歴史ある早大水泳部競泳陣を、エースとしてけん引してきた幌村尚(スポ4=兵庫・西脇工)。最後の出場となる日本学生選手権(インカレ)では200メートルバタフライ3連覇を目指し挑んだものの2位。一方、3年ぶりの優勝を懸けて臨んだ男子4×100メ…

 歴史ある早大水泳部競泳陣を、エースとしてけん引してきた幌村尚(スポ4=兵庫・西脇工)。最後の出場となる日本学生選手権(インカレ)では200メートルバタフライ3連覇を目指し挑んだものの2位。一方、3年ぶりの優勝を懸けて臨んだ男子4×100メートルメドレーリレーでは、好タイムを記録しチームを栄冠に導きました。悔しさも喜びも噛み締めた今大会を糧に、東京五輪へ向けた次のステップへと歩む幌村にお話を伺いました。

※この取材は10月14日にリモートで行われたものです。

「そこで気持ちを切らしてはダメだなと」


200メートルバタフライの3連覇は叶わなかったが見事2位表彰台に上がった

--インカレを振り返ってみていかがでしたか

 最後のインカレでやっぱり個人種目は優勝したかったというのがすごくあったんですけど、なかなかうまくいかなくて。200でも2番でその時点で気持ちはかなりしんどかったんですけど、次の日に100メートルとリレーがあったのでしっかり切り替えて。100メートルも自己ベストに近いタイムでは泳げたんですけど、結果は4番で。でも個人の決勝を泳いだ1時間後にリレーの決勝があったので、そこで気持ちを切らしてはダメだなと思って最後の最後でリレーで優勝できたので本当に良かったなと思います。

--早大の水泳部のエースとされてきた中で、チームを泳ぎで引っ張らなくてはならないという気持ちもあったのかなと思いますが、ご自身ではどう考えていましたか

 最上級生として、そうやってエースと言ってくれる後輩たちもいて、その中でその役割をしっかり果たさなければならないかなと思っていたんですけど、個人種目が全然ダメで。でも最後の最後で最上級生として3日目の最終種目のリレーで優勝を持ち帰って、早大は良い勢いに乗れたんじゃないかなと思います。

--総合3位という結果についてはどう受け止めていますか

 一応男子の最低限の目標が総合3位だったので、そこは最低限クリアできたかなと思うんですけど、3日目終わった時点では2位だったり、1位と30点差くらいで本当に優勝を狙える位置にいたので、全ての選手が予定通りの点数とかをとっていればなくはなかったんじゃないかなと。僕も含めて結果がダメだった種目もあったので、2位や優勝も取れていたのではないかと思うと後悔もあるんですけど、最低限自分たちができることはしたので来年以降後輩たちに託せたんじゃないかなと思います。

--個人の種目について伺います。まず200メートルバタフライ(2バタ)についてですが、泳いだのは久しぶりでしたか

 インカレの2・3週間くらい前に埼玉で大会があって、そこが本当に半年ぶりくらいの2バタで。それでもやっぱり200を泳ぐ、1日2本を泳ぐのはインカレが本当に久しぶりだったので、僕自身も体力的にも大丈夫なのかなと思う部分もあって、それでも前半から積極的に行って、勝ちに行こうとしたレース展開だったんですけど、最後ちょっとやっぱりスタミナ不足でバテてしまったというのがあったので、そこは新たに来シーズンの課題になるんじゃないかなと思います。

--浅羽さんが久しぶりに200メートルを泳いでみて、試合だとやっぱり後半身体が重くなって動かなくなってくるということをすごく感じたとおっしゃっていたのですが、幌村さんも試合だからこそだなと感じたことはありましたか

 結構練習では良い感じにトレーニングができていて
思ったより大丈夫なんじゃないかなと思っていたんですけど、やっぱり試合になると練習の疲労度とはまた別だったり、試合独特の後半にくる疲れだったりがあって、そういう疲れを感じること自体久しぶりというのもあって、これから試合が増えてくるのでそこは次に生かしていければいいかなと思います。

--決勝では1分56秒16というタイムで2位でしたが、この結果についてはどう感じていますか

 順位はやっぱり優勝を狙っていて、タイムも55秒台を出したいと思っていたので、タイム順位ともに全然ダメだったんですけど、最低限五輪の派遣標準は切れていたのでそこは良かったんじゃないかと思います。

--100メートルバタフライ(1バタ)は52秒12で4位でしたが、いかがでしたか

 タイム自体はそんなに悪くもないと思いますし、一方で51秒台を狙っていたのでそのあたりはちょっと。去年のインカレも52秒1とかで51秒の壁がなかなか遠いなというのを実感しました。順位の4番というのも、1・2位の選手とは0秒3くらい開いていたんですけど、3位の選手とは0秒02の差だったので、そこはタッチが合わなかったりという自分の技術不足で最後に競り勝つというのが、うまくできなかったというのもあったんじゃないかなと思います。

--幌村さんの泳ぎはすごく精密である印象がありますが、コロナなどもあった中で、泳ぎをしっかり作り込んで大会に臨めたという気持ちはありましたか

 自粛期間で泳げていない期間があって、感覚面だったり技術面だったり、そのあたりが鈍っていたところもあったんですけど、約2カ月で少しずつ戻ってきたんじゃないかなとは思います。やっぱり綺麗に良いフォームで泳ぐというのを、今季の課題の一つにしていて普段からそういうところを意識して練習はしていました。


