例年なら、この時期は全日本大学対抗王座決定試合(王座)を戦っていたはずだった。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた今年は、関東大学リーグと王座が中止。選手たちにとっては、早慶対抗試合(早慶戦)が1年ぶりの団体戦であった。日本一の…

 例年なら、この時期は全日本大学対抗王座決定試合(王座)を戦っていたはずだった。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた今年は、関東大学リーグと王座が中止。選手たちにとっては、早慶対抗試合(早慶戦)が1年ぶりの団体戦であった。日本一の座を懸けて昨年は最後まで争った宿敵との対戦に、「早慶戦の開催が決まってからは、目標に向かって徐々に一つになることができた」(木元風哉主将、社4=埼玉・早大本庄)と選手たちは一丸となって臨んだ。

ダブルス2の木元(左)・田中組の勝利が大きかった

 学年こそ3つ違うが、同郷で入学前から親交もあった千頭昇平(スポ4=愛知・誉)、池田朋弥(スポ1=愛知・誉)組がダブルス3に。そして2年時からペアを組み、全日本学生選手権(インカレ)、全日本学生室内選手権優勝の経歴を持つ木元、田中優之介副将(スポ4=埼玉・秀明英光)組がダブルス2。ダブルス1には、白石光(スポ2=千葉・秀明八千代)・丹下将太(教2=東京・早実)組が入った。ジュニア時代からペアを組んできた白石と丹下の2人であったが、団体戦では初めてのダブルスの出番であった。連携面において大きく遅れを取っていた訳ではなかったが、甘く入った球を相手ペアは見逃さず。接戦の中でファーストセットを落とすと、続くセカンドセットも相手に傾いた流れを引き戻すことができなかった。敗れたダブルス1と対称的な試合運びを見せたのが、ダブルス3の千頭・池田組であった。ファーストセット、セカンドセットともにブレイクのチャンスをしっかりとものにすると、相手に反撃の機会を与えない盤石の試合運びを見せた。
 団体戦の勝利を大きく引き寄せたのはダブルス2の木元、田中優組。ファーストセットをタイブレークの末に落としてしまい、続くセカンドセットも一進一退の展開に。またもタイブレークとなった。「相手は即席のペアで自分たちはずっと組んできていたので、修羅場を潜ってきた自信があったので、堂々と戦うことができました」(田中優)。セカンドセット途中から両隣のコートが試合を終え、勝負が大きく懸かった中での試合となったが、その中でも真価を発揮し、タイブレークを制した。続くファイナルセットも取り、早大はダブルスを勝ち越してシングスへ臨むこととなった。


シングルス2の白石は羽澤をストレートで下した

 続くシングルスでは、ダブルスで敗れた白石と丹下の2人が躍動。まずシングルス6の丹下が慶大のルーキー・林航平を相手に終始圧倒、6−3、6−2のストレートで勝利した。シングルス2の白石は羽澤慎治との対戦。昨年のリーグでは苦戦を強いられた相手であったが、この日はコート全体を効果的に使い、相手のミスを誘発させることができていた。ダブルスでの敗戦をしっかりと取り返し、団体戦勝利にあと1勝と迫った。そして団体戦勝利を決定させたのは、主将としてこの1年間部を束ねてきた木元であった。さらにシングルス3の田中優も昨年度高校総体優勝の藤原智也を相手に、圧巻のプレーを披露。4年生の主軸2人がダブルスに続いてシングルスでも勝利を収めた。シングルス1の千頭こそ、昨年のインカレ王者である今村昌倫に敗れたが、ダブルス2-1、シングルス5-1の計7-2で慶大を下した。

 今年のチームは、下級生の頃からチームを牽引してきた4年生が中心のチームであり、今回の試合でも、チームの『要』のポジションを担っていた。来年以降は4年生が抜けることで、大きな戦力ダウンになることが予測される。その中で期待したいのが、やはり白石と丹下の2人。王座15連覇、早慶戦45連覇の数字を伸ばしていくためには、2人が単複で多くの白星を持ち帰ってくることが大事となってくる。現4年生が早大の歴史をつなげてきたように、3年生以下の選手が新たな歴史をつくっていくことに期待したい。

