箱根駅伝予選会がいよいよ始まる。今年も46もの大学が「10」の出場枠を目指して激突する。立教大は創立150周年記念事業である「立教箱根駅伝 2024」に向けて、本戦出場を目指し、その準備を着々と推し進めている。昨年の予選会は23位だったが…

 箱根駅伝予選会がいよいよ始まる。今年も46もの大学が「10」の出場枠を目指して激突する。立教大は創立150周年記念事業である「立教箱根駅伝 2024」に向けて、本戦出場を目指し、その準備を着々と推し進めている。

昨年の予選会は23位だったが、今年は能力の高い1年生を獲得し、上野裕一郎監督も「どのくらいできるのか楽しみです」と声を弾ませる。そんな上野監督がとくに期待を寄せているのが、中山凜斗、関口絢太、内田賢利の1年生3人だ。立教大の「これから」を担う3人を直撃した。



昨年の箱根駅伝予選会は23位だった立教大。今年はどこまで順位を上げられるか

中山凜斗

---- 立教大への進学を決めた理由を教えてください。

「一番は上野監督に最初に声をかけてもらったことです。それに一から箱根駅伝を目指すということにも興味がありました。監督に『個々の選手の力を伸ばすので、自分のやりたい競技をやってもいい』と言われたのも大きいです。練習メニューもそれぞれ調整するということで、そうした環境でできるならやりたいと決断しました」

---- 出身が九州学院なら他大学からの勧誘もあったと思いますが。

「高校2年の時には、ほぼ立教に決めていました。自分は強豪校で先輩が強いと硬くなってしまって......でも立教なら、先輩と一緒に切磋琢磨していると感じましたし、それが自分に合っている環境だと思ったので、迷いはなかったです」

---- 夏合宿では練習後に、監督からTT(タイムトライアル)で勝負しようと言われていましたね。

「たまに言われてやるんですが、全然勝てないですね(笑)。一緒に走ると、こっちを向いてニヤニヤしてくるんですよ。監督は日本の陸上界を引っ張ってこられた方なので、尊敬しています。でも、もう選手ではなく監督じゃないですか。そこで勝たないと箱根駅伝もないと思っていますし、よく記事にも『選手よりも速い監督』と出るので、近いうちに勝ちたいと思っています」

---- 夏合宿はどのようなテーマで臨んだのですか。

「いかに距離を踏むかですね。夏にベースをつくっておかないと長い距離を走れないですし、上野監督からも『夏に距離を踏んでおけばハーフを走れるようになる』と言われたので、追い込みすぎず、練習に支障をきたさない程度に距離を踏んでいました」

---- いよいよ予選会です。距離はハーフですが狙っているタイムは。

「64分は切っていきたいです。他大学の力のある選手が積極的に出てくると思いますが、その時にオーバーペースでついていくのではなく、自分の力を知ったうえでついていける集団や選手を見極めて、15キロ過ぎからいけるところまでいって、少しでもタイムを縮めたいです」

---- ピーキングはしっかりできるほうですか。

「自分で言うのもなんですが、大きな大会ほど調子を合わせることができます。インターハイも都大路も自分なりに走れて、それが大きな自信になっています。高校の時の先生からは『レース前だからといって守りに入ってしまえば、そういう走りしかできなくなる』とよく言われました。とにかくリラックス状態で過ごし、守りに入らないよう、予選会も今までの大会のように気を抜かずに合わせていきます」

---- 大学4年間の目標を教えてください。

「箱根駅伝に出場することです。1年でも早く実現したいですね。個人的には1万mとハーフで結果を出したいです。高校の先輩である西田(壮志/東海大4年)さんはすごく活躍しているじゃないですか。自分が九州学院に入学した理由は、西田さんが高校3年の時に都大路の1区で先頭になって引っ張っているところを見て、カッコいいと思ったからです。その憧れの西田さんのように1万m、ハーフで活躍できる選手になりたいです」

---- では、箱根駅伝を走るとしたら5区ですね。

「いえ、上りが得意ではないので、5区だけは勘弁って感じです(笑)。5区、6区以外でしたら......2区なら大丈夫です」

関口絢太

---- 国学院久我山高校出身で、箱根を目指すなら国学院大という選択肢もあったと思います。なぜ立教大への進学を決めたのですか?

「自分は箱根常連校の強い大学にいって揉まれるより、自分で考えて、自由にのびのびできる環境のほうが強くなれると、高校の時に感じたんです。大学の4年間は長いので、どうやって有意義に過ごすのかを考えた時に自由度の大きいほうがいいですから。実際、上野監督と話をさせていただいた時にチームの方針や雰囲気などを聞いて、決めました」

---- 実際に立教大に来て、チームの印象は。

「先輩は優しく、同期のレベルも高く、寮もきれいで、すごくいい環境です。やはり監督がすごい選手でしたし、今でも自分たちより速い。一緒に走って息づかいとか、そういうところも見てくださるので、そこがほかの大学と一番違うところかなと思います」

---- それにしても、関口選手はきれいなフォームですね。

「大学に入ってから週3回補強をやるようになって、まだ半年ちょっとですけど、だいぶ変わったと思います。まだ課題はありますが、だいぶ軸が安定してきました。それに高校の時より腕の振りがよくなった。それはすごくいいことだと思っています」

---- 大きなストライドは武器になりますね。

「フォームは父に教えてもらいました。陸上選手ではなかったのですが、動画とかを見ながら『これはいいんじゃない』と話し合っていくなかで、今のフォームに落ち着いたんです。ストライドの大きさは武器ですけど、そのせいで疲れてくると腰が落ちてしまうのが欠点なので、そこはこれから修正していかないといけないところです」

---- 自分の性格をどう分析していますか?

