モーターボートから伸びるロープの末端にあるハンドルにつかまり、曳航されることで水面をボードで滑るウォータースポーツの「ウェイクボード」。近年は日本の湖などでも楽しむ人々が増えている。そのウェイクボードの世界でプロとして活躍する日本人に、手塚…

モーターボートから伸びるロープの末端にあるハンドルにつかまり、曳航されることで水面をボードで滑るウォータースポーツの「ウェイクボード」。近年は日本の湖などでも楽しむ人々が増えている。

そのウェイクボードの世界でプロとして活躍する日本人に、手塚翔太選手がいる。米国を拠点に世界各国の大会を転戦し、今年9月に徳島県三好市の池田湖で行われた第1回アジアウェイクボードチャンピオンシップでは初代アジア王者の栄冠を手にいれた。

2016シーズンを終え、帰国中の手塚選手にウェイクボードについて話を聞いた。

手塚翔太選手
---:手塚選手がウェイクボードを始めたきっかけを教えてください。

手塚翔太選手(以下、敬称略):父親が友だちと海でジェットスキーで遊び始めたのがきっかけです。父たちがハマっていって、そこに僕が遊び半分で始めた感じですね。8歳くらいのころです。

---:お父さんはどれくらいウェイクボードをやっていたのですか?手塚選手はそれまでウェイクボードという競技は知らなかった?

手塚:(父は)1、2年くらいです。知らなかったですね。

---:実際にやってみて、何が手塚さんにとって面白かったのでしょう?

手塚:水の上に立つスポーツなので、日常では味わえないことが一番かなと思います。水の上に立って、ボートに引っ張られて、波を使ってジャンプしたり技を見せたりするのが魅力かなと。

---:初めてやったとき、どうでした?

手塚:あんまり覚えてないですけど、正直(笑)。けど不思議な感覚だったいうのはあったと思いますね。

手塚翔太選手写真提供:Asian Wakeboard Association
---:他に何かスポーツはやっていましたか?

手塚:僕はスポーツ全般好きなのでアクションスポーツ、例えばスケートボードだったりスノーボードは今もやりますし、サッカーであったり野球であったり、その辺もちょっとやりますね。

---:ウェイクボードはどれくらいの速度で引っ張られますか?

手塚:けっこう遅いですよ。32キロとか…。体感はけっこう速いですけどね、実際。クルマとかで言ったら30キロなんて全然遅いですけど。

---:ウェイクボードの本場はどこですか?

手塚:アメリカですね。メッカは(フロリダ州の)オーランドです。

---:手塚選手は国内の大会に出て、それから渡米していますね。アメリカに行って何年になりますか?

手塚:今年で6年目ですね。

---:本場で感じたことは?

手塚:レベルの差というか、環境であったり、すべてにおいて日本はまだまだだなって。どのスポーツも同じだと思うんですけど、日本はまだまだというのは、今でも感じますね。

---:アメリカにプロ選手はどれくらいいるのでしょう?

手塚:アメリカは、「プロ」っていう選手権とかないんですよ。日本だとアマチュアの大会に出て、上位何人かがプロ資格をゲットできるとかなんですけど、アメリカは自分がプロだって言ったらプロ(笑)。そういう世界なので、どれくらいいるのかっていうのはわからないですね。

■ウェイクボードの大会は何を競う?

---:ワールドカップなどの大会では、競技の何を競っているのですか?

手塚:トリック(技)ですね。スノーボードのハーフパイプとかと似ていて、基本的には採点競技。加点ですね、減点ではなくて。技をやっていくにつれて、どんどんポイントが上がっていくいう感じです(※1)。

※1:例として日本ウェイクボード協会では演技を「完成度100点」「印象度100点」「組立100点」の各項目で3名の審判が採点し、3名のジャッジの平均点の3分の1を得点にする。

---:審判はどういうところをジャッジするのですか?

手塚:連盟や大会によってジャッジは違いますが、基本的には技の難易度であったり、綺麗さであったり。フィギュアスケートに似ていると思います。

手塚翔太選手写真提供:Asian Wakeboard Association
---:プロとして活動しようと思った年齢はいつ頃でしたか?

