早大野球部にはグラウンドでプレーすることから身を引き、チームを支えることに尽力を尽くす学生コーチがいる。今回は杉浦啓斗新人監督(文構4=東京・早実)と結城壮一朗投手コーチ(教4=大阪・早稲田摂陵)、児玉魁音学生コーチ(商4=千葉・芝浦工大…

 早大野球部にはグラウンドでプレーすることから身を引き、チームを支えることに尽力を尽くす学生コーチがいる。今回は杉浦啓斗新人監督(文構4=東京・早実)と結城壮一朗投手コーチ(教4=大阪・早稲田摂陵)、児玉魁音学生コーチ(商4=千葉・芝浦工大柏)を特集する。それぞれの仕事内容からコロナ禍での対応、まだ知られてない注目選手などについてお話を伺った。チーム、そして同期への熱い思いを持った3人の男たちに迫る。

※この取材は10月15日に行われたものです。

学生コーチの仕事とは・・・


インタビューに答える杉浦(中央)、結城(右)、児玉

――学生コーチのそれぞれの仕事の内容を教えてください

杉浦 主に練習メニューの作成であったり、選手の1軍、2軍をどうするかなどの選手起用を監督に進言することであったり、あとはチームの運営ですね。ルールを決めたりとか。その3つくらいです。

――練習メニューを決める上で難しいことはありますか

杉浦 自分たちが決めていると今言いましたが、主将、副将、内野手リーダー、外野手リーダーといった4年生の幹部も含めて練習メニューを決めています。キツい練習とかはどうしても選手がやりたがらないことも多いので、そこは気持ちを鬼にして、最終的な目標に近づくために「こういうキツいメニューもやろうよ」と言ったりするのが難しいところです。

結城 自分はピッチャーコーチをしているのですが、メニューを組むにしても、やるのは結局個人でそれぞれの考えがあるので、なかなか同じメニューをするのが難しくて。それぞれの意見を取り入れるために新チームになってからはミーティングを数回やって、メニューに対する不満とかを全部出しました。今は4年生とかは練習メニューを決めずに個人に任せるっていうことをしています。そっちの方が昨年に比べて「自分たちがやらなければ」とそれぞれ考えてやってくれているので、そこはメニューを決めないようにして良かった点かなと思いますね。

――4年生は全体メニューも個人に任せているということですか

結城 野手と違って、投手はトレーニングを練習時間にやっています。フィールディングだったり、野手と一緒にやるメニューは一緒に決めるのですが、トレーニングの内容、ダッシュとか、ポール間を何本走るかとかは投手だけで決めています。その本数だったり内容を、4年生は各自で、1年生から3年生はトレーナーの方と相談して決めるという感じです。

――児玉さんはいかがですか

児玉 チームとしての練習なので、オープン戦とかリーグ戦(東京六大学リーグ戦)とかで出た課題をどうやって潰していくかっていうのをコーチとか選手とかと相談しながら課題を潰していくというのが少し難しかった点かなと思いますね。

――そのような『課題』は監督から提示されるようなものなのでしょうか

児玉 監督からはあまりなくて。選手の中で話し合って、どうしていくべきかを考えていく感じです。

――試合中はどのような仕事をされているのでしょうか

杉浦 自分は試合前の円陣の声掛けであったり、試合中は三塁コーチャーをしています。ランナーを指示して、1点を取る(ことができる)か取れないかというところで戦っています。

結城 自分は次に出る投手の準備を見ています。

児玉 自分はベンチに入れないので、(スタンドから)ただただ気を送っています。

――三塁コーチャーの仕事で難しいところはありますか

杉浦 東大戦で1つ丸山(壮史、スポ3=広島・広陵)を(ホームで)アウトにしてしまった場面があったのですが、そういうところとかは「無理しすぎたな」って思いますね。準備がすごく大事なのですが、準備をしていても予測できないことが起こるので、頭をフル回転させているのですが、その対応が難しいです。失敗した後にランナーをまた回すとなると「これ大丈夫かな?」と思ってしまうので、そこはアグレッシブに。攻めて攻めて、ということを心掛けて対応しています。

