この日、ボールに刻まれた文字は「GET THE CHANCE」――。まさしく、今季ようやく訪れた大きなチャンスを、原英莉花(21歳)がモノにした。 日本女子オープン(10月1日〜4日/福岡県、ザ・クラシックGC)の最終日、同い年の小祝さく…

 この日、ボールに刻まれた文字は「GET THE CHANCE」――。まさしく、今季ようやく訪れた大きなチャンスを、原英莉花(21歳)がモノにした。

 日本女子オープン(10月1日〜4日/福岡県、ザ・クラシックGC)の最終日、同い年の小祝さくら(22歳)に4打差をつけて単独首位でスタートした原英莉花は、通算16アンダーまで伸ばし、昨年6月のリゾートトラストレディス以来となるツアー2勝目を、初の国内メジャー制覇で飾った。

「(ボールの印字は)今年はチャンスをつかむぞ、ということで考えました(笑)。(師匠の)ジャンボ(尾崎)さんにはいつも、『2勝目! 2勝目!!』と言われていたので、それをナショナルオープンで達成できたということは、ちょっとだけ自信を持って報告にいけると思います」



「大器」原英莉花が国内メジャーの日本女子オープンを制した

 笹生優花(19歳)という新世代が台頭し、20歳の古江彩佳も勝利を挙げたといっても、現在の日本の女子ゴルフ界はつくづく、1998年度生まれの「黄金世代」が牽引していることを実感する大会となった。

 原はインスタートの初日、前半だけで7つのバーディーを奪うロケットスタートを見せた。2日目を終えて2位に浮上すると、決勝ラウンドに入ってからはトップに立って、小祝とのマッチレースを展開した。

「自分のプレーは、攻めることが基本であることを、この4日間で再確認しました。今日(最終日)、さくらちゃんとプレーして(彼女の)ピンに絡むショットを見て、私も果敢にピンを狙っていきました」

 初のメジャータイトルに向け、最終日は1番(パー5)の"おはようバーディー"からスタートし、小祝との差を5打差に広げた。

「今日はパッティングのフィーリングがあまりよくなくて、思うように身体が動かないと思っているなかで、自分のプレーに徹することだけを考えていました。思ったよりアドレナリンが出ていたのか、アイアンが飛んじゃって、距離感を合わせるのも難しくて......。

 でも(6番の)ボギーで楽しくなってきた(笑)。"ボギーは打ちたくない"という気持ちでプレーしていたんですけど、いざ打ってしまったら身体がうずうずしてきて、スイッチが入りました」

 圧巻だったのは、後半に入ってからの3連続バーディーだ。

 11番(パー4)はセカンドを1m以内に寄せ、12番ロングでは2打目を久しぶりにバッグに入れていた3Wでピン手前20ヤードの位置に。パターを手にしたカラーからの3打目は入らなかったものの、3mのバーディーパットを沈めた。そして、13番(パー3)はグリーンをわずかに外したところからチップイン。事実上、優勝を決めた一打だった。

 原は、小祝に4差、3位の上田桃子には8打差をつけて4日間の戦いを終えた。

「みなさんは『原英莉花はドライバー』だと言いますけど、私はアイアンが好き。ドライバーでしっかりフェアウェーに置いて、そこからのピンに絡めるショットを見てほしいです」

 日本女子オープンはアマチュア時代を含め、6年連続6度目の挑戦だった。

「中学生の頃から憧れの舞台だった。初めて出場した2015年はまぐれで予選会を通過したけれど、本戦は予選落ちでこんな(難しいセッティングの)舞台で勝てる日が来るのかと思っていた。(2016年大会、2017年大会と連覇した畑岡)奈紗ちゃんに対しても、すごいなと思うだけだった。

 でも今は、強い気持ちを持って練習に取り組めば、上には来られるんだというふうに感じています。(畑岡と)同じトロフィーを持っていることが誇りです。まだまだ差はあると思うけど、一歩一歩詰めていければいい」

 国内メジャーを勝った「黄金世代」は、4勝の畑岡、1勝の渋野に続いて3人目だ。さらに、原がこの大会で得たのは"日本一"の称号とともに、3年間のシード権である。畑岡や渋野のように、海外に目が向くのは自然かもしれない。

「大きいですね。海外で戦いたいという気持ちはある。(米女子ツアーの)QT挑戦など、向こうで戦うことに対しての悩む材料ができたことが幸せです」

 ツアー史上最長となる6761ヤードのコースを、原という大器は攻略した。それは、世界へ羽ばたく足がかりともなるはずだ。