東京六大学リーグ戦(秋季リーグ戦)の早慶戦の前夜祭である稲穂祭。第67回となることしは、コロナウイルスの影響でオンライン開催となった。慶大応援指導部とのエール交換、野球部の壮行会は残念ながら行われず、異例が重なっても、打倒慶応に燃える情熱…

 東京六大学リーグ戦(秋季リーグ戦)の早慶戦の前夜祭である稲穂祭。第67回となることしは、コロナウイルスの影響でオンライン開催となった。慶大応援指導部とのエール交換、野球部の壮行会は残念ながら行われず、異例が重なっても、打倒慶応に燃える情熱は変わらない。このような状況だからこそ、「オール早稲田」で作り上げる稲穂祭のパワーを改めて感じさせてくれるようなステージであった。

 太鼓の音とともに校旗の入場で幕が開けた。浅野太郎旗手(社4=東京・早実)によって掲げられた『新大校旗』は長らく第一校旗として君臨していたが、ことしの稲穂祭をもって勇退する。昭和58年に早稲田大学創立100周年を記念して作成され、早大生の背中を見守り続けた『新大校旗』の最後の勇姿は見どころだ。そして最初の応援歌は、NHKの朝の連続テレビドラマ小説「エール」の主人公のモデルでもある、古関裕而氏が作曲した『紺碧の空』である。センターリーダーを務めたのは実行委員長である谷下豪副将(政経4=東京・早大学院)。ことしは新入生にもしっかり覚えてほしいという思いから、2番まで披露した。「1番と2番でテクを少し変えて、アレンジを入れました。新入生が、『紺碧の空』を皆で肩を組んで歌いたい、と思ってくれたらいいと思っています。」という言葉通り、力強いテクであった。次に『ひかる青雲』。センターリーダーは大久保友博学生誘導対策責任者(政経4=千葉南)。1番と2番でがらりと表情を変えるこの曲は2番の旋律がとても印象的だ。舞台だからこそ際立つ演奏に注目である。


司会を務めた薗田将直(法3=東京・早大学院)

 附属校コラボメドレーでは、画面内で、応援部と早稲田大学の附属校とのコラボが実現した。オンライン開催ならではの試みであり、稲穂祭開催に向けて4年生が練りに練った企画だ。「オール早稲田」のエネルギーをぜひ感じてほしい。ことしの稲穂祭は例年に増して演出にこだわっている。応援曲メドレーでは『大進撃』、『スパークリングマーチ』『コンバットマーチ』などが披露された。特に、2度演奏された『コンバットマーチ』は圧巻であった。1度目は照明がシンプルである分、センターのリーダー4年生にスポットが当たるような演出であった。2度目は、えんじに白で「W」が浮き上がる照明で、新人の屏風を背後に、2、3、4年生が圧巻の突きを披露した。試合で、回を重ねるごとに白熱する応援と、ボルテージが高まっていく様子が伝わってくる。続いて披露したのは『早慶讃歌』。「早稲田だけでは成り立たない演目だが、慶大にも届くように、と思って振った。」と話したのはセンターリーダーを務めた安田直矢代表委員主務(教4=県立岐阜)。「花の早慶戦」に向けて早慶両校に熱いエールを送った。


2・3年生も含む全員でコンバットマーチを披露した。

 締めくくりは早稲田大学校歌である。センターリーダーは宮川隼代表委員主将(人4=千葉・稲毛)。校歌について、「多くの人をつなぐような歌」と話す宮川は、代表委員主将として校歌を振る機会も残すところわずかとなった。残りのリーグ戦に向けて、「下級生やお客さんの熱い視線、すべての人の思いを背中に背負って振りたい。」と意気込む。また、宮川は新人監督としても下級生の成長を見守ってきた。同じ舞台に立ち、背中で発声を聞いて「よく成長したな、とは思いつつ、まだまだやれるとも思った。」と語った。ことしは新人にとってもイレギュラーな状況だったが、上級生から懸命に吸収しようとする熱意は屏風からも伝わってくる。サークルステージでは、踊り侍、魁響などが光るパフォーマンスを魅せた。オール早稲田の精神を共にする彼らのステージも見逃せない。

 第67回稲穂祭は例年と違い、オンラインでの配信、それに伴い野球部の壮行会が行われないなど異例は多かった。しかし、応援の形が変わろうとも「オール早稲田で打倒慶応」の心は変わらない。稲穂祭実行委員長の谷下は、「稲穂祭がゴールではなくて、早慶戦につなげていかなくてはならない。実行委員長としての仕事は終わらない。いろんな人への感謝の気持ちを持ちながらやっていきたい。」と話した。早慶戦に向けて、野球部、そして早稲田を応援するすべての人にエールを送る稲穂祭であった。稲穂祭は本日(10月30日)より応援部公式YouTubeチャンネルにて無料で配信される。その勇姿、必見である。

