第5回はスナイプ級クルーの海老塚啓太(政経4=神奈川・鎌倉学園) 、470級スキッパーの佐香将太(スポ4=岩手・宮古)、スナイプ級スキッパー谷川隆治(商4=千葉・稲毛)の4年生3人の対談です。4年間苦楽をともにしてきた3人に同期との仲、ヨ…

 第5回はスナイプ級クルーの海老塚啓太(政経4=神奈川・鎌倉学園) 、470級スキッパーの佐香将太(スポ4=岩手・宮古)、スナイプ級スキッパー谷川隆治(商4=千葉・稲毛)の4年生3人の対談です。4年間苦楽をともにしてきた3人に同期との仲、ヨットとの出会い、全日本インカレへの心境についてお伺いしました。

※この取材は10月25日に行われたものです。

実力を出し切れば勝てるレベルにある(谷川)


この1年を振り返る谷川

――この1年を振り返ってみていかがですか

佐香 新型コロナウイルスの拡大という誰もが経験したことのない状況の中で、どういう風に活動していくかを模索した春でした。ただ、他大学の友達に聞いてみて、他の大学より活動ができなくても何かをしようという意識を持って取り組めていたと思います。また、活動再開してからもみんながバラバラになることなく、一体感を持って活動ができていたことが関東インカレの総合優勝にもつながったと感じています。

海老塚 今年1年は練習できる日数やレースの数も例年より少なくて、あっという間に終わってしまうなという印象です。さっき佐香も言っていたのですが、海上での活動ができない中で何ができるかということを4年生全体で考えてきた年でもありました。また、練習再開後もレースがなかなかできず、延期になることもあったので、自分たちの実力が分からず不安だった時期もあったのですが、この前行われた秋インカレではしっかりと総合優勝できたのはすごく大きいし、全日本インカレ前の弾みになったかなと思います。

谷川 2人と被る部分はあるのですが、色々と制約がある中でもなんとか全日本インカレ優勝という目標に向けて様々なことを試行錯誤できたのはよかったと思います。また、実際に秋インカレもレース数が少ない中で勝ち切れたのはよかったです。

――お三方から見て今年のチームの出来はどうですか

海老塚 前半は冬からこの代が始まって練習してきたのですが、八景島はなかなかライバル校がいないので、自分たちがどれだけ上達しているか分からなかったです。また、春インカレが中止となり、関東個人選手権も延期になった中で実自分たちの力が見えてこなかったので、すごく不安でした。でも、後半は夏合宿からフリートレースが増えていって、自分たちの立ち位置もわかってきたので、自分の印象としては他大に対抗できていると感じました。なので、全日本インカレでも戦えるチームになったんじゃないかなと思います。

谷川 最初はなかなか実力が分からない状況が続きましたが、フリートレースや早慶戦、関東個選や秋インといったところで自分たちの実力がある程度分かってきているので、しっかりと実力を出し切れば勝てるレベルにあると思っています。

佐香 スナイプ級は強い面子がそろっていて、安定していると感じます。また、470級は4年が僕しかいないのですが、3年生が主体でも安心して見ていられるチームになったかなと思います。というのも毎年、ワセダの470はスタートで失敗するという風潮があるのですが、今年はスタッフの方々のサポートや江の島でのオリンピック代表の方々との練習会みたいなものがあって、それに参加させていただきました。そこで苦手であったスタートであったり、他の大学が活動できていない中、格上すぎる相手と練習させてもらったりしたことですごく成長できた年だったと思います。

――470チーム、スナイプチームのそれぞれの雰囲気はいかがですか

海老塚 スナイプはすごく自由なやつが多くて、最初は統率が取れるのかなと不安だったんですけど、結果的には松尾虎太郎主将が周りの士気を高めて統率を取ってくれて、すごくメリハリのあるチームになったという印象ですね。

谷川 僕も同じ意見でまとまるときはまとまって、自由にやるときは自由にできる部分が大きくて、やりやすい環境だと思います。

佐香 470は3年生のレベルが高く、僕が色々と言うよりも自分たちで率先してサポートしてくれるので助かってますし、来年以降もうまくまとめてくれるのではないかともうOB目線で…

谷川 早いな(笑)。

p class=”mt20″>佐香 それは冗談ですけど、チームとして安心して見ていられるなと思います。

――下級生の頃に心掛けていたことは何ですか

海老塚 クルーの立場の中で、僕は命令を聞くだけではなく、何か一つでも学びを得ることと指示を聞きながらも工夫を凝らすことを意識していました。やはり先輩と乗るのは精神的にも体力的にも辛いのですが、そうすることで成長できる実感が湧き、一歩一歩前進しているという感覚はあったので、そこはよかったと思います。