(記事 大島悠希)

結果

〇早大 7―2 慶大

▽男子ダブルス
D1● 白石光・丹下将太 [5-7、2-6] 川島颯・羽澤慎治
D2○ 木元風哉・田中優之介 [6(3)-7、7-6(4)、6-1] 今村昌倫・白藤成
D3○ 千頭昇平・池田朋弥 [6-3、6-4] 田中隆輔・佐々木健吾


▽男子シングルス
S1● 千頭昇平 [0-6、4-6] 今村昌倫
S2○ 白石光 [6-2、6-4] 羽澤慎治
S3○ 田中優之介 [6-3、6-0] 藤原智也
S4○ 木元風哉 [6-2、6-3] 伊藤竹秋
S5○ 高畑里玖 [2-6、6-2、7-5] 白藤成
S6○ 丹下将太 [6-3、6-2] 林航平

※インタビューは10月14日に行われたものです。

コメント

木元風哉主将(社4=埼玉・早大本庄)

――早慶戦という最後の舞台に向けて、チームの調子はどうでしたか

チームとしては、開催が決まらない段階では正直チーム全体としてどこに向かっていけばいいのか、大丈夫なのかという不安がありました。早慶戦の開催が決まってからは、目標に向かって徐々に一つになることができたように感じました。

――チームとしてはうまく準備できましたか

そうですね。このような初めて経験する中では、下級生から上級生までできることを考えて、いい準備ができたと思います。

――団体戦の勝利を目指していく中で鍵となってくる選手は誰だと感じていましたか

やはり今年単複で出場した4年生が3人いた中で、僕も含めた4年がプレーで引っ張っていくということは、嶋﨑(徹夫監督、平元商卒=神奈川・桐蔭学園)さんも仰っていただいていました。初めて参戦する1年生もいるので、彼らが思いっきりプレーできるようにしていく部分はありました。

――勝負が懸かっていた中でのダブルスを振り返ると

恐らくセカンドセットから両隣のコートは終わっていたので、2ー1になるか、1ー2になるかという状況でした。もしここを落とすか落とさないかでは天と地ほどの差があると感じていたので、そこのプレッシャーを感じながらプレーはしていました。

――その中で、自身のプレーはどうでしたか

緊張しながらも。一球でも多く入れて、活路を見出せないかを考えながらやっていく中でセカンドセットを取ることができました。そこから徐々に勢いに乗れたかなと思います。

――自身のシングルスでの勝利で、団体戦の勝利を決めることになりましたが

まあそうですね。団体戦の勝ちを決めれたのはタイミングの部分もあると思うのですが、ここ勝てば決まりというラスト1本のところを感じながらプレーしていました。そこまでプレッシャーを感じすぎず、目の前の1ポイントを取るようにとベンチコーチからも言われていたので、勝つことに集中しました。

――主将として早慶戦45連覇を達成できたことに関して、率直な心境は

早慶戦を勝てたことは、正直ほっとしました。うれしい気持ちも当然ありますが、一安心の気持ちの方が強かったです。

――4年生は早慶戦で引退となりますが、同期にかける言葉はありますか

主務の藤井(竣介、商4=愛知・昭和)、副将の田中(優之介、スポ4=埼玉・秀明英光)とかは普段からサポートをしてもらったので、すごい感謝をしています。他の同期も早慶戦が近付くにつれて、広報活動や練習と、自分の気が付かない場面でサポートをしてくれたり、後輩の指導をしてくれた部分は多かったので、本当にありがとうと伝えたいです。そして早慶戦優勝の主将として自分を送り出してくれたことに関して、ありがとうと伝えたいです。

――関東学生トーナメント(春関)、全日本学生選手権(インカレ)に向けた目標を最後にお願いします

最後の大会になるので、そこまで気負わずに自分たちらしいプレーをしていけたらいいかなと思います。

田中優之介副将(スポ4=埼玉・秀明英光)