――結城さんは試合前に伝えられた投球順の通りに投手陣の管理をしているのでしょうか

結城 そうですね。試合前に大まかな流れなどは言われるので、あとは臨機応変に。それぞれ肩をつくる早さとか時間も変わってくるので、その辺りは気をつけてやっています。

――今年は新型コロナウイルスの影響で例年とは練習のかたちが大きく変わったと思うのですが、その部分に関してはいかがでしょうか

杉浦 (コロナが猛威を奮った)4月くらいは寮生だけ残っていいよってことになって。グラウンドに降りることができるのが3人以内、プラス2時間以内に練習を収めるというような学校側からの指示が出ていました。少人数の練習なので学生コーチと付きっ切りで、たくさんバットも振れましたし、寮生に関しては今まで気付くことができなかったスイングスピードの遅さとかに、試合がない中でも気付けたと思うので、すごく有意義な時間だったなと思っています。

結城 その期間は投手陣は決まった練習というのを行っていなかったので、自分も野手の練習のサポートに回ることがほとんどでした。バッティングピッチャーをしたり、ノックを打ったり、いつもあまりしないようなことをやっていました。野手の練習には普段参加できないので、そういった点では野手と関わりが持てて良かったなと思います。

――そのような状態から徐々に練習の規制も緩和されていったと思うのですが、どのように変化したのでしょうか

杉浦 電車を使う部員以外は(練習に)参加できるようになりました。

児玉 それでも30人くらいだよね。

杉浦 そう。その30人ずつ、2時間ごとに分けて。30人の時間帯が被らないように練習を行っていました。

結城 地元に帰っている人とかは全然来られなかったですね。

――トレーニングルームなどは使えたのでしょうか

杉浦 いや、使えなかったです。その2時間の中だったらいいのですが、それ以外だったら警備員が回っています。

――それではその2時間以外は部屋の中でのみトレーニングができるという状況だったのですね

杉浦 そうですね。でも部屋の中でも結構工夫したよね。

児玉 うん。

杉浦 鈴木コーチ(浩文、平5社卒=東京・関東一)が練習メニューをたくさん持っているので、発泡スチロールのポールを室内で打ったりしました。打ってもけがしないですし、どこも壊れないので。

――他にも練習メニューを組む際に大変だったことなどはありましたか

児玉 沖縄のキャンプがなくなって(東伏見で練習をしなくてはならないという時に)、元々(始まっていた)グラウンドの工事と重なっていて、室内だけで練習しなくてはならない期間が大変でした。

――具体的にはどのようなところが大変でしたか

杉浦 めちゃくちゃ難しいですよ(笑)。とにかく場所がないので。

児玉 投手と野手の両方が練習をするとなると、どうしても投手に場所を譲ってもらってというかたちになるので、申し訳なかったです。

杉浦 あの期間は(逆境を)プラスにしようということで、守備は下半身を動かして動かしてっていう、いつもなら絶対にやらない基礎的な練習とかを重点的に2、3ヵ月行えたのですごく良かったです。自分は3年生くらいの時から最終学年の冬に(グラウンドを)工事するということを聞いていたのでずっと「どうしようかな」と考えていたのですが、すごくうまくいったと思っていますね。

――練習メニューは具体的にはどのようなものだったのでしょうか

杉浦 とにかく下半身を鍛えるメニューをやりました。ゴロをたくさん転がして、とにかく足を使って捕球する(メニューです)。今までは一球を丁寧に扱うメニューはしていたのですが、キツいメニューはあまりなくて。もちろんそういう意識も大事ですが、土台となるスピードとか、瞬発力とか、そういうのを鍛えるようにしました。短時間で疲れる量をこなしました。