美しい泳ぎが持ち味の幌村

「本当に嬉しかった」

--個人種目では思うような順位を取れなかった中での、メリレの優勝についてはどのように受け止めていますか

 最後4泳の伊東選手(隼汰、社3=東京・早大学院)がタッチした瞬間、本当に嬉しくて。ここ2年連続で優勝を逃して悔しい思いをしてきて、そういうのもあったからこそ本当に今年優勝できて良かったです。僕は1年生のときにリレーの優勝を経験していたんですけど、それ以外の今年のメリレのメンバーはまだ優勝したことがなくて。やっぱり他の人にも優勝を味わってほしいと思っていたので嬉しかったですね。

--やっぱり昨年と同じメンバーで泳いで優勝できたというのは、適切な表現ではないんですけど、エモいですよね(笑)

 そうですね、同じメンバーで優勝できてエモいなと思いました(笑)


メドレーリレーは昨年と同じメンバーで優勝を果たした(左から2人目が幌村)

--勝てそうという気持ちは事前にどこまでありましたか

 本当にどの大学とも接戦になるかなと思っていて。僕たちはどちらかといえば後半のバタフライ、自由形であげてくる感じを想定していて、実際のレースもその通りだったかなと思っていて。2泳までは近大と1秒以上差があって、その後僕がどれだけ詰められるかという感じで、僕はできる最低限のことはできたかなと。最後4泳の伊東選手が絶対に1位で帰ってくるという風に思っていたので、思っていたレース展開通りになったかなと思います。

--伊東さんは、幌村さんから引き継ぎで飛び込んだ時にはこれはもう勝てるという風に思ったと言っていました

 僕が近大ともう0秒2、3くらいの差で引き継いだので、そうなれば隼汰は絶対やってくれると思っていたので、僕たちもこれはあるなという風には思っていました。

--他のお三方はメドレーリレーの優勝のMVPとして幌村さんを挙げていましたが、幌村さんがあえて1人素晴らしかったメンバーを選ぶとしたらどなたですか

 楓(平河、とか隼汰もすごく良くて、あの2人は安定感もあって、あのくらいのタイムくらいで来るだろうなどと思っていて、彼らなりの役目・仕事を果たしてくれました。でもあえて選ぶとしたら僕は丸山(優稀、法4=埼玉・大宮)かなと思います。やっぱり4年生で丸山はすごく緊張していて、本番で力を発揮しきれないというんですかね、結構不安なところもあって、去年もちょっと緊張していて思うようにリレーのタイムが上がらなかったりというのがあったんですけど、今年は自己ベストとほぼ同じようなタイムで来てくれて、チームに勢いを与えてくれたんじゃないかなと思います。

--ちなみにリレーの引き継ぎの51秒48という幌村さんのタイムはいかがでしたか

 周りからしたらどうか分からないんですけど、僕自身は今までのリレーで1番速いタイムだったので、大体個人のタイム51秒1から0秒7くらいあげられたので、良かったんじゃないかなと思っていて。その日4本目だったんですよ、その日に100メートルバタフライを泳ぐのは。個人の結果もあまり良くなくて、身体的にも気持ち的にもしんどかったんですけど、諦めないで、前半から積極的に泳げたので良かったんじゃないかなと思います。

--優勝インタビューも感極まった様子が非常に印象的でした

 本当に嬉しくて、色んな思いが溢れてきたっていう感じでした。

「みんなが絶対にやるんだと」

--今年のチーム全体の雰囲気としてはいかがでしたか

 僕の大学で見たり感じたりしてきた中で、1番良かったんじゃないかなと思っていて、本当にみんなが絶対にやるんだという気持ちもあったり、流星(今井主将、スポ4=愛知・豊川)のために、とか流星が泳げなかった分も絶対やってやるんだという気持ちが、色んな後輩も含めて全員から伝わってきて、良い雰囲気でやれていたんじゃないかと思います。

--そういった中で、今回同期と最後に泳ぐ場で、出場した4年生はA決勝に進みました

 流星は最後インカレを泳ぐことができなかったんですけど、それ以外の4年生は全員決勝に残って。僕は最終日種目がなかったので、サポートをやっていて、応援をずっとしていたりして。他の同期が活躍しているところを客席から見ていて、感動するものもありましたし、福岡(清流、スポ4=大阪・桃山学院)が2秒ベストくらいで最後A決勝に残っていて、こいつすごいなっていう風に思いました。

--そうやって同期が卒業、引退していきますが、幌村さんは今後も現役を続けますね。どのように練習していく予定ですか

 僕も大学の水泳部としての活動はこれで終わりで、今後は来年の4月の五輪選考会に向けてひたすら練習を頑張っていく予定です。

--最後に今回のインカレで良かったところと課題点があれば教えてください

 200メートルに比べて100メートルはまだ良かったので、スピードとかパワーとかもついてきたのではないかと思うので、本来200メートルが専門なので、100メートルのスピードを200メートルにもつなげてあとは後半持久力をつけていければ良い感じなんじゃないかなと思います。

--ありがとうございました!

(取材・編集 青柳香穂)

◆幌村尚(ほろむら・なお)

兵庫・西脇工高出身。スポーツ科学部4年。2020年日本学生選手権では100メートルバタフライは52秒12で4位、200メートルバタフライは1分56秒16で2位。優勝を果たした男子メドレーリレーでは第3泳者としてバタフライを泳ぎました。東京五輪出場を目指す今後の戦いにも注目です!