『山梨のデスパイネ』の愛称で親しまれている黄金ルーキー野村健太(スポ1=山梨学院)。高校通算53本塁打の長打力にかかる期待は大きく、1年生ながらスタメンに抜てきされた。すると開幕戦からマルチ安打を記録し、打率は現在チームトップ。ここまで好…

 『山梨のデスパイネ』の愛称で親しまれている黄金ルーキー野村健太(スポ1=山梨学院)。高校通算53本塁打の長打力にかかる期待は大きく、1年生ながらスタメンに抜てきされた。すると開幕戦からマルチ安打を記録し、打率は現在チームトップ。ここまで好調を維持し続けている野村だが、その要因は何なのか。メンタル面から技術面まで赤裸々に語っていただいた。

※この取材は10月29日に行われたものです。

「チームを引っ張る打撃をしたい」


笑顔で質問に答える野村

――東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)に出られなかったことに焦りや悔しさはありましたか

 夏はけが明けで思っていたより野球ができずベンチ入りすることもできなかったので、競争というスタートラインにも立てていませんでした。その面ではとても悔しい思いをしました。

――夏季オープン戦から出場機会を獲得していきましたが、その時の心情はいかがでしたか

 最初は上級生と野球をすると考えたらなかなか思うようなプレーができないこともありました。しかし、リーグ戦が始まるにつれて「このままじゃだめだな」と感じて「チームのために貢献しないといけないな」という気持ちが芽生えてきました。リーグ戦ではいい緊張感で試合に臨めたと思います。

――オープン戦の結果の総括と、その時の手ごたえを教えてください

 オープン戦では自分の納得がいく内容は少なかったです。しかし、そこが自分の課題なので、マイナスに捉えずに練習しました。また、練習でも徳武コーチ(定祐、昭36商卒=東京・早実)が熱心に教えてくれたので、その期待に応えないといけないと思いながら真剣に野球に取り組みました。

――オープン戦からリーグ戦にかけて改善した点はありますか

 (打撃時の)左ひじの締めです。オープン戦の時は左ひじの締め具合が緩くなってしまっていて、思うように打球が伸びなかったり強いライナー性の当たりが少なかったりしていました。でも、徳武コーチから左ひじの使い方を教えてもらったことで、リーグ戦では逆方向に強いライナー性の当たりが打てているので練習したことが実践できていると思います。

――社会人対抗戦で本塁打を放ちましたが、その打席を振り返ってください

 神宮でプレーする初めての試合だったので緊張しましたが、1年生らしく元気にプレーしようと決めて打席に入りました。2ストライクと追い込まれたので積極的に振りにいきました。

――オープン戦から出場機会を得た要因は何だと考えていますか

 長打が持ち味なので、社会人対抗戦で放った一打がいいアピールになったと思います。

――以前これまでの秋季リーグ戦の戦いぶりに60点を付けられていましたが、その点数にした理由を教えてください

 初球からストライクゾーンのボールを振りにいっていることはいいのですが、まだ甘い球をミスショットすることが多く、振りにいっている割には捉えきれていないと感じていたからです。

――打率チームトップと成績は申し分ないと思いますが、まだ満足されていないですか

 そうですね。打っているヒットがランナーなしの場面が多く、得点圏にランナーがいる時にそのプレッシャーに打ち勝ってヒットを打つというのが、まだ今の自分にはできていません。だから、よりプレッシャーに強くなってチャンスでも打てるようになりたいです。

――「まずは試合に出て、安打、そして本塁打を数多く打つこと」を今季の目標に掲げられていましたが、それはどの程度達成できているとお考えですか

 結果だけを見たらリーグ戦はすべてスタメンで出させていただいてヒットも打てていると思います。しかしヒットも大事ですが、ここぞの一本、ここぞの一発でチームはより勢いづくことができると思うので、自分は1年生ですがその面ではチームを引っ張る打撃をしたいと思います。