谷川 盛り上げてくれるクルーの方が多い中で、僕は委縮せずに自分の力を最大限に出すということを意識していました。

佐香 ワセダではスキッパーが指示してクルーがそれに従うことが多いのですが、僕は2人で船を走らせようということを意識していて、一方的に指示するのではなく、クルーの意見を聞いて判断することを心掛けていました。

――現状の課題を教えてください

海老塚 チームとしては470もスナイプを順位が安定してきて、日大と戦えるレベルまできているので、絶対に英語は付けてはいけないというのは一つあって、リコールに気を付けることは課題として残っています。個人としては谷川と組んでいてどうしてもスタートが消極的になってしまう課題があって、7割がスタートで決まると言われているほどヨットレースの中では重要な要素なので、しっかり情報収集をして、積極的に、かつリコールはしないようにやっていきたいです。

谷川 チームの課題はあまりないと思っていて、実力を出せば勝てると考えているので、いつも通りにやることが課題かなと思います。自分の課題は先ほど海老塚が言っていたようにスタートが消極的で、特に1レース目、2レースで委縮してしまい前に出れないことがあるので、リコールを気にしつつもしっかりと勇気を持って場を出せるようにしていきたいです。

佐香 僕も谷川と同じ感じで、とりあえずノーケースノートラブルでいれば大丈夫だろうと思っています。また、スタートももちろん課題となるのですが、今さら言っていてもしょうがないので、やるべきことをしっかりやって、リスクを少しでも減らしたスタートができればいいかなと思っています。自分としての課題はレースに出ている選手たちに何が一番欲しい情報なのか、また、成績が悪かった選手をどうやってケアしていくかもサポートメンバーの重要な役割だと思っていきたいので、そこはうまくやっていきたいと思います。

――上級生となり、下級生とはどういったやり取りをされていますか

海老塚 僕が1年生の頃は怖い先輩がたくさんいて、どうしても怖いという印象を受けたので、指導をする中でも日々のあいさつやお礼をすることで部活以外でもコミュニケーションを取ろうということを意識しました。そのおかげで下級生とも仲良くできていますし、いい先輩になれているのかなという風には感じています。

谷川 自分が下の学年の頃には下級生が委縮してしまう雰囲気があったので、それを壊してなんでも意見を言ってもらえるようなフレンドリーな環境をつくっていくことを意識して、陸でも海でもそのような態度で接していました。。

佐香 僕は特に意識してきたことはないのですが、4年生になって思ったのは上級生って難しいなと感じました。というのも何を下級生に振っていいのか、何を自分でしなければならないのかの線引きが難しくて、自分の負担を増やさないようにしつつも下級生に仕事を伝えていく大変さを実感しました。

――4年生の仲はいかがですか

海老塚 あまりよくないです(笑)。

一同 (笑)。

海老塚 というのは冗談です(笑)。ただ、1年生の時は厳しい部の雰囲気で自分たちが掃除や先輩たちのサポートもしなければならなくて、けんかが絶えなかったです。また、現主将の松尾も色々な国際大会に遠征に行っていてなかなか顔を出せない中で、同期同士でコミュニケーションを取ることはあまりなく、事務的な連絡しかしていなかったですね。ですが、4年生になって忙しくなった中でも本音で話せるようになったと思っていて、時にはけんかをすることもあるんですけど、1年生の時よりはすごくいい関係になったかなという印象です。

谷川 今もまだけんかはしますが、それでも本音で言い合えるいい関係を築けていると思います。

佐香 思ったことを言いあえたり、よくないことはよくないと注意してくれる同期です。また、自分が間違った道に選ぼうとする時にもストップをかけてくれるのですが、全日本インカレが終わった後に遊ぼうと言っても先に帰りのチケットを取っているような奴らなので、ちょっと同期の仲はよくないのかなと(笑)。

海老塚 関東で遊びます(笑)。

――活動休止の間は何をされていましたか

海老塚 部としてはオンラインでヨットのルールの勉強であったり、走らせ方などの技術的な話をオンラインミーティングで定期的に行ったりしていて、みんなで同じトレーニングをやっていました。あとはヨットに乗れないもどかしさから自分なりに考えて、追加のトレーニングやランニングをしていました。また、就職活動も大変だったので、トレーニングと両立して行っていて、主務としての活動も並行して日々を過ごしていました。