手塚:小学校4年生のときに、初めてアメリカの世界大会に年齢別のクラスで出たのですが、DVDで観ていた選手であったり、憧れっていうんですか、そういう選手たちがいっぱい出ている大会を目の当たりにして。けっこう衝撃的で、将来海外で大会に出たいなと思って。

そのステップということで日本の大会に出てプロになって、プロに勝ってアメリカに行くっていうステップを踏んだだけであって。あまり日本のプロになりたいという気持ちはなかったですね。

---:日本のプロ選手はどれくらいいますか?

手塚:けっこういますね。男女合わせて100人くらいいます。

---:年間で大会は何試合くらい参加されているんですか?

手塚:15~20戦くらいですかね。シーズンは3月~10月、11月ですね。(開催地の)半分くらいはアメリカの大会ですけどオーストラリアも行くし、今年だったら韓国とか。色んなところでありますね、ポルトガルであったり…。

---:一番印象に残っている大会は?

手塚:去年のX GAMESが一番嬉しかったですね。2位でした。

■トランポリンを使ってトレーニング

---:トレーニングは普段どういうことしていますか?

手塚:基本的にはウェイクボードの練習をアメリカいるときは毎日しています。ウェイクボードは「これをしたらうまくなる」っていういうのがないので、ジムトレーニング行きたい人は自分でジムトレーニングしてという感じですね。あとはトランポリンとかします。

---:トランポリンは何を鍛えるために?

手塚:たとえば、空中で回っている感じとかは似ているところがあるので。

---:なるほど。ウェイクボードは一番体のどの部分使いますか?

手塚:基本的に体の全体を使うスポーツ。手も使うし足も使いますけど、一番重要なのは体幹かなって思いますね。

手塚翔太選手
---:ウェイクボードのボードは、サーフィンのボードみたいな感じですか?

手塚:どちらかというとスノーボードの方が近いですね、サーフィンよりは。

---:じゃあ、サーフボードみたいなフィンはない?

手塚:フィンはあります。

---:競技は一試合どれくらいの時間がかかりますか?

手塚:けっこう短いですよ。時間っていうよりも場所で、ブイとブイの間を一往復するんですけど。基本的にはひとり5分くらいですかね。

---:一日で何回やるんですか?

手塚:大会やクラスによりますけど、僕たちのアメリカの大会だとだいたい3回。二日間に分けてやるんですけど初日が予選で、(翌日に)セミファイナル、ファイナルって。大会によっては一日目に1回しか滑らなくて、二日目に4回とかもありますね。

第1回アジア大会で優勝した手塚翔太選手(左)写真提供:Asian Wakeboard Association
■ウェイクボードはどこで体験できる?

---:引っ張られているときの気持ちってどんな感じですか?

手塚:最高ですね(笑)。

---:気持ち良さそうですよね。日本はどこに行けばウェイクボードを体験できますか?

手塚:日本は海外に比べて便利だと思うんですけど、湖が少ないじゃないですか。でも海でもやってますし、川でもやるんですけど、基本的にどこかしらの湖に行けばやってますよ。

---:手塚選手は国内は山中湖(山梨県)を拠点に活動していますよね?

手塚:ベースは山中湖ですね。日本で一番といっても過言ではないくらいウェイクボードのショップが山中湖中にある。山中湖に行けばできると思いますよ(※2)。

※2:山中湖周辺の各ショップはウェイクボード体験を3500円前後(15~20分程度)で実施している。

---:始めてすぐに水の上で立てるんですか?

手塚:できます。誰でも。まあ、始めはドライバーの腕もありますけど(笑)。

---:大会のときは自分でドライバーは選べますか?

手塚:選べないです。基本的には同じ人(1名か2名)が一日ずっとやっています。正直、誰が引っ張っても同じですけどね。まあ、ウェイクボードほどイコールコンディションではないスポーツってけっこう珍しい。

基本的に(大会ごとに)同じものっていったら自分のボードと持つハンドルのロープの長さ以外は全部違う。練習してるときだったり、環境であったり。船の種類も違えば、場所も水質も全部違うので、けっこう難しいスポーツではありますね。あと大会では練習とかがない。

---:ぶっつけ本番?

手塚:ぶっつけ本番ですね。逆にトップの選手とかは、初めの予選がファイナルのための練習だと思って滑っていますね。

手塚翔太選手写真提供:Asian Wakeboard Association
---:船のドライバーの技量は関係しますか?