――その期間の投手の練習はいかがでしたか

結城 室内練習場を外に出たところに少しだけスペースがあるので、そこに少しだけトレーニング器具を置いて、外周を走ってきて、サーキットトレーニングのような感じの練習をやりました。スタートするタイミングを変えて少人数でぐるぐる回したり。あとは準硬式野球部にグラウンドを貸してもらえる時は、そっちを使わせてもらったりしていました。キャッチボールとか、ボールを使う練習がほとんどできなかったので、とにかく基礎をやりました。走り込みだったり、投手陣も同じですが下半身強化をしていました。

「○○と電話して学生コーチの重要さというか、役割の大きさについて話した」(結城)

――それぞれの役職に就くことになった経緯を教えて下さい

杉浦 2年の終わりに1人、学生コーチを出さなければいけないというチームの方針がありまして、そこで同期とミーティングをした結果、自分と中島(活大、商4=香川・高松北)っていう選手に票が割れて。そこで中島とも話し合って、家族とも話していく中で、決心することができました。

結城 自分は3年生の夏頃に選手を辞めて投手コーチになりました。(決断に至るまでに)家族と話したり中学の監督と話したりっていうのもあったのですが、決め手は小・中学生時代に一緒に野球をやっていた慶応の学生コーチ(西澤俊哉、4年)がいまして、彼と電話して学生コーチの重要さというか、役割の大きさについて話したことですね。彼も頑張っているから自分もそのポジションでチームに貢献しようと思って決断しました。

――なぜそのようなタイミングでの決断になったのでしょうか

結城 投手コーチも新人監督と同じで出るタイミングがあって。新チームになるタイミングの時には出ていないといけないので、それで毎年、メンバーで活躍している選手以外で話し合うのですが、自分たちの代は候補に出ているのが3人しかいなかったので、3人の誰かが学生コーチにならなくてはいけないというところで、割とすぐ、ではないですけど決まりました。

――児玉さんはいかがでしたか

児玉 新チームになる時に学生コーチをもう一人出さなくてはいけないということで、杉浦から「一緒にやってほしい」と言われたことがきっかけです。

――杉浦さんはどのような理由で児玉さんを誘ったのでしょうか

杉浦 どうしても新人監督ではなくて、リーダーじゃなくてサブというポジションなので、結構気を遣ったのですが、児玉という選手は1年生の頃からとにかくグラウンドを全力疾走して、雑用も面倒くさいことに自分から率先してやって、どの環境でもチームのために尽くしてくれる人だなって思っていて。個人的にも結構仲が良かったので、児玉が仲間でいてくれたらすごく助かるなって思って打診しました。

――それで児玉さんが引き受けたと

児玉 結構あっさり。

――選手を辞めるとなると少なからず葛藤もあったとは思うのですが

児玉 選手をやりたいという気持ちはもちろんあったのですが、元々下級生の頃からデータ係などをやっていて、チームのためになりたいっていう思いがあったので。自分たちの代で優勝するために自分ができることは何だろう、と考えた結果が、このようにスタッフになることだったので、結構あっさり引き受けたという感じです。

――役職に就いてからここまでを振り返ってみていかがですか

杉浦 徳武さん(定祐コーチ、昭36商卒=東京・早実)というコーチがいらっしゃるのですが、その方に3年の頃から面倒を見ていただいて。3年の頃は新人戦の監督をやったり、4年からはチームの要みたいなポジションをやらせてもらって。監督と選手のはざまというか、冬とかは苦しいこともありましたけど、結城とか児玉とかの仲間がいたので、色々な愚痴とかを言いながらも「みんなをまとめていこうぜ」っていうようになって、今このいい状態で最後の秋を迎えられているのかなと思っています。色々な人に助けられてここまできています。

――学生コーチとしてのやりがいはどこにありますか

児玉 やっぱりチームが勝った時とか、徳武さんと一緒に選手の練習を見ていた時に、悩んでいた選手がヒット1本をやっと打てた時とかはやりがいというか、良かったと思います。