――今回の早慶戦はどのような意気込みで臨みましたか

今年はリーグ(関東大学リーグ)と王座(全日本学生大学対抗王座決定試合)がなくなり、最初で最後の団体戦ではあったのですが、自分自身が去年の王座で2敗と悔しい思いをしたので、その悔しさを晴らすことができました。その悔しさを晴らせればいいなと。まず勝つことだけに専念して、やろうと思いました。

――試合では悔しさを晴らすことはできましたか

そうですね。自分のパフォーマンスを出して勝つことができたので、悔しさを晴らすことはできたかなと思います!(笑)

――今年は試合がない状況が続きました。今回が久しぶりの実戦でしたが、ここまでどのようにメンタルを保ちましたか

コロナの影響で活動を自粛したり、活動が再開した後も何のために頑張っているのかなとも思いました。早慶戦をやると決まった当初も、コロナで先が見えない状況にモチベーションが下がる時もありました。去年の悔しさもありましたし、このチームでやれる最後の試合ということで、自分のモチベーションを上げました。後輩たちを鼓舞することもやってきました。

――木元選手との、ダブルスのペアリングはどうでしたか

最初はいい感じで出だしは良かったのですが、相手が来た時に自分が引き気味になって押される場面もあったのですが、途中踏ん張ることができました。正直、相手は即席のペアで自分たちはずっと組んできていたので、修羅場を潜ってきた自信があったので、堂々と戦うことができました。

――追い詰められた場面で緊張などはありましたか

すごい緊張はしたのですが。自分たち2人だけだと負けていたと思うので、後ろがすごい本気で応援してくれました。D3の千頭(昇平、スポ4=愛知・誉)や池田(スポ1=愛知・誉)も応援してくれて、声が響いてきました。白石(光、スポ2=千葉・秀明八千代)と丹下(将太、教2=東京・早実)も負けはしたのですが、彼らのエネルギーも感じたので、そういう面では踏ん張れたのではないかと思います。

――シングルス3では高校時代から実績のある藤原(智也)選手を圧倒しましたが、その部分どのように感じますか

ありがとうございます!(笑)そうですね。昨年の成績だとインターハイ、全日本室内優勝と勝ちに慣れている。実際に対戦したり、プレーを見たことはなかったのですが、勝ちに執着心がある、勝ち方を知っている選手だと思っていました。相手を上だと思ってチャレンジャーの気持ちで最後まで臨みました。勝っても負けても自分のテニスをやろうと思って、それが結果として表れたと思います。あとベンチコーチに小倉元主将(孝介、平29卒=神奈川・湘南工大付)が入ってくれてからゲームを落とさなかったので、やはり小倉元主将の偉大さを感じました!(笑)

――今後の試合に向けた意気込みをお願いします

早慶戦で引退にはなるのですが、春関にインカレとあるので、学生大会で一回もタイトルを取ったことがないのが春関なので、そこを最後に取ります。「俺全部取ったから」とイキリたいと思っているので、頑張りたいと思います。

千頭昇平(スポ4=愛知・誉)

――今回の早慶戦に向けて調子はどうでしたか

早慶戦を迎えるにあたり、4年生としては最初で最後のチームとしての試合だったので、気持ちは皆入っていたと思います。自分も気持ちは早慶戦に向けて懸けていました。

――ダブルスでは池田選手とのペアでしたが、ペアリングはどうでしたか

同じ県出身で親しみのある後輩なので、どのようなプレーをするか分かっていましたし仲も良かったので、最初で最後でしたが、いい思い出にはなりました。

――内容を振り返ると

池田は1年生で初めての団体戦だったので、伸び伸びとできるように普段の練習からコミュニケーションを取り、笑顔で話し合うことを繰り返してました。試合でもいいプレーが出るように、意識させていました。

――シングルスではシングルス1での出場でしたが、プレッシャーはありましたか

プレッシャーはそこまでなかったのですが、相手の今村(昌倫主将、慶大4年)選手はインカレを制したりと学生のトップをいく選手なので。彼にはいつのまにか追い抜かされて、自分が追う立場になったのですが、実際に試合をしたことで、こんなにも差が広がっているのかと思いました。今回感じたことは今後に活かせることかなと思います。

