新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、レースの中止や延期が続き、JBCFシリーズの最高峰であるJプロツアーカテゴリーのレースとしては今年初となる『東日本ロードクラシック群馬大会』。レギュラーな3日間の連続開催という形式が取られ、7月25日に…

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、レースの中止や延期が続き、JBCFシリーズの最高峰であるJプロツアーカテゴリーのレースとしては今年初となる『東日本ロードクラシック群馬大会』。レギュラーな3日間の連続開催という形式が取られ、7月25日に開催された最終日Day-3にはサーキットを22周する132kmのレースが設定された。前日のDay2の2倍以上の距離を走ることになり、3日間の中で最長のレースとなる。

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久しぶりのレースであり、さらに3日間の連戦。コロナ禍の外出自粛により練習ができない、レースがないので実戦の機会が持てない、チームでの練習機会も持てない、先が見えずモチベーションが保てない……などなど。例年のような調整ができていない選手も多く、連戦の疲労に苦しむ選手も少なくなかった。様々な思いの中、最終日のレースが始まった。無観客試合であり、歓声のない静かなスタートだ。



最終日のレースが始まった

開始直後からアタックが続くが、すぐに吸収されてしまい、逃げが決まらない。中間スプリントポイントの1回目(3周回完了時)は横塚浩平(TeamUKYO)が、2回目(6周目完了時)はレオネル・アレクサンダー・キンテロ・アートアーガ(マトリックスパワータグ)が獲得したが、逃げ集団につながる動きにはならなかった。



ようやく7周回目に11名の先頭集団が形成される

レースが動いたのは7周回目。心臓破りの坂で11名が抜け出す。翌周にはメイン集団との差が50秒まで開き、逃げ集団も安定した。

ここには前日、完全なレースで1-2-3フィニッシュを決めた宇都宮ブリッツェンから増田成幸、鈴木譲、西村大輝の3名が送り込まれていた。他にもJプロツアー総合優勝の経験も持つホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、前日のレースでも入賞した大前翔(愛三工業レーシングチーム)や小石祐馬、武山晃輔(以上TeamUKYO)らも。そして、石原悠希(Hincapie LEOMO Bellmare Racing Team)、渡邊翔太郎(那須ブラーゼン)、西村基(レバンテフジ静岡)、小出樹(JCF強化指定選抜チーム)らが名を連ねる。参戦している多くの有力チームのメンバーが含まれており、レースはここで一気に落ち着いた。



新設チーム、さいたまディレーブがメイン集団を牽く



長く伸びたメイン集団

ここにメンバーを送り込めなかったチームの中から新設のさいたまディレーブらが中心となってメイン集団をコントロールするが、タイム差は広がっていき、13周回目に差は4分20秒まで開いた。U23リーダーの織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)と佐野千尋(イナーメ信濃山形)の2人が追走に出たが、先頭集団には追いつかない。



一時は4分20秒まで開く差をつけた先頭集団
順調なペースで周回を重ねていく

レースが終盤に差し掛かると、マトリックスパワータグや愛三工業レーシングチームが中心になり、集団の牽引を始め、ペースアップを図り始めた。さらにメンバーを送り込めなかったキナンサイクリングチームのトマ・ルバが驚異の牽引力を見せ、タイム差は20秒にまで縮まった。



強烈なトマ・ルバの牽引で、差は一時20秒まで縮まった

しかし、最後まで詰め切ることができず、集団の逃げ切りがほぼ確実に。渡邊翔太郎が脱落し、10名となった先頭集団に勝負は絞り込まれた。



最終周回
雨が強くなる中、増田はペースアップを図る
高速で走る選手たちにとっては、ほぼ視界がなくなるほどの暗さだったという

最終周回に小石がアタックするが、決定打にはならない。勝利を意識し始めたメンバーの牽制が生まれ始める。先頭に立ち、集団をハイペースで牽引してきた増田はここで自らアタックを仕掛け、飛び出していく。この増田の動きを見逃さず、ホセが食らいつき、8名を置き去りにして先行、一騎討ちの形になった。
ラスト1kmのバックストレートに現れたのは増田とホセの2名。この1対1のスプリントを制したのは、増田だった。雄叫びを上げてゴールへと飛び込んだ。



増田、ホセに続き、大前(愛三工業レーシングチーム)が3位を獲得



U23のリーダージャージ、ネクストリーダージャージは織田が死守

増田は3日間の総合成績でも首位となり、リーダージャージを獲得。前日に続き、宇都宮ブリッツェンがポディウムのてっぺんを飾ることになった。U23リーダーは見事に織田が守り抜いた。



この3 連戦の総合成績でも増田が首位となった
2位は織田
、3位は小野寺(宇都宮ブリッツェン)



久々にJプロツアーのリーダージャージであるルビーレッドジャージを身につけた増田

表彰台で増田は「本当は鈴木選手を勝たせるつもりだった」と、プランを明かした。展開に合わせ、本能的にここでいくしかないと、感じたタイミングに自ら飛び出したのだと言う。最後にホームである宇都宮で開催される次戦への抱負を述べ、インタビューを締めくくった。
増田は東京五輪の個人ロードレースの有力選手候補でありながら、2月のランカウイで不運にも落車に巻き込まれ、腰の圧迫骨折を負い、このレースでのポイント獲得の希望が断たれ、ダメージも負ってしまった。その後、コロナ禍により国内のポイントを獲得できるレースが次々と中止になってしまい、国内チームに籍を置く増田は圧倒的に不利な状況に追い込まれてしまったのだ。自分からは打つ手もないまま、ただ刻々と、時間が過ぎ、五輪出場の可能性が揺らいでいくのを感じ、やるせない思いを胸に抱え、苦しんできたことだろう。だが、その悔しさで潰れてしまうことはなかった。シッカリ調整を重ね、思いをレースにぶつけ、ここで自らと、チームにとっての最高の結果を獲得し、ファンに増田の健在ぶりを示して見せた。

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【結果】Jプロツアー第3戦 東日本ロードクラシックDay-3 132km
1位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン)3時間17分47秒
2位/ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ )+0秒
3位/大前翔(愛三工業レーシングチーム)+7秒
4位/石原悠希(ヒンカピー・リオモ・ベルマーレ・レーシングチーム)
5位/小出樹(JCF強化指定選抜チーム)
6位/小石祐馬(TeamUKYO)

【敢闘賞】
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)

【中間スプリントポイント】
3周回完了時/横塚浩平(TeamUKYO)
6周回完了時/レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ )
9周回完了時 /大前翔(愛三工業レーシングチーム)
12周回完了時 /大前翔(愛三工業レーシングチーム)

【3日間総合順位】
1位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
2位/織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
3位/小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

【Jプロツアーリーダー】
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

【U23リーダー】
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)

画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟 (JBCF)