10月24日放送の「卓球ジャパン!」は、レジェンドシリーズ第3弾! 「今も語り継がれる伝説の激闘 英雄ボル 中国3強を連続撃破」と題して、ドイツのボルを大特集。ゲストに松下浩二氏を招き、ボルが中国勢を3連破して優勝を果たした2005年ワール…

10月24日放送の「卓球ジャパン!」は、レジェンドシリーズ第3弾! 「今も語り継がれる伝説の激闘 英雄ボル 中国3強を連続撃破」と題して、ドイツのボルを大特集。ゲストに松下浩二氏を招き、ボルが中国勢を3連破して優勝を果たした2005年ワールドカップでの戦いぶりをDEEPに解説してもらった。

ティモ・ボルといえば、20年以上にわたって世界のトップを走り続ける卓球界の鉄人。2005年の大会当時は24歳で世界ランク2位だったが、39歳になった現在も世界ランク10位なのだから驚きである。

また卓球の実力だけでなくルックス&性格の良さでも知られ、親交のある松下氏も「穏やかでプレーぶりも紳士」と語り、MC平野早矢香もボルファンを公言するなど、三拍子揃ったまさに世界的なスーパースターなのだ。



そんなボルの強さの秘密としてまず挙げられるのが「前陣でのカウンター」。「普通の選手は中国選手に先に攻められると台から下がってしまうが、逆にカウンターで攻め込める強さがある」と松下氏も語るように、卓球台に近い位置での打撃戦にボルは滅法強く、このカウンターがあるからこそ中国に勝つことができる。実際、今回の3試合もカウンターでラリーの主導権を奪い、勝利を引き寄せている。

そしてふたつ目は「ループドライブ」。強く回転をかけて山なりに打ち返すドライブの一種だが、ボルはこのループドライブの質が世界一高いと言われている。松下氏も「ものすごく回転がかかっており、ネットすれすれで来て、なおかつ強い回転によって弾道が沈むから攻めることができない」と絶賛。ゆっくり飛ぶボールではあるが、チャンスだと思って攻めると痛い目を見る、ボルの隠れた必殺技だ。

以上を踏まえたうえで、伝説の3連戦を見てみることに。まずは、準々決勝の王励勤戦。

世界卓球優勝3度、当時は世界ランク1位に君臨していたのがこの王励勤。186cmの長身から繰り出される豪快なフォアドライブは「どこにレシーブをしても打たれる」(松下)という驚異的な決定力を誇る......はずだったが、ボルの伝家の宝刀カウンターが炸裂。広角に放たれる両ハンドのカウンターにさすがの王励勤も対処できず、フルゲームの接戦を制してボルが勝利をおさめた。

続く準決勝の相手は、"台上のマジシャン"北京五輪金メダリストの馬琳。松下氏曰く「当時海外選手に一番強かった中国選手」であり、実際にボル自身も8連敗を喫している相手だ。

この一戦で特に際立っていたのはレシーブ。世界屈指のサービステクニックを誇る馬琳だが、気がつけば3球目をフルスイングで攻めているシーンはほとんどない。相手のお株を奪う絶妙なストップレシーブによって強打を完全に封じ込めたボルが、再びフルゲームの末に天敵を退けた。

これで中国に2連勝となり、地元ベルギーのファンも大興奮。「ティモ!」コールの中、決勝戦がスタートした。

相手の王皓は世界卓球2009の王者で、オリンピックでは3度銀メダルに輝いている中国最強トリオの一角。ペンの裏面バックハンドが最大の武器で、現代卓球ではスタンダードになっているチキータをいち早く取り入れた選手としても知られている。

三たびフルゲームの大接戦となった決勝は、観客の大声援を味方につけたボルが第7ゲームもカウンターを決めて、一気に6-0とリードを広げる。

ボルのドライブのスイングは体格の割にコンパクトだが、切れ味は抜群。

「あんなに小さくてよく速く打てるなぁ」と松下氏も感心していたが、MC武井壮は「関節の使い方が固くて強い」と分析。「力を抜いてファッと速く動かすタイプではなくて、固めてグッといく。一瞬のインパクトの強さがあるから球が速くなる」と語った。

試合は6-4と追い上げられるも、焦った王皓のミスもあって10-4と再び突き放し、ラストはフォア側に来たハーフロングのボールをフォアドライブで決めてフィニッシュ。中国勢を3連破という劇的なフィナーレで、ボルが2002年以来2度目のワールドカップ優勝を果たしたのだった。



この試合を振り返り、"打倒中国のヒント"として松下氏は「攻撃力が中国よりも上回っていたり、中国選手が持っていないものを持っていると勝利に結びつく」とコメント。

また、中国選手に対してコンプレックスがないことも重要だ。並の選手であれば、中国選手と対峙しただけで気圧されてしまうが、ボルにはそれがない。日本でいえば伊藤美誠も同タイプで、中国選手を相手にしても堂々と自分のプレーを貫くメンタルの強さを持っている。

「同じ人間ですし、中国選手にも絶対はない」そう松下氏も語るように、打倒中国のチャンスは日本選手にとっても大いにある。その可能性を改めて気づかせてくれたボルの戦いぶりだった。


次回は、「卓球ジャパン!クロニクル」として世界卓球2014での日本女子31年ぶり、涙の銀メダルをDEEP解説。お見逃しなく!

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