未曽有のコロナ禍に揺れ動く2020年、相撲部には期待の新人2人が仲間入りした。栗田裕有(スポ1=新潟・海洋)と土屋和也(スポ1=静岡・飛龍)だ。2人は1年生ながら団体戦メンバー入りを果たしており、今後は一層の飛躍に期待がかかる。今回は、普…

 未曽有のコロナ禍に揺れ動く2020年、相撲部には期待の新人2人が仲間入りした。栗田裕有(スポ1=新潟・海洋)と土屋和也(スポ1=静岡・飛龍)だ。2人は1年生ながら団体戦メンバー入りを果たしており、今後は一層の飛躍に期待がかかる。今回は、普段から仲が良いという田太隆靖(スポ2=東京・足立新田)を含めた3人で、今シーズンの振り返りや相撲との出会い、全国学生選手権(インカレ)に向けた思いを伺った。

※この取材は10月10日に行われたものです。


対談を盛り上げた栗田

「(栗田は)ムードメーカー」(田太)

――まず最初に、他己紹介をお願いします

田太 (栗田は)生意気ですね(笑)。明るくて活発な子だと思います。ムードメーカー的な感じで稽古とかでも声を出していて、空気をつくっている1人だと思います。

栗田 (土屋は)同級生なので頼りにしている部分もあるし、僕よりも細かいところに気がつくので、そういうところは頼りになります。あとは試合とかで僕よりも勝つので、安心して頼れるという感じです。部屋も一緒なので、一緒に過ごす時間も長いです。

土屋 (田太は)よくご飯に連れていってくれる優しい先輩です。それくらいです。

栗田 お前最低だろ(笑)。

――3人でご飯にも行かれるのですか

土屋 田太さんが連れて行ってくれます。

――今シーズンは新型コロナウイルスの影響で異例づくしのシーズンとなりましたが、振り返っていかがですか

田太 僕はけがをしてしまって(試合に)出られていないです。自粛前から腰が痛かったんですけど、自粛後にヘルニアということが分かって、それからは全然できていなくて、試合とかだとサポートをやるという感じです。

――大きなけがは初めてですか

田太 そうですね。こんなに大きなけがは初めてです。

――栗田選手と土屋選手は自粛期間はどのように調整を行いましたか

栗田 自粛前ももちろんそうですけど、自粛が明けてからも段階的に接触をしないで稽古をして、ちょっとずつ接触した稽古をするという感じで、相撲が取れる状況になるまで2ヶ月くらいかかりました。やりたいことがうまくできなかったり、対人の稽古ができなかった期間は、それに代わるものをどうやってやるかを考えていました。あとはウエイトトレーニングを増やしたりだとか、自分の中で考えてやっていたんですけど、うまくいかないところもあって調節や体のケアは難しかったです。

土屋 自分は家でトレーニングを調べたりだとか、自由にできたのが良かったです。僕は実家が好きなので、実家に帰れて良かったというのが一番です(笑)。

――一度ご実家に帰られたのですね

栗田 こっちにいても稽古ができない状態なので、(実家に)帰って各自やってまた集まれるときに集まるという感じで6月の2日くらいに集まりました。

――1年生のお2人は東京に来てすぐにUターンということで戸惑いも大きかったのではないでしょうか

土屋 そうですね。1ヶ月ないくらい、2週間くらいで帰りました。

栗田 でも、2月くらいからコロナが出てきてっていう感じだったので、3月に最初に集合させられたときも大丈夫かなって思っていました。4月くらいになってから稽古もできない、入学式もできないってなって結局帰るってなりました。仕方ないとは思いますけど、例年にはなくここ(稽古場)でやる時間が少ないので、1日1日大事にやっていこうと思いました。

――その中でモチベーションはどのようにして保ちましたか

土屋 自分は結構サボりたがりなので、ちょっとサボっちゃう日とかもあったんですけど、ZOOM会議とかを相撲部で週1回くらいやっていました。

栗田  そうだね。土曜日とかに。

土屋  それで仲間と顔を合わせるので、なんとかモチベーションを保てたかなという感じです。

――ZOOM会議はどなたが主導となって行っていたのですか

田太 聖記さん(長谷川主将、スポ4=愛知・愛工大名電)です。

土屋 聖記さん主導でやって、あとはトレーナーの方が入ってこんなトレーニングをやった方がいいとかアドバイスをもらっていました。

――稽古再開後に何か変化は感じましたか

田太 最初の方はみんな体力が落ちていて、徐々に上げていこうという感じでした。徐々にモチベーションとかも上がっていったんじゃないかなと感じています。

――次に今シーズンの大会結果を振り返っていただきます。まずは、土屋選手、全国学生個人体重別選手権3位おめでとうございます!

土屋 気楽に相撲が取れて、変に緊張せずに自分の相撲が取り切れたのが良かったんじゃないかと思います。プレッシャーも全く感じませんでした。団体戦だけ少し感じてしまったのが後悔しています。

――お2人から見て土屋選手の活躍はいかがですか

栗田 同級生として率直に本当にすごいと思います。(土屋は)試合に強いので。稽古が弱いって言ってはないんですけど。

土屋 でも、俺稽古は栗田に負けるもん。


時折笑顔を見せて答えた土屋

――本番に強いタイプなのでしょうか

栗田 そうですね。試合に本当に強いので、見ていて面白いです。

田太 自分は相撲を取れていないので、頑張らなくちゃなと思いますし、早く治して相撲を取りたいなという気持ちになります。

――田太選手は支える立場ということですが、団体戦でどのようなことを意識していますか

田太 どうにか役に立とうというのは考えていて、何かできることはないかを探して行動することを心掛けています。

――栗田選手は今シーズンを振り返っていかがですか

栗田 東日本の体重別の方は自分の相撲が取れなくて負けてしまったんですけど、東日本(学生選手権)では1日目はB(クラス)だったので、(自分と)同じくらいのレベルの人とやるので、負けられないという気持ちとか、やってやるという気持ちでいて、1回戦は駄目だったんですけど、2回戦からは気持ちを切り替えて1年生らしい激しい相撲が取れたので良かったなと思います。2日目は自分よりも実力のある人だったり、高校の頃から活躍している人ばかりだったので、そういう人とやれる緊張感とかも楽しみだったんですけど、実際にやってみたら全然歯が立たなかったので、すごい刺激になったし、学ばされることが多かったです。

――Aクラスの選手に勝つためにはどのような力が必要だと思いますか

栗田 A(クラス)の人たちは押す圧力とかがあるので、押す力だったり、下半身の力。メンタル面ももちろんなんですけど、全ての面で足りていないところがあるので、全体的に底上げしていけたらなとおもいます。

「数秒にどれだけ命を懸けられるか」(土屋)

――1年生のお2人に伺います。相撲を始めたきっかけを教えてください

栗田 小学校の時に市の相撲大会があって、そこに出てくれってお願いされたのがきっかけです。僕はもともとサッカーをやっていたんですけど、普通の人より身長とか体格が大きかったので、それで誘われて出たら市の大会で優勝しました。そしたら県大会でも優勝しちゃって、これは続けるしかないのかなと。サッカーと相撲を両立している時もあったんですけど、両立は難しかったので、どっちかにしようって思った時に、おじいちゃんが、「サッカーは団体競技で自分が頑張っても勝てるわけではないけど、相撲は団体もあるけど、土俵に勝って戦うのはお前だけだからお前が勝てば勝てるんだよ」と言われて、確かにそうだなと思って相撲一本に絞りました。それが小4くらいです。

土屋 自分もわんぱく相撲の大会に出たら優勝して、相撲クラブの人に声を掛けられて入っちゃいました(笑)。練習はきつかったですけど、体が大きかったので自分がやるのはこれしかないのかなと。

栗田 勝てれば楽しいよね。

――相撲の魅力はどんなところだと思いますか

田太 無差別で、小さな人でも大きな人に勝てるところです。技術とか体とかを全部使って戦うところが面白いなと思います。

栗田 競技時間が10秒かからないくらいで、一瞬で勝負が決まったり、引き分けがなくて絶対に勝負がつくところが闘争心が湧いて好きです。田太さんも言ったように、自分はもともと小さくて100キロもなかったりした時に大きい人に勝った時はすごくうれしかったというのはあります。

土屋 数秒にどれだけ命を懸けられるかというところだと思います。

――なぜ早大を選んだのですか

栗田 高2くらいの時に高校の相撲部でインカレを見に行ったんですけど、たまたま僕らの近くが早稲田のサポーターズクラブの応援席でした。 それで、とんでもない応援が聞こえてきて。升席から身を乗り出して、「いけー!」みたいな。それがきっかけで(早大相撲部を)知って、その応援を聞いた時に選手たちもすごいんだろうなって思いました。高3になる前くらいに高校の監督から「早稲田行かないか?」って言われて、全然頭が良くないんで、いけると思っていなかったんですけど、高3くらいで競技成績とかもちょっとずつ出るようになって、勉強も気にするようになって頑張ったので、細い道ですけど見えてきて、自分が行けるんだったらって思いました。相撲の環境も人数は少ないですけど、自主性を持っていて、やらされるというよりは自分で考えてやる方が自分のためになるんじゃないかということで選びました。本当に入りたかったというのが大きかったです。

土屋 祖父が早稲田大学に入学していたんですけど、金銭的な事情で中退してしまったというのを母親から聞いていていました。高1になった時に早稲田の監督から声を掛けられて練習にきた時に、すごく雰囲気がいいなって思って、祖父のこともあったんで、自分が入れるんだったら入ってみたいなって思いました。


1年生の受け答えに耳を傾ける田太

――後輩が入ってきたことで心境の変化はありましたか

田太 心境の変化を感じる前に解散になってしまったので、実感が湧かないですね。自分も先輩なので頑張らなきゃなと思っていたところで、ヘルニアになってしまったりで踏んだり蹴ったりといったところです。

――後輩が入ってきたことで洗濯などの雑務は減ったのではないでしょうか

田太  そうですね(笑)。

栗田  僕は高校の時もずっとやっていたので、そんなに大変じゃないです。ご飯とかもマネージャーの方が作ってくれてすごく助かっているので。大変でした?

