ローラン・ギャロス2020が佳境に入っています。これまで過酷なコンディションに置かれていた今大会ですが、準々決勝以降は新しい屋根の下でクライマックスを迎えます。【トーナメント表】全仏OP男子シ…

ローラン・ギャロス2020が佳境に入っています。

これまで過酷なコンディションに置かれていた今大会ですが、準々決勝以降は新しい屋根の下でクライマックスを迎えます。【トーナメント表】全仏OP男子シングルス【現地の写真】「全仏オープン」会場の様子2【現地の写真】「全仏オープン」会場の様子3【現地の写真】ダバディさん

パンデミックの真っ只中にあらゆる不安を抱いているフランス人たちですが、それでもテニスを見る心の余裕はあるのでしょうか。答えは明らかに「ウイ!」です。連日テレビの前には大勢のファンが熱戦を見ています。あの若きユーゴ・ガストン選手の4回戦の視聴率は18%を記録しました。ラテン人とはいえ、早寝早起きのフランス人だって火曜日夜中の1時を過ぎてもナダル戦に夢中でした。癒しのレッドクレーですね。

全米を優勝したティーム選手は5時間の死闘の末に敗れ、勝者のシュワルツマン選手は水曜日の夜明け前まで寝付けなかったはずです。

火曜日、ナダルがセンターコートに登場したのはすでに夜10時過ぎでした。

グリム兄弟の寓話、シンデレラに例えたら、ラファはミッドナイトまで家(ホテル)に帰れず、まったくもカボチャに変貌してしまいました。結局は勝ったのですから、カボチャでも嬉しかったでしょうね。

ナイト・セッションはもはや今年の全仏オープンテニスの人気コンテンツです。鉄のウイングの形をしているあの美しい屋根は飛行士ローラン・ギャロスへのオマージュです。イルミネーションに合った現代建築ですね。しかし、雨と風の影響のないセンターコートばかりで試合をするナダルやジョコビッチはかなり有利です。太陽王ナダルにとって今年の寒いシャトリエはベルサイユに感じないでしょうが、それなりに快適なはずです。

一方、いつもの豪邸と違って、公式ホテルに滞在を強いられている世界一のジョコビッチ選手は部屋を狭く感じませんか。ルームサービスを頼んで、ベッドの中でナダル戦を見たのでしょうか。試合が終わる時間はエッフェル塔の消灯時間でした(※注釈エッフェル塔は毎日夜中の1時にイルミネーションが消えます)。

男子の2試合の間に挟まれた女子ベスト8のシフィオンテク対トレビザン戦、まさにシンデレラの接戦は大変興味深かったです。6月まで高校生だったポーランド人のシフィオンテクは将来のチャンピオンの意地を見せました。2018年のウィンブルドン・ジュニア優勝者の彼女は、偉大なポーランド系の先輩であるラドバンスカやウォズニアッキの跡を歩むのでしょうか。錦織選手に似た体の近くに打つ両手打ちバックハンドと、西岡選手を連想させる特有のフォアハンドは魅力的、まさに鬼才の雰囲気を醸し出します。準決勝の相手ポドロスカ選手はアルゼンチン出身のクレー・コーター、実は2016年以降、フランスの全ての出場試合に勝利し、今大会を含め18連勝中です。

男子は残りシード1、2、5、女子は残りシード4、7、が本命です。

それに、男女のダークホース3名。しかし、今年はどの数字も当てになりません。

最も信じる選手が勝つでしょうね。

まだまだ男女問わず波乱の香りがする前代未聞のローラン・ギャロス、どんなサプライズが起きるのでしょうか。過酷な環境の中でもクレーのスペシャリストたちに分があるはずです。

私は7歳からローラン・ギャロスの会場でこの全仏オープンテニスを見てきたのですが、今年は間違いなく最も不可思議な大会です。不可思議というニュアンスは、ハロウィンの時期であるこの10月にぴったりなワード……黒猫とコウモリ、子供たちにカボチャ、オレンジ色のセンターコートはTREATS OR TRICKSです!(悪戯されたくないならお菓子をちょうだい)最も賢い者の夢が叶いますように。

(フローラン・ダバディ)

※写真は「全仏オープン」会場の様子

(Photo by Florent Dabadie)