10月4日、例年より1カ月ほど遅れて関東大学ラグビー(対抗戦&リーグ戦)が開幕する。対抗戦、リーグ戦ともにフォーマットは変わらず、各チームとも7試合の総当たり戦によって優勝が決定。そして対抗戦は8校中上位5校、リーグ戦は8校中上位3校が大…

 10月4日、例年より1カ月ほど遅れて関東大学ラグビー(対抗戦&リーグ戦)が開幕する。対抗戦、リーグ戦ともにフォーマットは変わらず、各チームとも7試合の総当たり戦によって優勝が決定。そして対抗戦は8校中上位5校、リーグ戦は8校中上位3校が大学選手権に駒を進める。



花園を沸かせた伊藤大祐は早稲田大に入部

 コロナ禍の影響で関東大学ラグビーの春季大会は行なわれなかったが、強豪校には将来の日本代表を担う可能性の高いルーキーたちが加入した。3年後もしくは7年後のラグビーワールドカップで桜のジャージーを担っているかもしれない期待の若手たちを紹介する。

 まずは、昨年対抗戦2位、大学選手権ではライバルの明治大を下して11シーズンぶりに優勝した早稲田大。昨年まではSO(スタンドオフ)岸岡智樹(クボタ)という絶対的な司令塔がいた。その穴を埋める選手として、相良南海夫監督から活躍を期待されているのがSO/CTB(センター)伊藤大祐だ。

 伊藤と言えば、昨年度の「花園」全国高校ラグビー大会でFB(フルバック)松島幸太朗(クレルモン)の出身校としても知られる桐蔭学園を初の単独優勝に導き、高校ラグビー界を席巻した選手だ。パス、ラン、キックの3拍子が揃っている逸材である。

 身長179cm体重85kg。小学校3年時には柔道で九州王者にもなった身体の強さもウリで、大学の寮生活でひと回り大きくなったという。今季は1年生で唯一、レギュラー組として練習に参加していた。

 相良監督が「いろんなポジションで試したい」と言うように、練習当初はインサイドCTBでプレーさせていたが、状況次第ではSOとしても出番がありそうだ。「与えられたポジションで試合に出て、いいプレーをしてレベルアップしていきたい!」(伊藤)。

 伊藤は高校の先輩である松島と、日本代表で一緒にプレーすることを夢見る。「日本代表になるには、まだ3つ、4つレベルを上げないといけない。一番の近道は早稲田大でレギュラーとなって、試合に出て優勝に貢献すること」と先を見据えた。

 明治大は昨年の対抗戦で全勝優勝。大学選手権の決勝では早稲田大に敗れたものの、今年も対抗戦の優勝候補であることは変わらない。

 今季の明治大では、6人ほどの1年生がAチームで練習している。そのなかでも光を放ち、開幕戦から10番を担いそうなのが東海大相模出身のSO池戸将太郎だ。正SOの山沢京平(4年)はケガのため、対抗戦後半からの出場が濃厚とされている。

 高校時代の池戸は同じ神奈川の桐蔭学園に県大会で負け続け、花園の舞台に立つことができなかった。桐蔭学園を率いた前出の伊藤と比べると、まだ全国的に無名かもしれない。ただ、元日本代表SH(スクラムハーフ)の田中澄憲監督は「パスのスキルが高くてポテンシャルがある」と目を細める。

 池戸本人も「ディフェンスやコンタクトは課題ですが、ゲームメイクや(パスの)スキルには自信があります。(山沢)京平さんがいない間に、チャンスをもらって、どれだけ自分を伸ばせるかチャレンジしたい」と意気込んでいる。

 慶應義塾大は昨年対抗戦5位に沈み、大学選手権の出場を逃してしまった。元日本代表WTB(ウィング)の栗原徹HC(ヘッドコーチ)体制も2年目を迎え、今シーズンこそは巻き返しを図っている。

 そんな慶應義塾大の中で、1年生ながらエースとして期待されているのが報徳学園出身のFB山田響だ。2年前、当時高校2年生で唯一ユースオリンピックのセブンズ日本代表に選出されて、銅メダルの獲得に貢献。さらには高校日本代表にも選出された逸材だ。

 身長174cm体重74kgとやや細身だが、スピードはもちろんのこと、ステップにもキレがあり、左足からのキックもうまい。ルーキーながら大きな戦力になりそうだ。高校時代には「将来はセブンズの日本代表になってオリンピックに出たい」とも話していた。慶應義塾大で1年生から活躍し、ひと回りもふた回りも成長することができるか注目したい。

 早・明・慶がそれぞれ戦力を増す一方、前評判を高めているのが帝京大だ。2017年度まで大学選手権9連覇を達成したが、昨年は対抗戦3位タイ。優勝を経験している4年生がBK陣に多いなか、今年はFW陣に多くの即戦力選手が入部した。

 その筆頭が、高校1年生から圧倒的な存在感を見せ、高校2年時に大阪桐蔭の初優勝に大きく貢献したFL(フランカー)奥井章仁だ。身長178cm体重102kgの体格を生かした突破力が大きな武器で、昨年度の高校日本代表ではキャプテンを務めたようにリーダーシップもある。

 岩出雅之監督は、将来的にはHO(フッカー)としてもプレーさせてみたい考えがあるようだ。大学の先輩である日本代表HOの堀江翔太や坂手淳史と同じく、FLやNo.8(ナンバーエイト)のポジションからHOに転向させる可能性も高いだろう。

 リーグ戦を戦う強豪校からも、今年注目のルーキーを紹介したい。

 今年の優勝候補の筆頭は、リーグ3連覇を目指す東海大だ。木村季由監督が「私がトンガにいって誘いました」という逸材は、この春に東海大福岡を卒業して東海大に入部したLO(ロック)アフ・オフィナとCTBポロメア・カタだ。

 大学から日本に来る留学生とは違い、高校で日本の文化やラグビーに慣れ親しんでいるので、戸惑うことなくチームにもフィットしている。とくに身長178cm体重100kgのポロメアは高校2年時から高校日本代表にも選ばれており、東海大ラグビーの突破役の起点となるだろう。

 ポロメアはCTBだけでなくSOやFBとしてプレーした経験があり、パスやキックのスキルも高い。将来は大学の先輩である日本代表WTBアタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼)のようなチームの中心を担う存在になりそうだ。

 そして最後、昨年リーグ戦2位と躍進した日本大にも期待の新人が入部した。「セブンズの神様」として世界的に知られる元フィジー代表セレヴィの息子ワイサレ・セレヴィだ。父親は170cmほどの身長だが、セレヴィは身長187cm体重93kgと恵まれた体格である。

 日本でのプレー経験もある父親が昨年、ラグビーワールドカップの観戦に訪れた際に日本大関係者と会ったことで、息子の入部がトントン拍子で決まったという。中野克己監督によれば「ストライドが大きく、足も速い。スキルが高いのでSOやFBでの起用を考えている」とのこと。ただ、夏合宿前に負傷したため、デビューは早くてもリーグ戦後半からになりそうだ。

 今年の大学ラグビーは短期決戦だけに、選手層が勝敗に直結してくることは間違いない。各大学にとってはルーキーの存在も大きな戦力となるだろう。

 近年のラグビー界では、20歳前後で世界的に活躍することも珍しくなくなった。2023年にフランスで開かれるラグビーワールドカップまで、あと3年しかない。

 大学生ルーキーたちが次のワールドカップに出場するには、今年から活躍することが必須だ。関東大学ラグビーで大暴れし、ジェイミー・ジョセフ日本代表HCに大いにアピールしてほしい。