(記事 中原彩乃、写真 市原健 佐藤桃子 吉田美結)

コメント

宮川隼代表委員主将兼新人監督兼連盟委員長(人科4=千葉・稲毛)

――代表委員主将として臨んだ稲穂祭を振り返っていかがですか

例年ですと、早慶戦の直前、リーグ戦がある程度終わってからの開催なので、部員の士気が自然と高まった状態で臨めるのですが、ことしは明治戦しか終えていない状態での開催だったので、部員の士気をどうやって上げるかが肝だなと思いました。

――『コンバットマーチ』はいかがでしたか

新人監督という立場から見ると、新人は本格的に練習を始めたのが約1ヶ月半前からで、そこから良く成長したな、とは思いつつ、まだまだやれるな、というのも、背中で発声を聞きながら思いました。

――慶応がいない分どのようなカバーをしましたか

谷下を中心にオール早稲田で臨もうということを心がけました。やはり、コロナ禍で新入生も含め、早稲田というものを感じきれていない中、全員で作り上げよう、といったところに重点を置いていたので、そこが慶応がいない分のカバーかなと思います。慶応がいないことによって、やはり言い表せないような違和感も正直ありました。

――代表委員主将として校歌を振るときに込めている思いや残りの試合に対する思いを聞かせてください

校歌に関しては、早大生ならほとんど誰もが知っている歌で、色んなOB会に参加する中でも、絶対に校歌だけは外せない、と言っていただけることも多く、それだけ多くの人を繋ぐような歌だと思うので、そこを意識して振りました。残りは秋季リーグ戦だけなのですが、お客さんも内野席で発声は出来ませんが、下級生やお客さんの熱い視線、全ての人の思いを背中に背負って校歌を振りたいと思います。

――早慶戦、残りの秋季リーグ戦に向けて意気込みをお願いします

特別な年にはなってしまいましたが、早慶戦はいつもと変わらず、慶応より先に勝って先に校歌を、そしてエールを送るという思いは1年生のころから思っていたのでその思いを最後まで持ち続けてやりたいと思っています。秋季リーグ戦に関しては、ことしは連盟委員長という立場も兼ねているのですが、六大学でコロナウイルスの感染者が出ないように、無事に終わることがまず第1だと思っております。

谷下豪副将兼リーダー練習責任者兼稲穂祭実行委員長(政経4=東京・早大学院)

 

――稲穂祭全体の振り返りをお聞かせてください

作成側の都合になりますが、稲穂祭は本当は毎年早慶戦の前にやるんです。今年はオンラインでやることになって、編集の期間が必要なのできょうという早い段階で撮影して、編集期間を経て早慶戦の前に出すことになります。このタイミングで早慶戦のモチベーションというか、気持ちに持っていくのが難しいんです。僕らもリーグ戦はまだ1回しかやっていなくて、練習もあまりできていない状態で今撮ってしまって、それが早慶戦の前に出てくれるので、そういった意味で部員のモチベーションをどこまで高められるかというのが肝でした。今出せるベストは部員一同皆やってくれたと思うので、これからしっかり編集作業をやって、良いものを世に出せたら良いなと思います。

――『紺碧の空』を振っていましたが、いかがでしたか

『紺碧の空』は例年だと1番しかやっていないのですが、今年に関しては朝ドラの『エール』で特集されたこともあり、2番までやりました。新入生の皆さんは早慶戦に行ったこともないと思うので、2番までしっかり覚えてもらいたいなという思いで、2番まで曲目として入れました。自分のテクも1番と2番で少し変えて、アレンジを加えて振ってみたので、そういったところを通して『紺碧の空』ってこういう曲なんだ、皆で肩組んで歌いたいね、と1年生たちが思ってくれたらいいなと思います。

――応援歌メドレーの時に、チアリーダーズに指示を出していましたが、どのようなことをお話ししましたか

メドレーの構成など全て自分がひとりで考えたのですが、動きが若干複雑なところがあるので、そういったところがうまくスムーズに撮影が進むように、最終確認をしていました。