杉浦 全部です。やりがいは。

結城 ピッチングは毎回見ますし、その時にアドバイスとかもするのですが、1軍で投げている投手はそれぞれ結構レベルの高いピッチャーが多いのであまり言うことはないのですが、 2年生だったり1年生だったりにアドバイスをして「あ、少しつかんだかも」っていう感覚を持ってもらえた時にやりがいを感じます。

――学生コーチをしていて学んだことはありますか

児玉 人とのつながりの大切さというのは本当に学びました。さっきも名前が出たのですが、徳武さんというコーチに教わって。人とのコミュニケーションであったり、信頼関係(の大切さ)を学ぶことができたかなと思います。

結城 被ってしまうのですが、コミュニケーションの大切さは学びました。練習メニューを決める過程でいろんな選手から意見を聞いて、こういうのは良くない、ああいうのは良くないっていうのは1年生も2年生も(含めて)全員に聞いたのですが、上級生だけで練習メニューを決めてしまうと不満を持ってしまう絶対に選手も出てくるので、それを改善するためにも全員としっかりコミュニケーションを取ることはすごく大事だなと思いました。

杉浦 コーチングですね。選手に上手くなってほしいからコーチは口出しをしたがると思うのですが、教えすぎてはいけないなと思っていて。選手がなりたい像っていうのを聞き出して「それだったらこういう方法がいいんじゃない?」くらい(が理想です)。自分は結構言いたがりなので、選手の考えを聞いて、そこに一緒に寄り添っていくというコーチングの難しさであったり、コツを学べたかなと思います。答えなんて教える側も分からないので。押し付けないことはすごく難しいのですが、いい経験をしているなと思います。

早稲田を志したきっかけは「駒大苫小牧と早稲田実業の試合」(児玉)

――皆さんが野球を始めたきっかけは何ですか

杉浦 4つ上の兄の影響です。兄が野球をやっていてかっこいいなと思っていて、幼稚園ながら兄の試合を見にいく中で自分も自然と野球をやっていました。

結城 父親が野球が好きで、小学校の頃に甲子園に試合を見にいって、桧山(進次郎、元阪神タイガース)という選手に憧れて野球を始めました。

児玉 幼稚園の時の友達が野球を始める時に一緒にやらないかと誘われて始めました。

――早大野球部を選んだ理由を教えてください

杉浦 とにかく早実という学校に行きたくて。野球も強くて勉強も頑張っていて、かつ斎藤佑樹さん(平23教卒=現北海道日本ハムファイターズ)という方が全国制覇したのを見ていて、小学生ながらこういうレベルの高い人たちと一緒にやりたいなと思いました。それと、とても自主性を重んじる学校なので、こういうところに入ってしっかり自分で自分をコントロールして成長していきたいなと思って早実を目指しました。

結城 高校はもともと早稲田摂陵高校にいく気はありませんでしたが、受験の結果で行くことになりました。高校3年生まではずっと大学は国公立を目指して勉強しようと思っていましたが、野球部の監督が早稲田の出身で、その人の考え方だったり、早稲田の野球の素晴らしさを聞いて、自分もぜひその野球部に入って野球を続けたいなと思って高校3年生の時に進学を決めました。

児玉 杉浦と同じで、小学校の時の駒大苫小牧と早稲田実業の試合を見て、早稲田のかっこよさ、泥臭さに憧れを持っていて、大学受験をするときに早稲田に入りたいと思いました。高校の最初の方は大学で野球をするつもりはありませんでしたが、友達のお兄さんが早稲田で野球をやっていて、早慶戦を見にいった時に、自分もこのユニフォームを着て神宮でプレーしたいなと思ったので、早稲田大学の野球部に入りたいなと思いました。

