スーパーエース・西田有志 がむしゃらバレーボールLIFE (14) バレーボール日本男子代表の若きエース、西田有志。これまでのバレー人生と現在の活動について追う人気連載の第14回は、コロナ禍での日本代表の活動について聞いた。2018年から日…

スーパーエース・西田有志 
がむしゃらバレーボールLIFE (14)

 バレーボール日本男子代表の若きエース、西田有志。これまでのバレー人生と現在の活動について追う人気連載の第14回は、コロナ禍での日本代表の活動について聞いた。



2018年から日本代表として活躍する西田

 4月に出された緊急事態宣言が解除されたのは5月下旬。前回の記事で、西田はステイホーム中に家事などにも集中して取り組んでいたことを伝えたが、自粛明けは徐々にコロナ禍以前の練習に戻していったという。

「ウェイトトレーニングやボール練習など、いつもどおりの練習ができるようになっていきました。自粛期間中もコンディションは落とさなかったですし、久しぶりのボール練習も、それほど違和感はなかったです」

 中断された代表合宿も6月下旬から再開され、一度に選手全員が集まるのではなく、段階的に少しずつ合流していく方法が取られた。今年度の合宿には、今年1月に春高バレーを制した京都東山高校のエース・高橋藍(日体大1年・アウトサイドヒッター)や、その前年に優勝した"洛南カルテット"のひとり、大塚達宣(早稲田大2年・アウトサイドヒッター)も招集された。

 西田が初めて代表に招集されたのは、ジェイテクトSTINGSの内定選手として活躍し、"高校生Vリーガー"として注目されるようになった2018年の4月のこと。その時は高校卒業間もない18歳で、昨年度もチーム内では最年少だった。今年に入って年下の選手が入ってきたことについては、「特別に意識することはないですよ」と笑顔で話した。

「年齢ではなく、代表選手のひとりとして見ていました。彼らが全日本に呼ばれるだけの強みがあることは理解しています。合宿ではうまくアピールできているように感じましたね」

 西田は高校時代、春高バレーに出場できなかったが、同大会でヒーローになった高橋や大塚に対して思うところはなかったのだろうか。

「代表に選ばれたのは春高での活躍もあってのことでしょうし、高校時代の経験値は僕よりも高いと思います。でも、そもそも僕は代表選手の中でそういった経験が一番少ないですから気にしていません。高校3年の時には、1年生だった(高橋)藍と練習試合をしたことがあって、すごくいい選手だったことを覚えています。今でも高校生同士なら意識する存在かもしれませんけど、立場が変わりましたし、僕の考え方も変わったのかなと思います」

 そういった新たな力とも切磋琢磨していくことになるが、西田がスタメンを確保したように思える日本代表のオポジットのポジションについても「確約されてない」と気を引き締めている。自身の成長のため、フィリップ・ブラン代表コーチからも言われている「ハイセット(サーブレシーブなどが乱れたあとの、ブロックがつくことを前提とした高いトス)の打ち方」など、細かい部分を意識して練習したという。

 例年なら、試合で同じような場面を経験することで感覚を掴んでいくのだろうが、今年度は海外チームとの試合を1度もすることなく代表合宿が終わった。それでも西田は「課せられたことをクリアして、それ以上のことをしていきたい」とストイックに自らを高めている。

「練習をたくさんすること、自分の体について考えることも『努力』だと思いますが、僕はその言葉をあまり使いたくないんです。バレーと向き合う時には、常に努力している状態でいることが普通だと思っているので」

 代表合宿は、普段は別々のチームに所属する選手たちとコミュニケーションが取れる貴重な機会だ。イタリアのセリエAでプレーする石川祐希(ミラノ)とは、今回の合宿では雑談をすることが多かったという。

「祐希さんとは『来年も代表に入ってオリンピックに出るには、この1年がすごく大事』といった話もしましたが、気持ちをリラックスさせる話題が多かったと思います。バレーから離れる期間が長かったこともあって、僕も息抜きをする大切さというか、切り替えの部分も大事にしていこうという意識があったのかもしれません」

 石川は代表合宿で西田を見て、「体がひと回り大きくなっていたのでビックリした」とコメント。自粛期間中のトレーニングの成果に驚いたようだ。

「(石川と)トレーニングを一緒にやった時などにも体の話はしましたね。筋肉の大きさを張り合っていたわけじゃないですよ(笑)。確かに体が大きくなりましたが、ただ重いウェイトを上げていたわけではなく、いろいろと考えながら鍛えた結果です。練習や試合をしていくうちに、もっとバレーに適した体になっていくと思います」

 また、代表のキャプテンを務める柳田将洋とは、「発信する大切さ」についても話したという。西田は柳田と合同インスタライブを実施するなど、積極的に情報を発信しているが、プレーするだけではない自分の役割を次のように話す。

「マサさんとは、メディアなどに露出が多いメンバーが、いろんなアクションをしていくことの大切さについて話しました。それはバレーボール界にとっても、自分自身の意識を高めるためにも必要だと。マサさんは本当にバレー界のことを考えていますね。他にもプレーのこと、バレー以外のこともたくさん話して、その内容を全部伝えようとしたら、何分かかるかわかりません(笑)」

 8月の頭には、無観客での紅白戦(3セットマッチ)が行なわれた。ケガなどによって出場できない選手もいたが、試合はインターネットでライブ配信され、多くのバレーファンが久しぶりの代表の試合に熱くなった。

 西田は石川と同じチームで臨み、第1セットを落としたものの続く2セットを取り返して勝利した。

「第1セットは空回りして、サーブ、スパイク、レシーブなどでミスが多かった。そのミスをなくそうと、第2セット以降は切り替えられたので勝ち越せたんだと思います。久しぶりの試合で気負いもあったんでしょうけど、やっぱりリラックスが大事ですね」
 
 新しいメンバーが入ったこともあり、モチベーションが高まった久々の試合。西田はそこでの改善点について、スパイクのコース幅、サーブでもっとコースを狙うことを挙げた。特に昨季のV.LEAGUEで「ベストサーバー」に輝いたサーブについては、「現時点でも『いい』と言ってくれる方もいますけど、満足できません。もっと突き詰めていきたいです」と貪欲だ。

 今季のV.LEAGUEは、しばらく観客数を制限(アリーナ収容客数の50%以下)しての試合になりそうだが、「無理をすると感染のリスクが上がってしまいますからね。多くの人に見に来てもらいたいですし、寂しさは当然ありますけど、今はバレーができることを前向きに考えています」と話す。代表合宿で新たな刺激と課題を見つけた西田は、10月17日の開幕に向けて気持ちを高めている。

(第15回につづく)