男子部の最後を飾るのは、高橋尚希主将(スポ4=宮城・泉館山)と吉原陸副将(スポ4=福島・安積)の2人。コロナ禍の中でも、日本一という目標をぶれることなく掲げてきた2人は、集大成の舞台・全国大学選抜男子ソフトボール選手権大会(インカレ代替大…

 男子部の最後を飾るのは、高橋尚希主将(スポ4=宮城・泉館山)と吉原陸副将(スポ4=福島・安積)の2人。コロナ禍の中でも、日本一という目標をぶれることなく掲げてきた2人は、集大成の舞台・全国大学選抜男子ソフトボール選手権大会(インカレ代替大会)を前に何を思うのか。インカレ代替大会、そして日体大との戦いに向けての展望も交えて、お話を伺った。

※この取材は10月20日に行われたものです。

「あと一歩で勝てるのではないか」(吉原)


笑顔も見せながら取材に応じる吉原

――東京都大学ソフトボール連盟秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)を振り返っての収穫と課題はどのようなものでしたか

高橋 秋季リーグ戦に関しましては、課題というよりもコロナ明けの中で、どれだけの試合ができるのか、ということをテーマにやっていました。ベンチ内でマスクをするとか消毒をするとかなどのコロナ禍の対策の中で試合を進めていく中で、高杉さん(高杉聡監督、平10人卒=群馬・前橋育英)にも来ていただいて、試合をしました。一番の収穫としては日体大戦です。この試合は小山(小山玲央、4年)も投げていて、ベストメンバーだった日体大と試合できて、0-3という結果以上に守備面でも攻撃面でもいろいろな課題が得られたのかなと思うので、その試合が一番良かったのかなと思います。

吉原 長い期間実戦から離れていて、準備期間も少ない中で臨んだリーグ戦だったのですが、準備期間が少ない割にはみんな動けるなという印象を受けました。打線もクオリティが高い中でプレーできていましたし、投手の方も山内(壮起、スポ4=千葉・成田国際)のすごさというものが見えた大会だったかなと思います。課題は、日体大に勝つとなった時に、17奪三振で負けてしまったので、攻撃面でどうやって1点を取るのかというところです。数字だけ見ると17奪三振で完封負けだったのですが、あと一歩で勝てるのではないか、という思いを抱くことができました。

――具体的にどのような点から手応えを感じましたか

吉原 春先から1番に座っている浅田(剛志、スポ4=大阪・清風南海)に安打が出て、盗塁も決めましたし、澤(優輝、人3=東京・国学院久我山)は相変わらず3回打席に立てば1回は安打が出るかなという感じでした。早いカウントでアウトコースにストライクを取る球をしっかりと打てれば、1点は入るのではないかなと思いました。

――実戦から遠ざかった中での、ご自身の調子はいかがで知らか

高橋 自分の調子としては、正直あまりよくなかったのかなと思っています。10打数1安打で、安打も最後の慶大戦だけだったので。自分の調子自体は良くなかったのですが、日体大以外には勝てて、日体大戦でも課題と収穫はあったので、その点はかなり良かったのかなと思っています。

吉原 僕はバントやスラップ(※)が中心となるので、プレースタイル的にはあまり(調子の)波がないのですが、その中で高い打率と出塁率を残せて、初めて首位打者も取れたので、かなり満足のいく結果だったなとは思います。

――日体大戦のことを伺っていきます。高橋主将にまずは伺います。日体大戦で得た課題と収穫をより具体的に教えていただけますか

高橋 先ほど吉原も言ったように、山内がしっかり抑えてくれて、松下(直矢、スポ4=京都・南陽)も苦しい投球だったのですが、5回3失点に抑えてくれたので、投手陣の仕上がりとしては上々かなと思いました。まだまだ(投球の)精度や球威に関しては(インカレ代替大会に向けて)上げられるのかなと思っています。打撃に関しては、17奪三振とかなり三振をしてしまったので、2ストライクからの打撃をどうするか、ということが一つです。また、チームの目標として3-0で日体大に勝つというのがあるので、小山からどうやって3点を取るのかということも課題です。しっかりと小技の打者が出塁して、ポイントゲッターがしっかり(走者を)返すということをやっていきたいです。なおかつ盗塁に関しては、何とか得点圏に走者を進めたいので、いろいろなオプションを持って、攻められるようにやっていきたいと思います。

――続いて吉原副将に伺います。全体練習を再開されてから、チーム全体として、守備面を強化されてきたと伺ったのですが、どのような意図をもって守備の強化をしてきましたか

吉原 早稲田は伝統的に、パワーピッチングでライズボールを使って、空振りを取って三振を量産する感じではなくて、ドロップや緩い球を低めに集めて打たせて取っていくスタイルです。今年も山内、松下とそのタイプなので、だからこそ強い打球も飛んでくるし、取りづらい打球も飛んでくるので、そこで失策が出てしまうと、早稲田のディフェンス面は崩壊してしまいます。優勝するための前提条件として、かなり高いレベルで守備面は強化しなければいけないので、そのような考えで守備を強化してきました。

