今年度、早大水泳部第115代主将を務めた今井流星主将(スポ4=愛知・豊川)。自身の日本学生選手権(インカレ)出場は逃しましたが、「みんなをモチベートするというところではすごく長けていた主将」(丸山優稀、法4=埼玉・大宮)としてチームをまと…

 今年度、早大水泳部第115代主将を務めた今井流星主将(スポ4=愛知・豊川)。自身の日本学生選手権(インカレ)出場は逃しましたが、「みんなをモチベートするというところではすごく長けていた主将」(丸山優稀、法4=埼玉・大宮)としてチームをまとめ上げました。加えて同級生である4年生から後輩の1年生まで、「流星さんのために」という意識でも結びつき、男子総合3位という結果につながりました。そんな素晴らしいチームを作った今井主将に、インカレについて伺いました。

※この取材は10月11日にリモートで行われたものです。

「幸せな主将だったなと思います」


今シーズンスローガン『超越』

――今回のインカレを振り返っていかがですか

 自粛期間が明けて、天皇杯(インカレ)総合優勝を目標に練習をしてきました。男子については、もともと3位を目標にやっていたところを日本一に切り替えて、そこに向かって全員が一丸となって戦えたかなと思います。僕個人のレースはなかったので、いろいろとサポートであったり、レースの送り出しや終わってからの声掛けなどを行う中で、(出場選手が)本当にチームのために泳いでいるのだなと。自分の結果以上に、チームの結果のために貪欲に泳いでくれていると感じました。

――総合3位という結果については、どのように考えていますか

 昨年の結果を超えられたことは、まず良かったと思います。当初掲げていた3位という目標も達成できたので、その点も良かったと思います。ただ、早慶戦などの結果も踏まえると、総合優勝を目指せると全員が思っていたので、最後の8継(男子4×200メートルフリーリレー)も含め、そこは悔しい部分もありました。

――昨年の結果を超えられた要因となる選手や、期待以上の結果を収めてくれた選手をあげるとしたらどなたですか

 2年生の簑田(圭太、スポ2=大阪・太成学院高)は200(男子200メートル自由形)でしっかりベストを出してくれました。惜しくも9位で決勝には行けなかったのですが、リレーでもいい活躍をしてくれたので。あとはもちろん1年生の田中大寛(スポ1=大分・別府翔青)です。その2人が8継を引っ張ってくれたと思いますし、大寛については200(男子200メートル自由形)も優勝しているので、200の優勝がメドレーリレーの優勝にもつながったのかなと。この2人が勢いをつけてくれたと思います。

――オーダーに関して、今井選手は何か関わっていますか

 関わっていないこともないですが、メドレーリレーについては一番速い人がいくというのが基本です。8継についてもいろいろ泳ぐメンバーがいて悩ましいところもあったと思うのですが、200の結果としてはやっぱり蓑田と田中がいいかなと。あとはもう4年生の意地に任せる、というかたちになったと思います。

――大会2日目時点での順位は芳しくありませんでしたが、主将として何か声掛けなどはしましたか

 4継(4×100メートルフリーリレー)も優勝を狙える位置にいて、大混戦の中で勝ち切れなかったというところにあると思うのですが、今野(太介、スポ2=山形・羽黒)であったり他のメンバーも本当に優勝目指してやってくれたので、悔し涙を流している姿を見て、できる限り次の日いい結果に波を戻せるようにしようと思いました。出場種目が終わった選手も、切り替えてサポートに移るメンバーもいたので、そういったメンバーから次の日頑張りやすい環境をつくることは意識しました。

――「大会に出場できない主将をなるべく上の順位へ」という雰囲気がチームにあったと思いますが、ご自身ではどのように思っていましたか

 恥ずかしいですが、僕を「日本一の主将にする」というようなことを言ってもらえて、幸せな主将だったなと思います。僕のためではなくても、自分の結果のためにやってくれるとそれが僕のためにもなりますし、チームのためにもなりますし。結果で貢献できない分、声掛けであったり意識を高めるというところは、もう本当にそこだけに力を入れました。

「結束力という部分では一番良かったと思います」


女子主将を務めた小峯(右)と

――今大会に出場された同級生の方々は見ていていかがでしたか

 3年半、ほぼ全員けがをしたり精神面で苦しんだ学生もいましたが、最後のインカレで誰一人欠けず、清流(福岡、スポ4=大阪・桃山学院) も最後はA決勝に残りましたし、竹内(智哉、スポ4=神奈川・湘南工大付) 、幌村(尚、スポ4=兵庫・西脇工) は早稲田のエースといわれながら、今大会は悔しい思いをしたのですが、リレーなどで結果以上にチームを引っ張っていてくれたと思います。あの2人は本当に悔しいと思いますが、僕としては感謝しかないです。

