フリーと合計で世界歴代5位となる高得点をマークした鍵山優真 新型コロナウイルス禍の影響でイレギュラーなシーズンを迎えた今季のフィギュアスケート。国内のブロック大会が各地で行なわれているが、10月3日、4日に行なわれた関東選手権のシニア男子で…
フリーと合計で世界歴代5位となる高得点をマークした鍵山優真
新型コロナウイルス禍の影響でイレギュラーなシーズンを迎えた今季のフィギュアスケート。国内のブロック大会が各地で行なわれているが、10月3日、4日に行なわれた関東選手権のシニア男子で、四大陸選手権銅メダルの鍵山優真が鮮烈なシニアデビューを飾った。
この大会では、同じくシニア初参戦となった昨季のジュニアグランプリ(GP)ファイナル優勝の佐藤駿との同学年ライバル対決が注目を集めた。シニア男子は鍵山と佐藤の2人だけが出場する一騎打ちとなったが、ショートプログラム(SP)、フリーともに大きなミスをせず、圧巻の演技を見せた鍵山に軍配が上がった。
ジャンプ構成や演技内容も、ジュニアだった昨季と比べて格段にレベルアップしていた。
ローリー・ニコル氏が振り付けたSP『Vocussion』では、鍵山の新たな一面を披露。質の高い4回転のサルコーとトーループの2種類を跳ぶなど、GOE(出来栄え点)加点を稼いで、98.46点と100点の大台まであともう少しの高得点を出した。
また、フリーではジュニア時代から鍵山のプログラムを手がけている佐藤操氏が振り付けた『ロード・オブ・ザ・リング』を伸び伸びと滑った。フリーの188.75点と合計287.21点は、国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、現行ルールにおける自己ベストランキングでそれぞれ世界歴代5位相当の高得点だった。
世界歴代5位に入る得点についての感想を試合後のリモート会見で聞かれた17歳は、照れ笑いしながら「うれしいのかな(笑)。うれしいっちゃうれしいですけど、あまり(得点は)意識していなかった。昨日(3日)のSPでは90点以上を出すという点数の目標はあったんですけど、今回(のフリー)は本当に演技だけに集中しようとしていたので、合計得点も自己ベストを更新できたことはうれしいんですけど、そこまで意識はしていなかったですね」と答えた。
シニアに転向したばかりとはいえ、基礎がしっかりとしているジャンプとスピンを身につけている鍵山。先輩たちに見劣りしない安定感抜群の演技ができることが証明されたシニアデビュー戦だったと言っていいだろう。
国内大会と国際大会などの違いがあり、単純に比較することはできないが、合計得点の世界ランキングを見ると、1位が335.30点のネイサン・チェン(アメリカ)で、日本のエース・羽生結弦は322.59点の2位。平昌五輪銀メダルの宇野昌磨は289.12点の4位につけている。
ちなみに羽生と宇野のシニアデビュー戦を振り返ってみると、羽生は2010年のNHK杯で合計207.72点の4位。宇野は2015年USインターナショナルクラシックで合計207.41点の5位だった。ただし、いずれの得点も当時のルールで算出されたもので、現行ルールと一概に比べることができないのは言うまでもない。
世界ジュニア王者の実力をひっさげて挑んだ宇野は、GPシリーズ初参戦となったスケートアメリカでSP80.78点の4位から、フリーでは巻き返してトップの176.65点(当時の自己ベスト)をマークし、合計257.43点は2位。シニアGPデビュー戦でいきなり表彰台に上る快挙を見せ、衝撃のデビューを果たしている。
羽生と宇野の背中を追いかけている鍵山は、昨季の全日本選手権では2人と同じ土俵で戦い、堂々3位となったことは記憶に新しい。成長著しい17歳のホープが今季どれだけの実力をつけて、演技に磨きを掛けてくるのか。
関東選手権ではショートプログラムでも98.46点と高得点を叩き出した
関東選手権のフリーでは、サルコージャンプ2本を含む2種類の4回転を計3本成功させ、昨季まで苦手としていたトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を2本跳んだ。特筆すべきは、連続ジャンプとしては高難度の3回転ルッツ+3回転ループを構成に初めて組み込んで、見事に決めていたことだ。これからも4回転の種類を増やしたり、多彩な連続ジャンプを組み込んだりと、さらなる成長が期待できる。
シニア初陣となった関東選手権を鍵山はこう振り返った。
「初戦にしては、まあまあ動けたほうなんじゃないかな。でも、もうちょっとやれたかなと思いました。ジャンプに関しては、最後のステップアウト以外は言うことはない。ですけど、体力を持たすためにちょっと演技や動きが小さくなってしまって、ジャンプだけに集中してしまったところがあったので、そこは偏ったかなと思います。
練習から4回転サルコーは自信を持っていたので、今季からプログラムに初めて組み込みましたが、自信を持って跳びました。
今季の構成はこのままで行きます。これ以上4回転を増やしても、たぶんボロボロになる気がするので。欲を言ったらシーズン後半にもう1本4回転(フリップ)を入れたいなと思っているんですけど、加点のもらえるジャンプもスピンもできるようにし、もっと点数を伸ばしていけたらいいと思っています。
SPもフリーも演技の部分で課題が出てしまったので、(次戦の)東日本(選手権)までにもっとブラッシュアップして、演技もジャンプも安定させて、両方ともノーミスの演技をしたいです」
高得点に浮かれることなく、地に足をつけて意気込みを口にしていた。