――杉浦さんは早実高を卒業後、大学の野球部に入ろうと決めた理由は何ですか

杉浦 最後の夏にとても悔しい思いをしたので。キャッチャーで一番いい背番号をもらいましたが、最後の試合に出られなくて、ライバルで今も同期の小掛(雄太、文構4=東京・早実)がエラーをして負けました(笑)。自分は出られなかったのが本当に悔しくて。甲子園出たらパッとやめようと思っていましたが、全然そうもいかなくて。絶対大学でレギュラーとってやるんだという思いになったので、続ける選択をしました。

「気迫を、自分たちが最後までやり抜くんだ、というものを見せる」(杉浦)

――今年のチームの印象を教えてください

杉浦 強いですよ。強いです。新チーム当初から走塁とか守備にこだわってやっています。去年は打撃を売りにしていたチームでしたが、打撃って本当に水物で、いくら前評判の高いチームでも打てない時はあります。自分たちには打撃キャラの選手もいなかったので、走塁・盗塁の技術をOBの方に教えてもらいに行ったりとか、とにかく守備、キャッチボールの一球からノックの一球から、守備でミスのないチームを目指そうとやってきたので強いと思います。

結城 同じになりますが、強いなと思っています。特にピッチャーは、早川(隆久主将、スポ4=千葉・木更津総合)が試合で頼もしいのはもちろんですが、練習から率先してガンガン練習しますし、それに引っ張られて他の選手も練習をしっかりやっています。試合でも、ピッチャーがダメな時は野手が打ってくれたりして、本当に心強い打線だなと思っています。投打がかみ合うチームだなと思っています。

児玉 リーダーがしっかりしているチームだなと思います。新人監督の杉浦もそうですし、主務の豊嶋(健太郎、スポ4=愛知・南山)やキャプテンの早川、副キャプテンの吉澤(一翔、スポ4=大阪桐蔭)と瀧澤(虎太朗、スポ4=山梨学院)、内野手リーダーの金子(銀佑、教育4=東京・早実)がとても機能してやってくれているので、そこは強い点かなと思います。

――では今年の新人チームの印象はいかがですか

杉浦 1年生は戦力的にかなり強いのではないかと思いますね。甲子園経験者や、早実出身者も上手い人が多いですし、一般受験もかなり豊作かな。2年生が夜とかに負けじと頑張っている様子が見受けられるので、切磋琢磨(せっさたくま)できています。自分の1個下の占部(晃太朗、教3=早稲田佐賀)も頑張って、チームをどうしようかというのを毎日コーチと話しながらやっているので、漠然としていますが、いい新人だなと思います。

児玉 必死に一生懸命頑張っている印象が一番強いです。

結城 ピッチャーに関しては、1年生と個人で面談をやりましたが、それぞれ「早川さんのようになりたい」や、「今西さん(拓弥、スポ4=広島・広陵)のようにチームから頼られる存在になりたい」など4年生を目標にして、目標にする選手の練習を聞く貪欲さもあります。それぞれが目標を持って、4年生の時にどうなりたいかをしっかり持っているので、来年再来年と楽しみです。

――今季の注目選手や、学生コーチの皆さんから見て成長の著しい選手をあげてください

杉浦 それ考えてきました(笑)。4年生全員に注目してほしいと思いますが、中でも一番力が伸びてきたなと思うのが真中(直樹、教4=埼玉・早大本庄)です。今熊田(任洋、スポ1=愛知・東邦)がレギュラーで出ていますが、練習で一箇所バッティングをやるにしても、必ずヒットを打って、練習試合の与えられたチャンスでも想像以上のものを見せてきたりとか、ショートでもサードでもどこでも守れる選手なので、スーパーサブというか。自分が良い結果を出しているにもかかわらずレギュラーになれなくても、ベンチ内でしっかり熊田のサポートもしていますし、そういったところが4年生になって頼もしくなったなと思っています。絶対にあいつにはチャンスが回ってくると思います。

児玉 西垣(雅矢、スポ3=兵庫・報徳学園)です。先発の徳山(壮磨、スポ3=大阪桐蔭)と早川が最初から思いっきりいけるのは、後ろに西垣という長いイニング投げることができる存在がいるからだと思っています。スタンドで見ていても、コントロールもとても安心して見ていられます。西垣っていうのはとても重要な人物だなと思っています。

