード先のカゴを目がけた打ち込みを繰り返した。アプローチの強化は今季の課題として、緊急事態宣言下の自粛期間中から、その練習に時間を割いてきたという。

「"20球入るまで帰れま10"というのをやっていて。半分は練習、半分は遊びの感覚で。10球はフェースを開いて狙い、残りの10球は通常のロフト角で。アマチュア時代からやっていましたね」

 出だしの1番で今大会初めてのボギーを叩いて躓き、前半途中から猛チャージを見せる酒井を追う展開となったが、このアプローチ練習が古江を救った。

 7番パー3では、強烈な下りのラインに対して、絶妙なアプローチでピタリと寄せてパーセーブ。その後、14番、16番でバーディーを奪って酒井をとらえると、直後の17番パー3では再びグリーンを外すも、およそ13ヤードのアプローチを1.5mにつけてピンチを凌いだ。

「追いかける立場なのはわかっていて、前の組にトップの選手がいるのもわかっていた。攻めるしかないなと思っていたんですけど、ショットが思うようにいかず、パターもぜんぜん入らなかった。リズムがつかめていませんでした。自分ではアプローチが得意だとは思っていないんですけど、(この日の結果で)徐々によくなってきているのかなとは思っています」

 勝負を決めたのは、18番で繰り返し行なわれるプレーオフの3ホール目だ。古江の第2打は残り161ヤード。7番アイアンで放った池越えのショットは、カップへと一直線に向かっていった。さらに着弾後、ラインに乗って転がっていくボールは、カップを覗いたあと、ピンに弾かれて30cm先に止まった。そのスーパーショットに、会場スタッフの歓声が響き渡った。

「(正規の18番と同じカップの位置で行なう)プレーオフ1ホール目と2ホール目は、攻めるに攻められない状況だった。3回目は、カップが真ん中に切られて、距離がぴったりのクラブを持てた。

 打った感じはすごくよくて、縦の距離感はわからなかったですけど、ラインに乗っているなというのはわかった。キャディーさんと、『(カップを)舐めた? 舐めてない?』と会話しながらグリーンに向かいました」

 タップインしてバーディーを奪った古江は、このホールをパーとした酒井に競り勝った。

 思い返せば、プロ初優勝もプレーオフ決着だった。勝負どころでの強さがとにかく光る。

「プレーオフだからといって、特別に気持ちを切り換えるとか、スイッチを入れるとかはない。ただ、プレーオフは、嫌いではないですね。楽しいです。アマチュア時代も、試合でプレーオフにもつれることが多くて、どちらかというと勝つことのほうが多かった。だから嫌いじゃないのかも」

 アマチュア時代を含めれば、通算3勝目となる勝利を遂げた。

「自分を褒めたい。満足しています。シーズンを通して、順位も安定しているし、優勝もできている。いいな、と思います」

 今季2勝を挙げているのは、他に古江の1歳下である笹生優花と申ジエ。気の早い話ではあるものの、来年末まで続く長いシーズンの賞金女王も視野に入ってくる。

「いつか獲りたいという目標ではありますけど、一試合、一試合、がんばることだけを今は考えています」

 古江にとって、プロゴルファーとしての夢が、現実的な目標になった2勝目ではなかったか。