――以前先輩によく声がけをしてもらうと仰っていましたが、印象的なエピソードはありますか

 1個上の先輩の蛭間さん(拓哉、スポ2=埼玉・浦和学院)には特に声をかけていただきます。蛭間さんも去年1年生で試合に出ていらしたので、その経験から自分にもアドバイスをしてくれます。明大戦の初戦では自分は初めてのリーグ戦で緊張していると、それを察してくれて「1年生だから元気出してプレーすればいいぞ」「結果を求めすぎるな」と言っていただきました。それで、自分も元気出してプレーをしようと思いました。

――技術的な面での好調の要因があれば教えてください

 意識していることは、外角の球でも逆らわずに逆方向に打つことです。それにより、外の球を引っかけて凡打になるよりかは立教戦のように右中間に長打が打てるようなバッティングができています。練習の時から逆方向に強く打つことを意識しています。

――今季はセンター方向の打球が多いのは、それが要因ですか

 そうですね。センター意識で打つといい打球がいくのでそれは意識しています。

――リーグ戦前の対談で変化球への対応力は大学でも通用する分、ストレートを捉えきれないと仰っていましたが、秋季リーグ戦ではこの点をどのように感じていますか

 変化球には一応対応はできていますが、ストレートに関してはリーグ戦を通して大学生のレベルの高さを痛感しました。タイミングが合ったと思ってもボールの伸びがよく空振りが多くなり三振も多いので、ストレートに打ち負けないようなバッティングをしていけたらいいなと思っています。

――今季はストレートと変化球のどちらをより捉えられているというイメージはありますか

 イメージだとストレートですかね。

――それは練習の成果ですか

 振り遅れたら絶対に打てないので、少々泳いでもいいので振り負けないバッティングをしてきました。そういう部分では成果が出たと思います。

――今季は長打より確実性を重視されていますが、その意識は元々持っていたものですか

 高校時代から意識していることです。ホームランを狙いにいってしまうと力んで大振りになってしまうので、センターから少し左の左中間を打つイメージで打って、その延長線上でホームランという結果になるのが高校からずっと意識していることです。大学でもそれを意識してプレーできています。

――確実性を意識されていますが、リーグ戦では本塁打が出ていない中で、ホームランを打ちたい気持ちはありますか

 ありますね(笑)。でも、いいピッチャーばかりなので簡単に打てるものではないなと思いました。

――1年生という立場だからこそ試合中に心がけていることはありますか

 率先した気配りは心掛けています。自分が試合に出ている時は蛭間さんが本当にいいかけ声をしてくださるので、それに負けないくらいのかけ声を意識しています。また、自分が途中で交代したときは、自分と変わって出た先輩に対してグローブ渡しや水分補給の手伝いなどを率先して行っています。

――今季感じた課題があれば教えてください

 2ストライクに追い込まれてから簡単に終わりすぎていて粘りがないことです。ピッチャーのスタミナを削るという意味でもピッチャーに嫌だなと思わせるという意味でも、もう少しボール球を見極めたり際どい球をファールにしたりするなど、2ストライクからの打撃を意識したいなと思っています。

――そこには出塁率を上げたいという思いもありますか

 そうですね。四球はヒット1本と同じなので、選球眼も改善していかなければいけないと思います。

慶大の○○選手は「ライバルになるので負けられない」


明大1回戦でリーグ戦初安打を放ち、ガッツポーズの野村

――同期の熊田任洋選手(スポ1=愛知・東邦)が春からフル出場を続けていますが、刺激になる部分はありますか

 自分が夏にスタンドで応援している時でも熊田は活躍していたので、自分も負けていられないなと同じ野手として思いました。また、秋にプレーを一緒にしていても、例えば立教戦でのファインプレーなど、うまいなと尊敬する部分も多く、さすがだなと思いました。

――他にも意識されている選手はいますか

 いいなと思うのは、蛭間さんです。すごく尊敬している先輩で、センターから声がけもしてくれて、蛭間さんがいたから自分は今までいい感じでプレーできているので、とても助けてもらっています。