谷川 全体のトレーニングや技術的なことを話すミーティングに加えて、レースの後に書いたノートを振り返りながら春先から調子が落ちる原因を分析して、次の活動に生かせるようにしていました。

佐香 僕は給付金でApple WatchとAir Podsを買ってトレーニングのモチベーションを高めていました。また、今までは練習ばかりで乗るのにいっぱいいっぱいだったのですが、この休止期間で船のセッティングや細かい構造の理解を深めることができたことで感覚と理論が一致して、自分の中で成長を感じられました。

――この自粛期間で新しく始めたことはありますか

海老塚 僕は給付金を使って自転車を買いました。その時ちょうど膝を壊していたので、ランニングの代わりに自転車を使っていました。なので、有酸素運動のメニューに自転車が加わりました。そこからは今も頻繁にサイクリングはやっています。

谷川 自分は時間ができたので、映画を見ようと思いAmazon Primeに入りました。特に『レオン』という映画が面白かったです。

佐香 僕はさっき言ったようにトレーニングのモチベーションを上げたことに加えて、趣味は読書と映画鑑賞と言える男になりたかったのでそこを頑張っていました。また、トレーニングをしていたので、食べるものにも気を遣いたいと考え、その時は自炊をしていました。

海老塚 今は?

佐香 今は頑張っていた頃のレシピを使って料理を作っています(笑)。

――学業との両立はできていましたか

海老塚 僕はできていたつもりなのですが、1年の時は練習がキツくて10単位ほど落としてしまいました。ただ2年、3年、4年は単位を落とさずにここまできています。ただ、ヨットが好きすぎてゼミには入っていないので、本当に学業との両立ができていたかと言われたら少し疑問かなと思います。でも、自分のやりたい勉強はできていたので、学業の方も楽しかったです。

谷川 自分も学業の方は微妙で1年の時は15単位落としてしまって。

海老塚 競うな競うな(笑)。

谷川 2年生、3年生も6単位ずつ落としてしまいました。前期はフル単でなんとかなったんですけど、僕もヨットが好きすぎてゼミには入ってないです(笑)。

佐香 僕は彼らと対照的に勉強はしっかりしてきたほうで、2年生の夏に函館に旅行に行ったんですけど、そこに単位を一緒に落ちてきて、10単位落としてしまいました(笑)。

一同  (笑)。

佐香 でもそれくらいで、今は前期で単位を取り終えて後期は自分の将来につながる授業を履修していて、とても勉強になっております。また、彼らと違って学業ももちろん大好きなので、ゼミにも所属して、文武両道で頑張っています。

海老塚  スポ科はゼミが必須なので、まあ入りますね(笑)。

ヨット以外の悩み、競技歴


佐香は小学生の頃、太鼓を習っていたという

――ヨット以外の悩みはありますか

谷川 ヨットに熱中しすぎてしまって、学業であったり就職活動であったりがおざなりになってしまったので、11月30日の引退から残りの1年3か月で残りの大学生活を取り戻していきたいと思います。.

佐香 僕はお金が今なくて、ヨットにかけるお金もなんとか出しているので、引退したらバイトを頑張ってお感のある生活を目指したいと思います。

海老塚 船舶免許は持っているのですが、運転免許を持っていないのが悩みです。本当はドライブとかに行きたいんですけど、免許がないので、インカレが終わったらなるべく早く教習所に行って免許を取りたいです。

――ヨットを始めたきっかけを教えてください

海老塚 小学4年生の時からヨットを始めたのですが、自分の住んでいる藤沢は江の島からすごく近くて、たまたま市の広報紙に書いてあったヨットの体験教室募集中という広告を見て、興味を持って始めたのがきっかけです。

谷川 自分は高校から始めたんですけど、その高校にヨット部があって、体験会に行ってみたら面白いじゃんと思って始めました。

佐香 自分は父がヨットをやっていて、高校で何をやろうかなと思っていたんですけど、中学までやっていた野球を続けるよりも毎年、総体に出場するほどのヨット部があり、うわさに聞くと推薦ももらえるということで高校ではヨットを始めたところであります。

海老塚 本音すぎだろ(笑)。

一同 (笑)。

――他にやっていたスポーツや習い事はありますか

海老塚 僕は小学生低学年の頃、色々と習わされていて、全部1か月とかなんですけど、サッカー、空手、バイオリン、合気道をやっていました。でもすぐやめて、その後ヨットと出会って13年やっています。

