専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第275回 みなさん、ゴルフをする時はどんな雰囲気でやっていますか? あくまでも個人的な見解ですが、私は芸能ゴシップや夜の武勇伝などを語り合って、冗談を言いながらラウンドするのが好…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第275回

 みなさん、ゴルフをする時はどんな雰囲気でやっていますか?

 あくまでも個人的な見解ですが、私は芸能ゴシップや夜の武勇伝などを語り合って、冗談を言いながらラウンドするのが好きです。

 ですから、"アンクル・パー(=パーおじさん)と戦う"みたいな、寡黙で、崇高な精神を持っている方とは、ラウンドスタイルが違います。もちろんストイックな方とのラウンドとなれば、そのスタイルに合わせますが、さほど楽しくはないです。

 要するに、自分にとってのゴルフは、オヤジの道楽、レジャー扱いなんですね。

 とはいえ、私も最初は、崇高なスポーツとしてゴルフを始めました。それが"大人の遊び"へとたどり着くまでは、紆余曲折がありました。

 そこで今回は、ゴルフに対する自らの魂の変遷を綴りつつ、ラウンドにおける集中力とリックスの関係や、人それぞれ、どういった雰囲気でラウンドするのがいいのか、少し考えてみたいと思います。ラウンドの雰囲気については、状況や場面によって違いがあるので、さまざまなラウンドスタイルに分けて、考察してみましょう。

(1)競技ゴルフ
 クラブ競技は、アマチュアゴルファーの世界では一番シビアなラウンドと言えます。

 私もかつてはクラブに所属し、月例などに何度も参加しました。やはり、その時は無口でプレーしていました。同伴メンバーはたいがい年上なので、ラウンド前にこちらから進んで挨拶にいっていました。

 プレー中は、余計なことは言いません。3ホール目ぐらいにようやく「飛びますねぇ~」とか、おべんちゃらを言う自分がいたりして......。ちょっと情けない気もしましたが、もしサラリーマンで接待ゴルフをやっていたら、こんな感じ? と思いながらラウンドしていましたね。

 競技で打ち解けるのは、昼休みです。そこで、いろいろとお話をさせてもらうと、午後からのラウンドはすごく気持ちが楽になります。ルールやマナーでヘマをしないように心がければ、そこそこ楽しめます。

 メンバー生活も2年目ぐらいになると、知り合いも増えて、誰と組まされても顔見知りということがほとんど。程よい緊張感とリラックスが入り混じって、好成績を生むことも多々あります。それなりに楽しかった"青春の1ページ"でした。

(2)コンペでのゴルフ
 これは、みなさんもたくさん経験していると思います。競技ゴルフよりは緊張しません。ただ、同伴者の中で、誰が偉い人なのか、誰がキーマンか、あるいは誰がしゃしゃり出て場を仕切るのか、様子をみないといけません。

 黙って様子を見ていると、下手でお喋り好きなメガネ男が場を仕切っていたとか......って、オレのことかぁ~? いえいえ、違いますよ。仕切りたがる人は、大してうまくないことが多いという話です。

 うまい人ほど、寡黙です。これは、アマチュアゴルフ界のあるあるネタですね。

 とにかく、その下手で、お喋り好きがうまく仕切って、場を盛り上げてくれるなら、何ら問題ありません。でもそういう人は、おおよそ年長の偉そうな人に、おべっかを使うばかり。勝手に仕切る人って、そうやって上役の顔色をうかがっているだけ、という人が多いんですよね。

 結局、コンペで盛り上がるか、シラケるかは、幹事の組み合わせ次第です。昔、知り合いが幹事をしていたのに、自分と仲のいいメンバーは皆、幹事の組に入って、自分だけ知らない人ばかりの組に入れられ、つらい思いをしたことがあります。

 頭にきましたが、そんなことで抗議するのも大人気ないので、黙っておきました。けど、その幹事とはその後、一切口をきいていません。

 以来、幹事のことを知っているコンペであれば、ラウンド前に組み合わせを聞いて、苦手な人がいたら、組を変えてもらうことにしています。だって、楽しく回りたいじゃないですか。

 こうして、いつしか自らのゴルフの魂は"大人の遊び"という意識へ変わっていきます。

(3)下手で真面目人とのラウンド
 以前、ゴルフ雑誌のスタッフたちとラウンドする際、急きょ欠員が出て、それを補充する形で、その雑誌のアルバイトみたいな人が参加してきました。

 その人は、ものすごく真面目で、ゴルフは崇高なスポーツで、紳士のたしなみといった考えを持っていて、我々と一緒にラウンドした時に、カルチャーショックを受けたようでした。

 なにしろ、いきなり「昨日、キャバクラに行ってさぁ~」といった会話から始まって、延々と夜の与太話をしたあと、芸能界のゴシップネタへ移行。それも、事細かく、ここでは書けないようなゲスな話ばっかりしていましたからね。

 そんな話をずっと聞かされて、喜んでいるのか、迷惑なのか、よくわかりませんでしたが、そのバイトくんが衝撃を受けているのは明らかでした。そこで、これはちょっと刺激が強すぎたかなと思って、罪滅ぼしに少々レッスンをさせてもらいました。

「ドライバー以外は、フルショットしなくていい」とか、「すべてのクラブを短く持ってラウンドしてみては」とか、「番手で悩んだら、ひとつ番手を上げて軽く打ってみたら」など、的確なアドバイスをしたつもりでいました。そうして、その日はとりあえず、円満にラウンドを終えました。



下世話な話をしながらのラウンドは楽しいものですが、真面目にプレーする人には迷惑なのかもしれませんね...。illustration by Hattori Motonobu

 ところがその後、そのバイトくんはショックを受けたらしく、ラウンドはしばらく結構、ということに......。ラウンドを休むことになった本当の理由はわかりませんけど、少なからず悪影響を与えてしまったことは確かなようです。

 夢や希望を抱いてやって来たゴルフ出版界の実情は、下品な欲の塊みたいな連中の集まりだった――そう捉えられても、仕方がないですね......。

 個人的には、いかにリラックスしてラウンドすべきかを説いたつもりでしたが、逆効果だったようです。過去に、私がコンペで感じた疎外感を、そっくりそのまま、そのバイトくんが感じた可能性は大いにあります。

 いやぁ~、ゴルフのラウンドにおける組み合わせって、本当に難しいですね。

 一緒にラウンドする、そのパーティーごとに"小宇宙"があり、"支配者"がいるってことですから。人それぞれ、合う、合わない、ということが必ずあります。

 そして現在、多少景気もよくなり、私は安いゴルフ会員権でも買って、セミリタイヤ生活でも送ろうかと、ゴルフ会員権相場表とにらめっこする日々を送っています。

 けど、還暦を過ぎて、新しい環境に溶け込むのは、相当なエネルギーがいります。どこの倶楽部も、「いいこと8割、嫌なこと2割」くらいの比率で起こりますからね。

 まあでも、会員権相場表は、電車の時刻表を見て、旅行を妄想するようなもの。もしこのコースに入ったら、何時のクラブバスに乗って、何時にスタートして......とか、いろいろとスケジュールを組み立てるのも楽しいです。

 知らない世界に飛び込める財力と精神力が復活したら、メンバーライフを再開するかも。今は、しばし様子を見るとしますか。