「みんなから穏やかって言われますし、怒るところが想像できないとも(笑)。実際、怒ることはほとんどないです」

---- 練習では引っ張っていくタイプですか。

「いえ、どちらかというと甘えてしまうタイプですね。ポイントではほかの人が引っ張ってくれると、そこで自分の甘えが消えるので、落ちないで走ることができます。自分ひとりでは練習できるタイプではないので、仲間と一緒に協力して練習できる立教の環境は、本当にありがたいです」

---- 予選会での目標タイムは。

「個人的に狙っているタイムはありません。集団のなかでどれだけ余裕をもって、ラストを上げられるか。とにかく最初に突っ込んで入って、最後に落ちるというのが最悪なので、それだけは避けたいです」

---- 箱根を走るとしたら何区を走りたいですか。

「山上りが苦手で、スタートは緊張するので5区と1区......あとは下りの6区。この3つ以外の区間ならどこでもいいです。駅伝は追いたい気持ちになるので、そういう区間で力を発揮したいですね」

---- 箱根駅伝以外の個人的な目標は。

「箱根駅伝出場が一番の目標で、個人よりもまずはそれが最優先です。個人的には5000mからハーフまでやっていきたいと思います。自分のストロングポイントじゃ粘り強さだと思っているので、その強みを生かしたい。5000mの自己ベストを出した時はラストスパートでタイムを稼いだので、そのキレを磨いていけばほかの種目でも対応できると思っています」

内田賢利

---- 駒大高出身の内田選手は強豪の駒沢大ではなく、なぜ立教大を選んだのでしょうか。

「高校3年の春に立教大の練習会に参加させていただいて、その時に監督が常に選手と話したり、一緒に走ったり、監督と選手との間に壁がなくてすごくいいなと思ったんです。立教大は自分が求めていたチーム像だったので、すぐに決めました」

---- 実際に入学しての感想は。

「先輩後輩の間に厳しいルールがないですし、"1年の仕事"というのもない。各自がそれぞれやるというスタンスなので、競技に集中できますし、練習以外は気持ち的にゆとりがあって、本当にストレスのないチームで楽しいです」

---- 3000m障害がメインですか。

「高校(駒大高)の時、5000mに出たかったんですけど、そこまで力がなかったので3000m障害をやってみたらと言われて......。やってみるとタイムができたので、それで楽しくなって継続しています。自分の武器は3000m障害なので、それを大学でも磨きつつ、ロードにも挑戦していきたいと思っています」

---- 3000m障害の面白さは、どういうところにありますか。

「単純に速い人が勝つ種目ではなく、ハードリングとか、仕掛けとかが重要になってきます。持ちタイムに関係なく挑戦できるのが3000m障害の楽しいところだと思います。ただ、個人的には5000mや1万mもやりたい。スタミナをつけて、早く走れるようになりたいです」

---- 夏合宿のテーマはどういうものだったのですか。

「高校時代から15キロ以上のロングに苦手意識があったので、今回の夏合宿では距離を踏める体づくりと距離への耐性をつけるのが最大のテーマでした」

---- 自分のストロングポイントは?

「調子の波がないことです。レースで大きく外したことはないですし、逆にすごくはまったこともなく、アベレージで残すタイプ。あと、スタートから前のほうで仕掛けることができる、積極的に走ることができるのが自分のよさです。監督にも『そういうレースが好きだよ。あとは粘れればいいね』と(笑)」

---- 箱根予選会の目標タイムは?

「65分30秒を切って、65分台の前半を出せればと思っています。それを達成するには、15キロ以降が勝負になります。後半にスパートをかけられる脚づくりとスタミナが大事かなと。とにかく自分の走りをしっかりして、1秒でもタイムを削れるといいなと思います」

---- 箱根を走れるとしたら何区を希望しますか。

「自分は下りが好きなので、6区を走ってみたいです」

---- 箱根駅伝以外の個人の目標は?

「日本選手権で3000m障害に出場することです。5000mもやりたいですが、まだ3000mの走りを持続するのが難しいので、もっと筋力やスタミナをつけてからですね」

----立教大は、それを実現できる環境にあると。

「そうですね。監督は日本のトップで走られていましたが、陸上に対する考え方は自分と全然違うものがあります。たとえば、練習で1000mのインターバルのタイム設定で、自分だったら3分を守っていきたいんですよ。後半がきつくなるので。でも、監督は速い分にはいいからと、2分45秒にして走るんです。こういう考えで練習していたから、監督は強かったんだとあらためて思いましたし、これについていけば自分たちはもっと強くなると思います」

 立教大は中山、関口、内田のほかにも有望な1年生がいる。上級生も夏合宿を経て成長しており、増井大介主将のもとチームはまとまりを見せている。上野監督になって2度目の箱根予選会。3人の注目1年生ランナーが活躍するのか、それとも新鋭が飛び出してくるのか。はたして、どのくらい上位チームに食らいついていけるのか。立教大への期待が膨らむ。