結城 ピッチャーではありませんが、自分は吉澤に期待しています。本人もずっと結果が出なくて悔しい思いをして、必死で一人で夜にバットを振ったり、自粛期間も一人でずっと真面目にひたすら練習していました。最後はいいところでチャンスが回ってきたら絶対に打ってくれると思っているので、吉澤には期待しています。

――1・2年生で期待の選手がいたら教えてください

結城 一度ベンチには入りましたが、加藤(孝太郎、人1=茨城・下妻一)という1年生のピッチャーがいて、素質はすごいなと、入ってきて初めてブルペン見た時から、受けたキャッチャーなどもみんな思っています。柔らかさといいますか、しなやかさもありますし、1年生ながら完成度もとても高いと思っていて、3年生くらいになったらエース格として活躍してほしいと思いながら見ています。

――加藤選手はピッチングスタイルなどにおいて、どのような選手ですか

結城 まっすぐがとてもきれいで、変化球も器用です。とにかくコントロールが良いので、変化球をコースに投げわけて打ち取るという感じですね。球速があと5キロくらい伸びればすごいピッチャーになるかなと思っています。

――注目の下級生についてお二人の意見も聞かせてください

児玉 冨永(直宏、文2=東京・國學院久我山)です。知らないと思いますが(笑)。

杉浦 知らないやつでもいいの?(笑)

児玉 いいでしょ(笑)。1年生の頃から神宮で野球をやりたいという気持ちを強く持っていて、『自分は今どの辺りで、何が足りないですか』というのを頻繁に自分に聞いてきて、努力してきている姿を見ていますし、どんどん上手くなっていく姿を見ていて、新人戦で活躍をしてくれると思っているので、自分は冨永を期待しています。

――選手としてはどのような特徴のある選手ですか

児玉 足も速いですしバッティングも良いので、打順の中にいたらありがたい選手かなと思います。

――杉浦さんはいかがですか

杉浦 坂巻(拓明、法1=東京・早実)を推しますね。1年生で、早実でレギュラーでもなかったと思いますが、右バッターとしてのパンチ力というのはレベルが違うなと思います。今も練習で打っていましたが。守備では本当にダメなのですが、バッティングが良いです。中身も面白いやつなので、個人的には期待しています。不思議ちゃんです。

――今名簿を確認したのですが、体重が90キロあるのですね

杉浦 ゴツゴツですね(笑)。

――ここまでの秋季リーグ戦の試合を振り返っていかがですか

杉浦 手応えしかないです。先ほども話しましたが、今とても打線が繋がっていると思いますが、自分たちが目指している野球はピッチャーを軸に守り勝って、走塁で少ないチャンスで隙をついて1対0や2対1で勝つというものです。今は勝ちゲームは結構差が離れている状況だと思いますが、そういった接戦がこれから先絶対にやってくるので、そこで春の法政と慶應に負けた悔しさを絶対に晴らす自信があります。

児玉 スタンドで見ていて、先制点を取られても負ける気がしないというのが今年の秋のチームです。先発のメンバーもそうですが、後から出てくる代打陣や守備固め、中継ぎ投手が、「こいつだったら何かやってくれるんじゃないか」という選手がとても多くて、負ける気がしないチームだと思います。

結城 ピッチャーに関していうと、明治の2戦目と法政の2戦目はピッチャーが崩れてしまって、法政の2戦目は相手にリードされる展開でした。野手に助けてもらって2試合落とさずにこられたので、残りの試合はピッチャーが抑えて勝つというのを毎回試合前に言っています。選手も気合いが入っているので、絶対抑えてくれると思っています。

