専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第279回 まだ2つの倶楽部にしか在籍経験がありませんが、メンバーコースの居心地の善し悪しは、実際に体験してみないとわかりません。しかも、経営者や支配人、キャディーマスターが代わり…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第279回

 まだ2つの倶楽部にしか在籍経験がありませんが、メンバーコースの居心地の善し悪しは、実際に体験してみないとわかりません。しかも、経営者や支配人、キャディーマスターが代わり、倶楽部の運営方針が変更することもしばしば。「話と違うじゃん」ってことがよくあります。

 今回は、過去の自らの体験や友だちの話などから、倶楽部の居心地の善し悪しを解明してみたいと思います。

(1)服装
 どこの倶楽部もジャケット着用が一般的になっていますが、ジャケット不必要派としては、「実際は服装チェックをしていない」というコースに行くのが理想です。冬場、ダウンジャケットを着ていっても、一切何も言わないコースとかですね。

 建前だけの服装規定。実に素敵です。

 たまに「お客さま、次回からはジャケット着用してください」と言ってくるコースがあります。その時は、「次から気をつけます」と答えておけばいいのです。

 ところが以前、友人がジャケットを着ないで行ったら、マジで"入場お断り"というコースがありました。じゃあ、ジャンパーなどを着てきた客を帰すのか? 一応、倶楽部側が用意している貸しジャケットがあって、友人はそれを着てチェックインしていました。

 だったら、毎回貸しジャケットで済むじゃん......って、確かにそういう見解もありますね......。

 ジャケット問題は、昔から賛否あって、非常に根深いものがあります。ともあれ、他のスポーツと比較すると、その意義、重要性の希薄さがよくわかります。

 例えば、プロ野球やJリーグ。今や移動日では、ほとんどのチームの選手がスーツを着て、新幹線や飛行機に乗って移動します。常にファンなどから見られている立場にありますからね。ジャージで移動ってわけにはいかないのでしょうし、プロとして、きちんとするのは仕方がないことかもしれません。

 けど、我々アマチュアゴルファーは周囲から見られる立場ではありません。にもかかわらず、その移動において、ジャケットを着用するっていうのは、どうなんでしょうか。

 車を運転していく場合、ジャケットの背中部分が皺になってしまうでしょ。車に乗った段階で、すでに邪魔者扱いです。だから、脱いで運転する人もいます。

 しかも、メンバーコースの平日は、競技もなく、パーティーもありません。それでも、フロントでチェックインする時にだけ、ジャケット着用を強いられるのです。あとは、ロッカーに仕舞われてしまうのに......。

 自動チェックイン機を使ったら、フロントにすら行きませんからね。機械のためにジャケットを着るのか!?って思っちゃいますよ。



ジャケット着用において、ここまで厳しくされるのはどうかと思ってしまいますが...。illustration by Hattori Motonobu

 ただ一方で、全員がジャケットを着ていなきゃ嫌だ、という"制服フェチ"の方もいたりします。そういう方は、会員権価格が500万円以上する名門コースに入会されるのがいいでしょう。ジャケット義務の"圧迫プレー"をたっぷりと堪能できますから。

(2)融通が効くコース
 例えば、コースに朝早く着いて、「スタート前だけど、先に出してよ」とお願いしたら、7時半くらいにササッとラウンドさせてくれるとか。さらに、ハーフを上がってきたところで、「スルーで回りたいんだけど」と頼んだら、「あそこの2サムのあとならなんとか」と言ってくれるキャディーマスターがいたら最高です。

 こちらのわがままをどれだけ聞いてくれるのか? それこそ、メンバーの醍醐味ですからね。

 以前メンバーだった頃、フロントに知り合いがいて、雑誌の取材だと言うと、「メンテ中の9ホールを開放したので、ご自由に」と言ってくれ、ほぼ打ち放題でやらせてもらってすごく助かりました。

 しばらくして、その担当者が部署移動になると、いけすかない野郎がキャディーマスターになりまして......。「取材でコースを貸してください」と頼むと、「他のお客さまの迷惑にならないように、最終組のあとで手短にお願いします」と杓子定規の対応ばかり。

 それまでがよかった分、「何のために、朝早く来ていると思ってんだよ」とか、「俺も同伴者も正式なメンバーで、お客さんなんだけど、他に誰に気を遣えっていうの?」って、心の中で毒づいたりもしましたね。

 まあ、いつも言っていますが、倶楽部は「いいこと8割、悪いこと2割」の法則がありますからね。

(3)有名人はツラいよ
 ゴルフとキャバクラにおいては、ひとりで行く派の私は、タイミングよく倶楽部デビューを果たせました。とにかく下手に出ていることで、みんなが愛想よくしてくれたので、とても助かりました。

 けど、全国的に有名な方だと、思わぬところでいろいろな弊害が出たりします。

 とあるお笑い系のゴルフ好きが、名門コースのメンバーになって、ひとりでラウンドをしに行ったとか。そうしたら、コースのスタッフが一緒に回ってくれることになり、終始笑顔でラウンドを終えたそうです。

 ところがそのあと、そのお笑い系の人がお腹を冷やしてトイレに入ると、先ほど一緒にラウンドしたスタッフも、誰かと一緒にトイレに入ってきたのです。そして、そのスタッフが洗面所で手を洗いながら、こう言ったそうです。

「○○さぁ、友だちいないのかね? ひとりで来やがってさ。仕方がないから、オレが相手してやったよ。ところがさ、ぜんぜん下手でさ、参ったよ」

 そんな会話をされて、笑い系の人はしばらくトイレから出られなかったとか。以来、そのコースには二度とひとりでは行かなかったそうです。

 また、元スポーツ選手の話を聞いたことがあります。その人は、古参メンバーからマナーについての注意を受けて、グリーン上でぶち切れて、そこでラウンドも、倶楽部もやめてしまったんだとか。

 名門コースって、有名人だからといって、特別扱いはしませんからね。

(4)予約
 居心地のよさで一番大事なのは、予約です。

 平日なら、いつでも1組は取れること。休日なら、ひとりで行って、予約なしでもラウンドできること。また、競技の申し込みがすぐに埋まらないこと。こうしたことが大事です。

 1000万円も払って買った会員権なのに、いつも混んでいる。そういうことがあったりします。

 じゃあ、20万円ぐらいの大衆コースはもっとひどいのか? というと、そういうわけでもありません。

 知り合いが大衆コースのメンバーになっていて、毎月の月例競技にはきっちり出ているとのこと。メンバーの数は多いけど、細かくクラス別に分けられており、毎週エントリーできない、ということはないそうです。

 なるほど。それこそ、倶楽部の実情は入ってみないとわからない、ということですね。

(5)無難な倶楽部
 バブルの頃、会員権価格が3000万円した名門で、今はたったの200万円という古い倶楽部が、わりと無難と言えば、無難です。

 そういった、かつて自称"名門風"を吹かせたコースは、安いプライドもあったりしますが、当時からメンバーの世代も代わっていて、多くは息子世代が今のメンバー。バブル崩壊も、リーマンショックも、新型コロナウイルス危機も経験し、それを乗り越えているので、謙虚さを持ち合わせています。

 つまり、分相応というものを知っているメンバーが多いです。200万円のコースは、所詮200万円のコースなんだと。それが、準名門コースの矜持なのでしょう。

 私も今後メンバー入りするなら、200万円くらいの倶楽部がいいかなぁ。人生、程々がよろしいようで。