谷川 小学校の時は水泳と習字を習っていて、中学ではバスケをやっていました。

佐香 僕は小、中学校で野球をやっていて、習い事のような感じで書道をやっていました。水泳は3か月くらいで辞めました。というのも、入ったのが小学4年生くらいの時で、一番最初のコースって幼稚園児とビー玉を探すんですよ。

一同 (笑)。

佐香 そもそも水泳は兄が一緒にやろうと誘ってくれて、初日の終わった後に試験で合格したら飛び級させてあげようと言われたのですが、僕は背浮きができなくて、沈んでしまって。

一同 (笑)。

佐香 3か月幼稚園児とビー玉探した挙句、辞めました。あと、地元の伝統芸能で太鼓をやっていて、全国大会にも出たことがあります。

――その経験がヨットに生きたことはありますか

海老塚 空手は…。すみません、さっき僕ウクレレって言いましたっけ?

谷川 言ってないだろ(笑)。

一同 (笑)。

海老塚 空手はやっぱり気合の声を出さなければいけなくて、大きな声を出す必要があるのでその経験は生きているかなと思います。

谷川 ヨットはよく海に落ちるので、水泳は生かせているのかなと思います。下級生の頃はよく船が転覆して、船から離れた時に小学校で身につけた水泳スキルを生かして船にたどり着くということをやっていました。

佐香 僕も高校生の時、沈して追い込まれている際に顔つき5秒が生きたと感じます。

一同 (笑)。

佐香 5秒以内だったらどこでも生きられる体になっているので

谷川 結構短いな(笑)。

佐香 あとは抗議書も習字をやっていたので字も上手く書けます。あと、野球をやっていた経験も生きていて、サポートボートに飲み物を渡すときにちゃんと投げて渡せることは役立っています。

13年間ヨットをやってきた中での集大成(海老塚)


全日本インカレに向けての意気込みを語る海老塚

――全日本インカレまであと1週間ですが、心境はいかがですか

谷川 関東個人戦や早慶戦、秋インで自分たちの実力が分かってきて、実力を出し切れば勝てるレベルであると思っているので、やるべきことをやろうという心持です。

海老塚 僕は正直少し不安です。というのも、いつも日大とは勝ったり負けたりの関係で、ライバル校としての重圧が強いので、いつも以上の力を出すことを意識しなければならないと感じています。まだ緊張はしてないんですけど、すごく厳しい戦いになると思います。

佐香 470チームとして考えた時にスナイプ頼みにならないレースができたらなと思います。

――会場が西宮から和歌山へ変わりましたが、気持ちの変化はありますか

海老塚 あまり気持ちの変化はないです。というのも、どこでやることになってもやるべきことは変わらないし、しっかり準備すれば結果はついてくると思うので、場所の変更に対しての心境の変化はなかったです。

谷川 和歌山は西宮よりは風が吹くという予想なので、強風に強いワセダにとっては変わらないか少しプラスかなと思っています。

佐香 総体の会場が和歌山で、両クラスのスキッパーは西宮よりも走った経験があると思うので、当時の感触を思い出して気持ちよく走ってほしいです。

――全日本インカレへの意気込みをお願いします

海老塚 13年間ヨットをやってきた中で集大成となると思うので、もちろん目標は総合優勝なのですが、悔いの残らないレースをしたいです。

谷川 ここまできたら技術よりもメンタリティだと思っているので、どんな状況になっても最後には勝つという強い気持ちを持ってレースに臨みたいと思います。

佐香 僕も4年間の最後の集大成であり、レースメンバーで出られないのは残念なんですけど、自分のできることをしてワセダの総合優勝に貢献できれば嬉しいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 足立優大)


全日本インカレに向けた抱負を書いていただきました

◆海老塚啓太(エビヅカ・ケイタ)(※写真右)

1998(平10)年12月22日生まれ。167センチ。59キロ。神奈川・鎌倉学園高出身。政治経済学部4年。13年間の集大成を見せたいと話してくださった海老塚選手。競技人生を優勝で締めくくることはできるのでしょうか。

◆佐香将太(サコウショウタ)(※写真左)

1998(平10)年6月4日生まれ。165センチ。54キロ。岩手・宮古高出身。スポーツ科学部4年。いくつもの強烈なエピソードを語ってくださった佐香選手。最上級生として470チームを支える働きに期待です!

◆谷川隆治(タニカワリュウジ)(※写真中央)

1998(平10)年1月17日生まれ。168センチ。65キロ。千葉・稲毛高出身。商学部4年。バスケ部でのポジションはSFで、市大会での優勝経験がある谷川選手。同期である海老塚選手との息の合った走りに注目です!