――秋季リーグ戦全体を見たときに、守備面はどのように評価しますか

吉原 記録に残る失策は1個だけだったので、今までやってきたことが目に見えて結果として表れたのかなと感じています、特に外野守備に力を入れてきたのですが、レフト(浅田)に打球が多く飛んできた中で、全部難なくさばいてくれたというところで、手応えがありました。

「グラウンドが好き」(高橋)


主将、副将として過ごした1年間を振り返る2人

――続いて、プライベートのことを伺っていきます。まず、お互いの印象や関係性はどのようなものですか

高橋 吉原とは主将と副将という関係性で1年間やってきて、かなり頼りになる存在だと思っています。自分は主将として一年間やってきた中でなかなかうまくいかない部分があったのですが、そのような時に吉原が支えてくれて、僕が見えないところをしっかりと見てアドバイスをくれるので、頼もしかったのです。一年間吉原が副将をしてくれていたからこそ、主将としてやってこれたと思うので、そこに関してはすごく感謝しています。

吉原 一年間いろいろあって、副将としてやらせてもらったのですが、一番大変だったのは、コロナの影響で活動すらできなかった時です。その中でも、高橋が誰よりも日本一を取りたいと思っていただろうし、誰よりもチームを大会に出させてあげたいという思いが強かったです。それに引っ張られるかたちで僕もやってこれたので、感謝しています。

――先ほどもお話があった自粛期間のことを伺っていきます。その期間にチームとして、新しく始めたことはありますか

高橋 3月下旬に練習自粛が決まりまして、高杉さんから「この自粛期間はかなり長くなる」とおっしゃっていただいたので、何かする必要があると思いました。その中で取り組んだのが、全国の投手の分析や吉村先生(吉村正前総監督、昭44教卒)が今まで積み上げてきてくださった部誌を読んで、レポートを書いてもらいました。あとはLINE通話を通じてオンライントレーニングを行いましたし、週に一回指導者の方たちに時間を割いてもらって、ミーティングを行うということをやらせていただきました。

――マイブームや趣味はありますか

吉原 特にこれといったものはないのですが、『プロ野球スピリッツ』(プロスピ)というゲームをやっていて、ちょうど昨日の深夜に大谷翔平(現エンゼルス、前北海道日本ハムファイターズ)を手に入れることができました。ソフトボールとプロスピを楽しんでやっています。

高橋 趣味とかは特にないのですが、最近でいうと資格の勉強をやっているので、それがマイブームですかね(笑)。ソフトボールだけでなくて、資格勉強をすることも息抜きになっているので、その意味では楽しいのかなと思っています。

――再び吉原副将に伺います。ホームページの選手紹介の欄に、好きな歌として『紺碧の空』を挙げられていましたが、どのような点がお好きですか

吉原 あれは4年前に書いたものなのですが、特に何も出てこなくて、書いた感じですね。当時は地方から上京してきて、早稲田への憧れや入学出来て部活に入ることができた喜びがあったので、そんなことを書いたのかなと思います。

――続いて、高橋主将にも伺っていきます。好きな場所としてマウンドを挙げられていましたが、高校時代は投手をされていましたか

高橋 そうですね、高校時代は投手兼内野手でした。今もマウンドは好きですし、このグラウンドで4年間やらせていただいたので、このグラウンドには感謝していますし、好きな場所ではあります。

吉原 この間ちょうど、「グラウンドに寝泊まりしたいな」と言っていたくらい、グラウンドが好きですね。

『感謝』と『恩返し』


インカレ代替大会に向けての思いを語る高橋

――インカレ代替大会に関することをお聞きしていきます。組み合わせが発表されましたが、ポイントになりそうな試合はどこですか

高橋 初戦が立命大ということで、かなりいい投手もいますし、勝ち切ることはなかなか難しいのではないかと考えています。ただ、早稲田がやってきていることは、初回に5、6点取って、コールド(ゲーム)にすることなので、それができるようにやっていきたいと思っています。そのうえで決勝戦は日体大と対戦する可能性が高いので、それまでの3試合はすべてコールドできるように、しっかりと調整していきたいと思っています。

吉原 やはり全国から選抜されたチームが出てくる大会なので、楽な試合は1試合もないという印象を持っています。初戦もそうですし、準決勝で対戦する可能性が高い福岡大は、去年早稲田にサヨナラ負けしています。向こうは1年間早稲田を倒すためにやってきていると思うので、相手の気持ちに飲み込まれないように、僕らもチャレンジャーだという気持ちを持ってやっていきたいと思っています。決勝まで行くことも簡単ではないですし、決勝に勝つことはもっと難しいと思っています。