手塚:最近の船は技術が上がりすぎて、クルマのクルーズコントロールとかと同じで、レバー下げたら勝手にスピード合わせてくれる。まっすぐ走れるか走れないかの問題だけです。スピードは関係ない。

---:大会は荒波や悪天候でもやりますか?

手塚:やりますね。よっぽどじゃない限り中止にはならないですね。

---:風の影響で左右されますよね?

手塚:思いっきり左右されますね。ウェイクボードは水の上を滑るので、風があると波が強くなっちゃう。できるだけ風がないところが最高ですね。

■目標はツアーチャンピオン

---:今シーズンを振り返ってみて、いかがでしたか?

手塚:ウェイクボードは年齢的に選手生命が短いスポーツ。若い子が最近すごい出てきてますし…。体の限界が来るまでは頑張ろうかなと思っています(笑)。12月で23歳なんですけど僕くらいでもう中堅の歳なので、そろそろ頑張らないとっていうところですね。

---:アメリカだと上の年齢の人はどれくらいなんでしょう?

手塚:大会に出ている選手は、30歳くらいが限界ですね。31、32とか。他のスポーツよりは(選手生命が)だいぶ短いです。

今は技術的なもののレベルが上がってきている。僕が小さい時よりも物品であったり船だったり、全部上がってきているので、正直体が動く子たちに比べるとキツいですね。僕もまだそんなに歳じゃないですけど…。

---:手塚さんにとって、ウェイクボードの一番の魅力は何ですか?

手塚:水の上を滑って、ジャンプできて…サーフィンとか(ウェイクボードのように)飛んで回ったりはできないですよね。滑ったりジャンプはできるけど。

手塚翔太選手写真提供:Asian Wakeboard Association
---:来シーズン、目標としている大会はありますか?

手塚:う~ん、ないですね(笑)。どれも同じなので正直。強いていうならツアーチャンピオンですね。

今年は足をケガしてしまって、シーズン的にはだいぶ休まなきゃいけなかった。冬シーズンに治して、来シーズンは思いっきりいければなと思っています。

---:ツアーは何戦くらいあるのでしょう?

手塚:一番大きいツアーだと8、9戦ですね。(トータルの)総合順位でチャンピオンを決めます。

---:今回、日本にはどれくらい滞在できますか?

手塚:4カ月か5カ月ですね。(冬の山中湖は寒いので)荒川で練習しています。3月からオーストラリアでシーズン初めの大会があるので、2月いっぱいまで日本にいます。4月からアメリカです。

---:今まで大会で一番綺麗な場所はどこでした?

手塚:メキシコのカンクンがよかったですね。大会でよかったというか、観光でですけど。(そのときは)海の、湾て言うんですか?お台場みたいな(周りを囲まれているような)ところでした。

ウェイクボードとしてはもってこいの場所ではなかったんですけど、綺麗でした。最高でしたね。人生で1回は行ったほうがいいですよ!

●手塚翔太(てづか しょうた)
1993年12月13日生まれ、静岡県御殿場市出身。レッドブルジャパン所属のプロウィエクボーダー。2015年8月にX GAMES MasterCraft Throwdownで銀メダルを獲得。2016年9月に徳島県で開催された第1回アジアウェイクボードチャンピオンシップで優勝した。好きな食べ物は寿司、しゃぶしゃぶ、フルーツ。

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

手塚翔太 参考画像(第1回アジア大会)写真提供:Asian Wakeboard Association

ウェイクボード第1回アジア大会で優勝した手塚翔太(左)写真提供:Asian Wakeboard Association

ウェイクボード第1回アジア大会で優勝した手塚翔太(左)写真提供:Asian Wakeboard Association

ウェイクボード第1回アジア大会で優勝した手塚翔太(左)写真提供:Asian Wakeboard Association

ウェイクボード第1回アジア大会で優勝した手塚翔太(左)写真提供:Asian Wakeboard Association

ウェイクボード第1回アジア大会で優勝した手塚翔太(中央)写真提供:Asian Wakeboard Association

ウェイクボード第1回アジア大会で優勝した手塚翔太(中央)写真提供:Asian Wakeboard Association

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行

プロウェイクボーダー・手塚翔太撮影:五味渕秀行