――特に竹内選手はモチベーション維持などにも悩んでいたとお聞きしました

 昨年はけがでインカレに出場できず、出れるようになったらコロナの状況になってということで。彼自身もこういう競技人生の終わり方は想像していなかったと思いますし、苦しい部分も多かったと思います。でもそれ以上にチームのために最後8継も泳いでくれたので、智哉がチームに与えてくれた影響は大きかったですし、苦しみながら頑張っていた姿を、特に他の後輩は目に焼き付けてくれていると思います。

――幌村選手は東京五輪を狙っていた中での延期ということで、インカレに対して気持ちを切り替えにくかったと思います。近くで見ていていかがだったでしょうか

 五輪は彼が一番の目標としていたところだったと思うので、そこからインカレに切り替えることは難しかったと思います。でもそんな中でも、僕が見ていて、インカレ3連覇や昨年2位で悔しい思いをしたメドレーリレー(4×100メートルメドレーリレー)に対するリベンジに燃えてやってくれていたと思います。メドレーリレーに関しては「優勝するぞ」と尚がチームを引っ張ってくれましたし、実際引き継ぎのタイムも速かったので、インカレに対して気持ちを切り替えてやってくれたと思います。

――総合順位に比べ、個人成績は物足りない印象もありました。その中、田中選手が200メートル自由形で優勝しましたがそこについてはいかがでしたか

 優勝種目数は昨年とあまり変わりがないような気もするのですが、どうなんでしょうね。数年前は金メダルを量産していたという話ですが・・・。大寛が3日目に、1年生ながら自己ベストを大幅に更新して200で優勝したので、同期や先輩にも火が付いて、あれをきっかけにいい流れができたのかなと思っています。初めてのインカレで緊張などもあったと思うのですが、本当によくやってくれたな思います。

――妹である今井月選手(東洋大)のレースは見ますか

 僕は見ますね。握手とかもしますよ。仲良いので(笑)。50(50メートル自由形)と2個メ(200メートル個人メドレー)に出ていたのですが、平泳ぎで出るより気持ちとして楽な部分もあると思うので、楽しそうにやっていました。妹に関しては、大学に入って平泳ぎや水泳のことで悩んでいたので、インカレで楽しそうにやっていて良かったです。最後メダルを掛けて貰ったのですが、その時は結構うれしかったですね(笑)。

――大会期間もお話はされましたか

 はい。東洋大学と早稲田大学が隣の控え室だったので、いるなという感じですね(笑)。レースに向かう時は声を掛けたり握手をしたりしました。

――今年はチームの雰囲気が良いように感じましたが、「もっとこうしておけば良かった」という点はありますか

 1年生と接する期間が短かったというのはあります。4、5、6月はチームとしての活動がなく、7月からの3カ月間でなんとかインカレで戦えるチームをつくろうと思っていました。もしその3カ月があったらというのはわからないですが、僕としては結構いいチームをつくったなという感じです(笑)。主将だったので勝手にそう思ってしまうだけかもしれませんが、僕がいた4年間の中で、結束力という部分では一番良かったと思います。

――新型コロナウイルスで大変だったからこそでしょうか

 泳げなかった期間を経て7月にみんな戻ってきて、練習や寮生活ができる喜びをおそらく感じていたと思います。僕個人としては早慶戦でレギュラーを外れて、そこからサポートに回っていたのであまり泳いでなかったのですが、サポートしていく中で、今まであまり話してこなかった後輩や女子選手とコミュニケーションを取る時間が増えて、横のつながりもですが、縦の結束力やチーム力の向上につながったと思います。

――新主将である村上雅弥(スポ3=香川・坂出) 選手にはどのような主将になってほしいですか

 僕はオンとオフを切り替えて結構チョけた感じだったのですが、雅弥は真面目なタイプです。雅弥だけではなく3年生はしっかりしてくれているので、心配はいらないと思います。雅弥に関しては神経質な部分もあると思うので、そこまで堅く考えずに同期を頼りながらやってほしいです。僕らのチームは僕らのチームでとてもいいチームをつくれたと思うのですが、それをプレッシャーに感じているという3年生も結構いたので。全く別の色というか、雅弥たちの代にはその代にしか出せない色があるので、3年生のカラーを前面に押し出して、3年生たちしかつくれないチームをつくってほしいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 青柳香穂、飯塚茜)

◆今井流星(いまい・ひかる)

愛知・豊川高出身。スポーツ科学部4年。2020年日本学生選手権は大会出場を逃したものの、主将としての役割をしっかりと果たし、チームは男子総合3位という結果を得ました。