――約3年半、共に戦ってきた同期はどのような存在ですか

杉浦 サポート役に回ってくれる八田(敦司、人4=岡山・金光学園)、中島、あとは腕がもげるまでバッピ(バッティングピッチャー)をしてくれる中野(克哉、商4=早稲田佐賀)っていうピッチャーがいたり、春が終わってからスタッフになってくれた白木(大輔、スポ4=大阪・早稲田摂稜)っていう人だったり、本当にチームが優勝するために自分がどう動くかっていうのを考えて、全員がやってくれているなという4年生です。

――いい学年ですね

杉浦 それはもう、頑張ったよな、俺たち(笑)。ミーティングして、ミーティングして….。チャランポランな人も多かったのですが、学生スタッフでうまくつくり上げられたなと思いますね。

――1年生の時よりも学年としてまとまってきた感じですか

杉浦 はい。全然(違います)。

――秋季リーグ戦優勝に向けて、学生コーチの皆さんが練習などで今一番意識していることは何ですか

杉浦 とにかく故障者を出さないこと、それに努めています。春までは雰囲気緩いなと感じることや締めなきゃなと思うところもたくさんありましたが、春を終えてからの練習では、自分が何も言わなくてもみんなからバントにしても一球のキャッチボールにしても真剣にやっているなというふうに見えているので、何も言わずにこられているなと思っています。練習というよりはとにかくくだらないことで故障者を出さないということを意識しています。

結城 ピッチャーはピッチングをする際に投げるボールの高さを毎回言うようにしています。中にはゴム紐をストライクゾーンの一番下に引っ張ってたてて、そこを狙って投げるということをやっているピッチャーもいます。高さに関しては口うるさく言っています。そこを選手には意識するように言っています。

児玉 4年生全員で自分たちのできることを探しながらやっていくというチームの雰囲気になっているので、自分は自分のできることを全力で、ノックだったり、データ班などとのコミュニケーションであったり、視野を広く持って練習に取り組んでいます。

――最後に、優勝に向けての意気込みを教えて下さい

結城 自分にできることはピッチャーのサポートなので、 試合前に選手を鼓舞するとか、登板前にリラックスさせるとか、できることはなんでもやりたいと思っているので、そういう行動が少しでも勝利に繋がったらいいと思って今後もやっていきたいと思います。

児玉 自分は2人とは違ってベンチには入れないので、それまでの練習をどれだけいいものにできるかということで、しっかりいい練習をつくり上げていきたいなと思います。

杉浦 応援してくれる応援部であったり、早稲田ファンの人たちに気迫を、自分たちが最後までやり抜くんだ、というものを見せる、その一心です。絶対に負けません。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤桃子、山田流之介)

◆杉浦啓斗(すぎうら・けいと)

1998(平10)年5月5日生まれ。179センチ。東京・早実高出身。文化構想学部4年。新人監督。新型コロナウイルスの感染拡大により、練習メニューの大幅な変更を余儀なくされた早大野球部。その中で中心となってチームを支えたのが杉浦新人監督です。対談では「4年生(について語った)部分、使っといてください」とお茶目な部分も見せてくれました。もちろん使わせていただきました!

◆結城壮一朗(ゆうき・そういちろう)

1998(平10)年7月7日生まれ。171センチ。大阪・早稲田摂陵高出身。教育学部4年。投手コーチ。対談の中でも出てきましたが、慶大の西澤俊哉学生スタッフと小・中学生の頃からの付き合いだという結城投手コーチ。コーチ就任の際に相談を持ちかける程の仲ですが、試合となれば話は別です。ライバルとなった旧友を倒し、10季ぶりの優勝を狙います!

◆児玉魁音(こだま・かいと)

1998(平10)年12月24日生まれ。168センチ。千葉・芝浦工大柏高出身。商学部4年。学生コーチ。杉浦新人監督に誘われてコーチへと転身した児玉学生コーチ。「杉浦にお願いされたからやったというのもある」と言うように、2人は固い絆で結ばれています。試合中、早大側のスタンドにただならぬオーラを感じたら、それは気を送っている児玉コーチかもしれません。