田太  ちゃんこ会とかあると、前日から準備するので、楽しいけど少し大変かな。

――休みの日は何をしていますか

田太 ゲームですね。あと最近は本を読んでいます。行動心理学の本です。友達から面白いから読んでみなって言われて、本読むの苦手なんですけど、いざ読んでみたら結構面白くて寝る前の10分くらい読むようにしています。

栗田 僕は基本的にゴロゴロして、YouTube見たり映画を見たりしています。最近は時間があったので、『ワイルド・スピード』を1から見ていました。

土屋 休みの日は基本ゴロゴロしています。最近は課題があるので、それをやったり。

――学部が同じだと同じ授業も多いのでは

土屋 結構一緒です。

栗田 被らせて、お互いに助け合いという感じです。

――普段、大相撲は見ますか

土屋 僕は見ないですね。

栗田 リアルタイムではあんまり見ないけど、結果だけ見たり気になる人をツイッターで見たりはします。

土屋 それはします。高校横綱の大桑(現颯富士、伊勢ヶ濱部屋)とか。小中の頃にも飛龍高校に練習に行っていたので、庵原さん(現翠富士、伊勢ヶ濱部屋)はお世話になっていてすごくいい人です。

――大相撲の力士をお手本にすることはありますか

栗田 僕は照強関(伊勢ヶ濱部屋)をお手本にしています。

土屋 自分は鶴竜(陸奥部屋)です。

田太 僕は白鵬(宮城野部屋)です。

栗田 絶対見てないじゃん(笑)。

「チームに流れがくる相撲を」(栗田)

――間もなく、インカレですが、どのような点に力を入れて稽古をしていますか

栗田 全体的な底上げはもちろんなんですけど、下半身の強化だったり、押す力です。あとは個人というよりもチームの力を高められるように声掛けとかをやっています。

土屋 1ヶ月しかないので、けがを痛めないように体を動かす感じです。股関節とかが少し痛いので、ガツガツやるというより、痛めないようにという感じです。

――インカレでの目標は何ですか

栗田 団体は、A(クラス)に残り続けて、ベスト8に入れたら文句ないかなと。

土屋 やっぱりそうだよね。8には残りたい。

栗田 8に残るためには、B(クラス)から上がってきた人に勝つというのも大事ですし、A(クラス)にもともといる大学にも勝たないといけないので、そういう面では東日本(学生選手権)より厳しい状況になると思います。あと1ヶ月でやれることは限られていると思うので、その中でどうやって自分たちの力をあげることとチームの力をあげることを並行してできるかが重要になってくると思います。個人でもできるだけ上を目指したいです。

土屋 個人では自分の力がどこまで通用するかを試せればいいかなと。いつも通りの感じでできればいいかなと思います。

――最後にインカレに向けて意気込みをお願いします

田太 僕はいち早く腰を治して、インカレに出られても出られなくてもチームのために少しでも貢献できるように頑張りたいです。

栗田 1年生なのでチームに流れがくる相撲だったり激しい相撲をとって士気を上げてチームに貢献できたらなと思います。

土屋 団体戦では全勝したいなと。団体戦だけ意識してやりたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 望月清香)


1、2年生の快進撃に期待です!

◆田太隆靖(たぶと・りゅうせい)(※写真左)

2000(平12)年11月24日生まれ。178センチ。124キロ。東京・足立新田高出身。スポーツ科学部2年。この日は部員全員が背面に『TEAM SUMO WASEDA UNIV.』と書かれたTシャツを着ていますが、これは橋本侑京前主将(令元スポ卒)のお母さまをはじめとしたサポーターズクラブの方々が作ってくださったそうです。田太選手は「すごくありがたい」と話してくださりました。熱い応援を力に変えて頑張ってほしいですね!

◆栗田裕有(くりた・ゆう)(※写真中央)

2001(平13)年7月3日生まれ。168センチ。110キロ。新潟・海洋高出身。スポーツ科学部1年。栗田選手は相撲の強豪・海洋高の出身。高校時代は規則が厳しく、門限は17時だったといいます。また、スマートフォンも自由に使うことができなかったため、大学入学直後は、初めてゲーム機を買ってもらった小学生のように夢中になっていたと笑顔で教えてくださりました。

◆土屋和也(つちや・かずや)(※写真右)

2001(平13)年10月23日生まれ。183センチ。140キロ。静岡・飛龍高出身。スポーツ科学部1年。大学入学後、華々しい成績を残し続けている土屋選手。インタビューでは落ち着いた語り口が印象的でした。快進撃の秘密は、気負わない姿勢なのかもしれません。これからのますますの活躍が楽しみです!