――校歌収録の直前に「最後しっかりやれよ」と前に出て声をかけていましたが、それについてお聞かせください

自分が普段下級生を指導する立場にあるので日頃から言っていることなのですが、やる時にやるというのが大事だと思っています。もちろん失敗してしまうことやちょっと気が抜けてしまうことがあるにはあるのですが、やらなきゃいけないそのタイミングはしっかりやれよ、そこだけは絶対逃すなよというのを普段から言っているので今がその時だぞと、最後しっかり締めて終わる時だぞということを改めて伝えました。稲穂祭としても一番最後である最後の収録、しっかり締めるようにと一言、言いに行きました。

――稲穂祭実行委員長として運営を進めてみて、いかがでしたか

稲穂祭は関係者がすごく多いです。吹奏楽団やチアリーダーズ、他のサークルの方にも来てもらって、オンラインで開催するにあたって照明さんや音響さん、撮影など色々な方の協力の元に成り立っています。そういった人への恩返しという気持ちも込めて、今まで取り組んできました。これからも色々な方の力を借りて編集作業があり世に出る、それで初めて稲穂祭というものが成り立って、それがゴールではなくてそれからさらにその先の早慶戦に繋がっていくということが大事になってきます。まだまだ実行委員長としての仕事は終わらないですし、色々な人への感謝の気持ちを持ちながら進めていきたいなと思います。

――腕にはちまきをしていましたね

頭につけているのは自分のですが、腕につけていたのはきょう欠席になってしまった同期の佐川太一(スポ4=栃木県立大田原)君のはちまきをつけていました。参加できなかった彼の分までという想いで実行委員長の自分が腕につけて登場しました。いない人の気持ちも背負って、腕にはちまきをつけて出演しました。

 

――オンラインで見ている方へのメッセージをお願いします

早慶戦に向けて士気を高めていくということを考えた時に、大隈講堂で人数を絞ってやるよりできるだけ多くの人に見ていただいた方が早慶戦前夜祭としての役割を果たせるだろうということで、オンライン開催にしました。今まで早稲田の文化に触れていなかった新入生の方も見てくださると思っているので、そういう方々にも早稲田ってこういうところなんだよとわかるような演出を工夫してきました。早稲田を感じてもらって、自由に活動できるようになったらぜひ神宮球場にも来ていただけたらいいなと思います。

――早慶戦に向けて意気込みを聞かせてください

打倒慶應、一言です。

安田直矢代表委員主務兼記録編集責任者(教4=県立岐阜)

――オンラインの収録、やってみていかがでしたか

まだ実際に映像を確認できていないので分からないですけど、自分が前で振らせてもらっていた演目に関しては、本当に旗もテクも屏風もチアも全員、全力でやれたかなと思っていますので、今できる応援部の全ては出せたかなと思っています。

――『早慶讃歌』を振ってみていかがでしたか

早稲田だけでは成り立たない演目ではあるのですが、そこを振らせていただけたというのは非常に嬉しいですし、光栄に思っています。本日慶応はいませんでしたが、実際に振っている最中も慶応に届くようにとも思って振らせていただきました。

――最上級生として迎えた稲穂祭はいかがでしたか

個人的なことを言うと、お客さんはいなかったのですが、いい景色を見させてもらったなという感じですね。これまでやはり下級生で必ず前に(上級生の)背中があって、それに向けて全力でやっている、お客さんに向けて全力でやっているというところでしたが、その最前線に立ててやらせていただけたのは一生の財産ですし、思いがビデオ越しになるとは思いますが届けばいいなと思っています。

――例年の稲穂祭と違って大変なことはありましたか

主に実行委員長の谷下が中心となって前例のない中、うまく頑張ってくれたので自分としてはその思いに精いっぱい応えようと思って頑張っていました。

――早慶戦に向けての意気込みをお願いします

やはり早慶戦が自分たちの1区切りの応援になると思うので、悔いのないように、良くも悪くも2戦しかないので、そこに全てをぶつけて後輩たちにも少しでもいい経験をさせられたらなと思っています。あとは外野からですが、本当に多くの方が見に来てくださるので、その方々はもちろん選手にも、そして映像越しの方にも思いが届くようなそんな応援にしたいと思っています。

――『コンバットマーチ』を上級生として最前列で振られたとき、感じたことは

『コンバットマーチ』は(振りの途中で)後ろを向くのですが、その際に後輩の顔が見えて、そこですごく気合の入った顔をしているな、負けられないなと言ったらあれですが、さらにその上を自分たちが背中で見せられるようにと思って、とにかく全力でやらせていただきました。やはり4年生だけの『コンバットマーチ』はもちろん気合が入りましたが、下級生に後押ししてもらって、最後だったのですが、さらにもう一段ギアを入れて頑張れたかなと思っています。あとはそれが気迫として画面越しに届けばなおうれしいです。</p