――ファーストセットからセカンドセットに向けて修正などはされましたか

そうですね。今村選手が他の人とは違って低いテンポでボールを打ってくるので、ラリーするのが難しかったです。自分から攻めていくように心掛けたら、うまくいきました。4ー3でブレークできそうだったのですが、ブレークすることができず負けてしまいました。

――早慶戦45連覇についてはどのように感じていますか

先輩からつながってきた早慶戦での勝利を自分たちの代でも途切らせなくてほっとしています。後輩たちにもこの連勝記録をつなげていってほしいです。

――今後出場する大会への意気込みをお願いします

補欠ではあるのですが全日本選手権があるので、そこに出られたら、そこに向けてしっかり準備します。自分はインカレからになるので、インカレでは今村選手にリベンジできたらなと思います。

白石光(スポ2=千葉・秀明八千代)、丹下将太(教2=東京・早実)

――どのような調整を早慶戦前にしてきましたか

白石 いつも以上にダブルスを重視した練習が多かったです。結果として負けはしましたが。今回はシングルスというよりもダブルスでした。今まではダブルスでの出番がなく、シングルスをメインに練習していました。ダブルス練習したよね!

丹下 ダブルスの練習は多かった。自分も単複で出て、初めての早慶戦ではありました。ダブルスのペアリングは直前まで決まらない部分もあったのですが、最終的に白石と組むことになりました。ジュニアの頃から組んでいたこともあって、組んできた期間は長かったので焦りはなかったです。

――ダブルス1として出るプレッシャーはありましたか

白石 ありましたね。ダブルスが初めてで、しかも早慶戦でダブルス1ということで相手も強く、プレッシャーはありました。相手の方が慣れている部分もあり、流れで押されてしまいました。

丹下 ダブルス1ということで、伝統もあり歴代強い選手がいて、絶対的に取らないといけないポジションではあるので、その点に関して緊張はしました。

――シングルスでは共に完勝しましたが

白石 ダブルスに負けてしまい、シングルスで取り返さないといけない思いは強かったです。相手はダブルスで対戦して、シングルスでも実力があって、去年のリーグと王座では勝っていますが、両方とは簡単にいかなかったので。今回は一回も相手に流れを持っていかせないようにプレーをすることはできたと思います。

丹下 まずダブルスを2ー1で折り返したのが大きかったです。もし2ー1で折り返せていなかったら、僕と白石に懸かっていたと思うので。プレッシャーの面では緊張しましたが、ガチガチになるほどではなかったです。あとは隣で白石も頑張っていたので。

――チームの軸であった4年生が抜けてしまいますが、そのことをどのように感じますか

白石 正直今年の4年生が主力が多くて、今回も田中(優之介副将、スポ4=秀明英光)さんと木元(風哉主将、社4=埼玉・早大本庄)さんで3本取ったおかげでダブルスの分も巻き返すことができましたし、シングルスも楽に戦えました。来年からは僕と丹下で3本取って、後輩たちに楽をさせたいです。王座に向かって頑張っていきたいです。

丹下 白石も言っていたように、今の4年生は戦略的にも要で、リーダーシップがある人も多く。大きな穴が今後空くので、そこを埋めれるように。今回早慶戦に出た中では自分たちが一番上の学年になるので、選手目線というか経験を後輩に伝えていく。引っ張っていきたと思います。

――今後の試合に向けた意気込みは

白石 全日本選手権は4度目になるですが、これまで全部一回戦負けしています。今年は32ドローとレベルが高いですが、頑張りたいと思います。インカレもあるので、インカレでは単複ともに最後まで残れるように頑張りたいと思います。

丹下 ダブルスはパスするとは思うのですが、インカレでは自分たちでも強いペアに勝てるように準備をしていきたいと思います。シングルスも新進で一度優勝しましたが、上位の選手は出ていなかったので。春関で優勝して、自分の強さを示せていけたらなと思います。