――高校の先輩でもある瀧澤虎太朗副将(スポ4=山梨学院)について、1年間練習や試合などで一緒に過ごしてきてどのような先輩でしたか

 高校では(学年が)被っていなくてあまり人柄など分からず入学しましたが、接してみるとすごく優しかったです。でも、だめなところはしっかりと指摘してくださるメリハリのある方でもあるので、尊敬しています。

――瀧澤選手との印象的なエピソードはありますか

 チャンスで回ってくると「一発頼むぞ」と背中を押してくれます。そうすると、瀧澤さんのためにも他の4年生のためにも自分が活躍して助けたいなという気持ちになります。

――早稲田に入ってよかったと思うことは何ですか

 レベルの高い選手の中で野球ができることです。お互いに高め合えるのでよかったなと思います。また、ピッチャーのレベルが六大学は高く、その環境の中で自分もプレーさせていただいていることは貴重なことだと感じているので、その気持ちを忘れないようにしたいです。

――以前慶大の廣瀬隆太選手に同じ1年生として負けられないと仰っていましたが、他大学の1年生の活躍は意識しますか

 そうですね。熊田は同じ早稲田でプレーしていますが、他大学の同級生が活躍していることも自分としてはうれしいですし、お互いに高め合えています。でも、廣瀬君は慶應で1年生で高い打率も残していて、その面ではライバルになるので負けられないなと思います。

――他大学も含めてライバルを挙げるとしたら

 廣瀬君ですかね。打撃面では負けたくないので意識しています。

――廣瀬選手に打撃の中でもここだけは負けたくないというポイントはありますか

 長打率や打率では負けたくないです。本塁打数を抜くことは、今季はもう厳しいと思うので(笑)。

――先日早川隆久主将(スポ4=千葉・木更津総合)のプロ入りが決まったことについて、後輩としてどう感じましたか

 自分もドラフト会議をテレビで見ていましたが、「4球団から指名されるなんてすごい」としか言いようがないです。自分もプロ野球に行くか迷ったりもしていましたが、早川さんを見ていると自分のレベルはまだ低いからプロに行かなくてよかったと感じるくらい、すごいなと思っています。

――早川選手のプロ入りが決まったことで、ご自身のプロへの意識に変化はありましたか

 元々そこまで意識はしていませんでしたが、リーグ戦での経験や早川さんのプレー姿を見て、こういう選手がプロに行くんだなと思ったので、今のうちに吸収したいと思います。

――初の早慶戦ですが、早慶戦に特別な思いはありますか

 コーチや監督さんには「伝統ある早慶戦でプレーできることに喜びを感じながらプレーしろ」と言われるので、自分は経験したことはないですが、伝統や歴史がある特別な試合なので、その早慶戦に出させていただけることに感謝しながら野球をしたいと思います。

――早慶戦は大舞台ですが、大きな舞台では緊張するタイプですか、それともわくわくするタイプですか

 自分はあんまり緊張しない人です。初戦の明治戦でもみんなから「緊張してないだろ(笑)」と突っ込まれました。でも、体ががちがちで動かないというような緊張はないですが、いい緊張感は持てています。

――早慶戦に向けて意気込みをお願いします

 早慶戦は今の4年生とプレーする最後の試合になるので、今まで助けてもらった分、自分も早慶戦で少しでも活躍ができるように1年生らしく元気にプレーしたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 友野開登)

◆野村健太(のむら・けんた)

2001(平13)年8月27日生まれ。181センチ。97キロ。山梨学院高出身。スポーツ科学部1年。外野手。右投右打。ひときわ大きな体が印象的な野村選手。一見「やんちゃ」なイメージを持たれやすいですが、実は授業の課題にもしっかり取り組む真面目な一面もあるそうです。パワフルな打撃はもちろん、1年生として気配りを欠かさないベンチワークにも注目です!