専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第276回 今年の夏も、ものすごく暑かったですね。ゴルフでも、体力の消耗が激しく、ハーフラウンド(9ホール)で切り上げることが2度ほどありました。あまりの疲労感から、「後半、回る体…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第276回

 今年の夏も、ものすごく暑かったですね。ゴルフでも、体力の消耗が激しく、ハーフラウンド(9ホール)で切り上げることが2度ほどありました。あまりの疲労感から、「後半、回る体力がないから切り上げよう」となった次第です。もちろんそれは、同伴メンバーからそう言ってくることもあって、ケースバイケースなんですけどね。

 午前のラウンドが終わって、クーラーの効いたレストランで冷やし中華などを食べると、いと美味しい。体も頭もダラけちゃって、「後半、ラウンドするなんて無理」と思っちゃうんですな。結果、ハーフで切り上げてしまうわけです。プレーフィーは1ラウンド分、しっかり払うんですけどね......。

 ともあれ、体力のないオジさん世代にとっては、まっこと都合のいいハーフラウンドなんですが、世の中的にはあまり浸透していません。

 というわけで、今回はハーフランドがなぜ流行らないのかを考えつつ、ハーフラウンドを流行らせるための、新たな戦略を模索してみたいと思います。

「ハーフラウンドをしよう!」と、ゴルフ雑誌などでしきりに煽っていますが、"笛吹けど踊らず"状態になっている最大の理由はこれです。

(1)ゴルフは一日かけてやるもの
 日本のアマチュアゴルファーの多くは、都市部に住んでいて、郊外のゴルフ場に片道1、2時間かけて行くわけです。移動時間は片道平均90分としても、往復で3時間となります。

 移動時間に3時間費やして、プレーするのがハーフの2時間半なら、移動時間のほうが多くなってしまいます。それじゃあ、なんか割に合わない。せっかく一日かけてゴルフをやるなら、18ホールラウンドしたい――そう思うのが人情ってものでしょう。

 だから、ハーフラウンドはなかなか浸透しないのです。

 かつて、バブル全盛の頃は、朝7時半ぐらいにフライング気味にスタートし、強引にスループレーにして、午後には東京に戻って仕事した、なんて猛者もいました。

 でも今は、そこまでスケジュールを詰め込んで、何が楽しいの? ゴルフをやるなら丸一日潰して、ゆったりとやりましょうよ、という風潮になっています。

 それは、18ホール回ってから、さらに近くの健康ランドに寄るとか、あるいは都心に戻って食事会をするとか、ゴルフをする一日はレジャーに費やそう、ということ。今時は、そうした傾向が強いみたいです。

 現在の日本のゴルフ環境でハーフラウンドをするのは、特別な条件がそろっていない限りは難しいように思います。

 条件的に言えば、東京都だったら、若洲ゴルフリンクス(江東区)の午後ハーフとかでしょうか。午前中で仕事を切り上げて、14時ぐらいからサクッとハーフを回って、夜は食事会へ、といった芸当ができますからね。

 ただ現状は、ハーフゴルフを有意義に楽しめる環境が整っておらず、発展途上にあると言えます。

(2)ハーフラウンドができない事情
 そもそも18ホール以上あるゴルフ場で、ハーフラウンドプランは少ないです。夏場の薄暮プレーはよくありますが、朝9時からハーフプレーをさせる概念はゴルフ場にありません。

 通常ゴルフ場は、18ホールの営業ならアウトとインを、午前と午後に分けてプレーしてもらいます。午前8時~10時が、ゴルフ場営業のゴールデンタイムであって、そこに中途半端なハーフの客を入れるなんて、考えられないわけです。さほど儲からないですし。

 だから、10年ぐらい前、ハーフプレーのゴルフ場を探した時は、ほとんどありませんでした。特に冬場だったので、「夏場なら~」みたいな返事ばっかりでしたね。

「9ホールでもどうぞ」と言い出したのは、大手のゴルフチェーンです。コンピューターで予約を管理しているので、空いているところにお客さんを入れられる、という考えが生まれたからです。それで、たとえ「ハーフでもやりたい」というお客さんがいるのなら、とリクエストに応えるようになったのです。

(3)推奨するハーフラウンドとは
 たとえば、出張のついでに「(現地で)半日時間が空きそうだから、狙っていたゴルフ場でラウンドしたい」とかでしょうか。その時は貸しクラブ、貸し靴になると思いますが、それは仕方がありません。

 だいたい、ハーフラウンドのために、わざわざキャディーバックを宅急便で送ったりしませんからね。というか、それをやったら、"出張のついで"ではなく、"ゴルフのついでに出張"になってしまうじゃないですか。本末転倒です。

 まあでも、ハーフラウンド=ちょいゴルフとなるのですが、貸しクラブでは不完全燃焼になってしまう......。こうした際、貸しクラブにするか、自前のクラブにするかは、究極の選択です。

 もし自分ならどうするか? 最初からラウンドすると決めているなら、クラブ7本入りのセットを持っていくかな。

 個人的にアイアンは使わない派なので、貸しクラブではラウンドできませんからね。自前のクラブを持っていって、UT多めで臨みます。無論、出張先での仕事が長引いてしまったら、持っていき損になりますけど......。

(4)ワーケーションではあり
 ハーフプレーは注目されているものの、利用者が少ない。それはこれまで、絶妙な使い方がなかったからです。

 しかし今、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークが増え、加えてワーケーションが注目されています。

 ワーケーションとは、リゾート地などに行って、働きながらバケーションを楽しむことです。これを、Go Toトラベルキャンペーンと絡めて活用してみてはどうかと、全国各地で導入され始めました。

 そうして、ホテルに長期滞在し、リモートで仕事をしながら、午後3時ぐらいからホテルの付属施設のゴルフコースで9ホールだけラウンドする――そういうプランがもてはやされているそうです。

 実際、軽井沢のプリンスホテルでは、1日1回9ホールのプレーが無料という特典がついたワーケーション滞在プランが売り出されました。今後は、九州や沖縄などのリゾート地、観光地でも、Go Toトラベル&ワーケーションをセットにしたキャンペーンが繰り広げられることでしょう。

 そういった形で、関東でも伊豆や房総半島のリゾートでゴルフが楽しめるワーケーションプランがあってもいいと思うんですよ。そうなると、少しはハーフラウンドが流行るかもしれません。



ワーケーションとはいえ、こんなラウンドはちょっと勘弁してほしいですよね...。illustration by Hattori Motonobu

(5)滞在先にコースがあるのが理想
 昔、フィジーへ旅行に行ったのですが、旧イギリス領ということもあって、各ホテルには必ずゴルフのエッセンスが組み込まれていました。小さいパターコースや、9ホールのミドルコースが隣接されているところもありました。

 日本でも神奈川県の観音崎京急ホテルには、3ホールのシーサイドコースがあります。

 ワーケーションにおいては、このようにちょっとでもいいから、滞在先にゴルフ施設があるのが理想です。一日のなかで、朝から夕方まで仕事をして、夕方から散歩がてらにゴルフ。そして、夜はお酒を飲んで寝る。これで、お金を稼げたら、マジで天国です。

"スガノミクス"でカジノを含む統合型リゾート建設もいいけど、ハーフコースのあるホテルリゾートを造る、あるいは、既成のゴルフ場にロッジとリモートワーク施設を建てる、といったことをしてほしいですね。

 そのほうが手っ取り早いし、資金もかからないと思うんですが、いかがでしょうか。