――先日の埼玉県庁との練習試合(10月18日)は連勝されました。現状のチームの状態はいかがですか

高橋 秋季リーグ戦と比べると、個人としてもチームとしても、仕上がりとしては良くなっているのかなと感じています。特に小技に関しては、リーグ戦の反省や指導陣の方からの話も踏まえて、三遊間打ちというものをやっています。特に日体大戦は、内野手がかなり前に来ている状態だったので、そこで強い打球で(内野手の間を)抜いて、内野手(の守備位置)を下げられるかを課題としてやっています。そのようなところでいうと、小技の打者は、何本か三遊間に安打を打てていましたし、間を抜ける打球を打つことが増えてきたので、良い収穫を得られたと思っています。いい投手とも対戦した時に、それができるかが今後の課題だと思っていますし、あと2週間でしっかりと仕上げていきたいです。守備面に関してですが、(投手の)山内、松下に関しては、キレなどはもっと上がっていくのかなと思っています。山内に関してはしっかりと抑えてくれましたが、松下は無駄な四球があったので、そこをなくしてもらって、インカレ代替大会に臨んでもらえればなと思っています。また、無失策というものを目標に掲げている中で、記録上の失策はなかったのですが、ポジショニングのミスなどで防げる安打があったので、そのようなものをどれだけ防いでいけるかが今後の課題だと思っています。

――先ほどの話と少し重複するのですが、インカレ代替大会に向けて残りの時間で修正しておきたい点はありますか

吉原 このチームが始まった時から、打撃に関しては問題がないというか、高いレベルでやれていたので、守備面を詰めたいです。守備も間違いなくレベルアップはしているのですが、当たり前にさばける打球は当たり前にさばくとして、どれだけ安打性の打球をアウトにできるかが求められると思っています。80点の守備では駄目だと思うので、120点の守備を追い求めて、あと2週間やっていきたいです。

――日体大と決勝で戦う際のポイントはどこになりそうですか

高橋 打撃に関しては、まず小技の選手が出塁することができるかが勝負だと思っています。秋季リーグ戦ではなかなか(小技の打者が)出塁できない状況だったので、それを克服するために小技や三遊間打ちを今やっています。なおかつ、ポイントゲッターである澤や石井(智尋、スポ4=千葉敬愛)がしっかりと(走者を)返せるかが、3点取るためには大事だと思っています。守備に関しては、山内、松下を中心として、0点に抑えられるか、なおかつ無失策を貫けるかが勝負だと思っています。日体大の場合は、決まっている戦術があると思うので、そのようなものをしっかりと防いで、1点も与えないようにしたいと思っています。

吉原 攻撃面でいうと、バットを振る3人(石井、澤、中畑友博、スポ4=愛知・清林館)は3打数1安打でやむを得ないという言い方をチームでしているので、その前にその他の打者がどれだけチャンスをつくれるかがかぎになってくると思います。守備面でいうと、やはり投手に尽きるかなと思っています。去年の全日本大学選手権(インカレ)決勝の山内の投球は、神経すり減らしながら、低めに丁寧にチェンジアップやドロップを集める、本当に高いレベルの投球でした。同時に、1球(本塁打)で負けるということを、みんな肌で感じました。(山内は)去年以上の投球を求められると思うので、本当にそこに尽きるかなと思っています。

――最後に、インカレ代替大会に向けての意気込みをお願いします

高橋 今回はコロナ禍ということで、インカレが中止になってしまったのですが、その中でも代替大会という舞台を用意していただいた大会関係者の皆様や、これまで支えていただいた先生方やOBの方々などすべての方々に感謝をしています。そのうえで、インカレ代替大会では恩返しではないですが、4試合すべて勝って優勝して、最後終わりたいと思っています。

吉原 高橋の言葉にもあったと思うのですが、僕も感謝の大会にしたいと思っています。高橋は2年生の頃から試合に出ていますが、今の2年連続準優勝という結果も、最後は4年生の力で勝たせていただいたものだと思っています。勝たせてもらったからこそ、このチームは優勝まであと一歩というところから始まったので、その分やりやすかったです。決勝で負けて、悔し涙を流している先輩方の姿を今でも鮮明に覚えているので、僕らが日本一を取って、結果で恩返しできればなと思っています。僕らの代は人数が多くて、下級生の頃から経験を積んでいる選手が多かったので、その分下級生になかなかチャンスが巡ってこないということも必然的に起きています。その中でも、サポート側に徹してくれている後輩たちのためにも、日本一の景色を見させてあげたいなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 杉﨑智哉 写真 新井万里奈)

※走りながらボールを打つ打法のこと。野球でいうところの、走り打ちのことを指す。


高橋主将が好きな場所だという、グラウンドをバックに写真を撮りました。色紙には、今年度の男子部のスローガンである『逆襲』を書いていただきました!

◆高橋尚希(たかはし・なおき)(※写真左)

1997(平9)年6月13日生まれ。169センチ65キロ。宮城・泉館山高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。コロナ禍の苦しい状況で、常に先頭に立ってチームを引っ張ってきた高橋主将。「グラウンドに寝泊まりしたい」と語るほど、ソフトボール、そしてチームへの思いを持ちます。インカレ代替大会では、チームを6年ぶりの日本一へと導きます!

◆吉原陸(よしはら・りく)(※写真右)

1997(平9)年9月17日生まれ。169センチ72キロ。福島・安積高出身。スポーツ科学部4年。外野手。右投左打。高橋主将と共にチームを支えてきた吉原副将。普段は、ムードメーカーとしての一面も持ちます。得意の小技で出塁し、日本一への足掛かりをつくります!