専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第274回 今回は、前回の連載で少し触れた"ひとり予約システム"をピックアップ。その歴史や使い勝手について、考察したいと思います。 ひとり予約システムが登場したのは、今から10年前…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第274回
今回は、前回の連載で少し触れた"ひとり予約システム"をピックアップ。その歴史や使い勝手について、考察したいと思います。
ひとり予約システムが登場したのは、今から10年前ぐらいです。これは、以前からあったメンバーシップコースの「ひとりエントリー」と、どう違うのか。まずは、その違いから話していきましょう。
◆メンバーコースの「ひとりエントリー」
メンバーシップコースにおけるひとりエントリーとは、メンバーさんがひとりで行って、メンバー同士の組み合わせなどでラウンドできるシステムです。
週末、多くのメンバーシップコースでは、予約ナシでもプレーできる「メンバータイム」を設けています。その時間帯はメンバーのみが独占でき、メンバーさんたちが一緒に組んでプレーしています。これぞ、メンバーシップの醍醐味です。
あと、ひとりでふらっと行ってもプレーできるのは、河川敷のパブリックコースでしょうか。ひとりで来た人たちで組んだり、2サムの組に入れてもらったりして、ラウンドすることができます。
でもこれは、平日ならいい時間帯にプレーできますが、週末だと、朝早くから並ばなければいけなかったり、入れてもらえる組がなかったりする場合があります。そうなると、「やっぱりパブリックより、メンバーコースでゆっくり打ちたいなぁ~」と、アマチュアは憧れを抱くんですよね。
◆2サムプレーのブーム
バブル崩壊後、人気を博したのは、友の会や、予約サイトでも取り扱っている2サムプレーです。ゴルフ人口が減って、空いている平日は2サムでもラウンドできるようになったのです。
ただその当時、ひとりでの予約となると、まだまだ難しい状況でした。
以前、あるコースの友の会に入会を試みた際、「ひとりでエントリーできないのか?」と質問したことがあります。すると、「組み合わせのラウンドが前提となりますが、一緒にラウンドしてくれる相手が現れるかどうかわかりません。ですから、お受けできません」と返答されました。
基本的には、「他の組に混ざってラウンドするシステムはない」ということ。加えて、「お客さんのために、スタッフが一緒にラウンドすることもない。ましてや、ひとりだけでラウンドさせることもない」とのことで、「ひとりエントリーは無理」だと言われました。
これが、12、13年前の出来事です。こっちは、キャバクラとゴルフは"ひとり派"なので、納得できませんでしたね。
当時は、ちょうどメンバーをやめて、次なる遊び場を探していた頃でした。友の会ではそんな状況だったので、どうしたものかと思っていたのですが、そんな時、"ひとり予約システム"に出会いました。
ひとりで予約できるシステムを『1人予約ランド』と言い、バリューゴルフという会社が運営しています。以前、その会社の方を取材して、お話をうかがったことがあります。
最初は、ニッチなマーケットの寄せ集めだったとか。そして、私のような"ひとり好き"の客が「他にも絶対にいるから、試してみませんか?」と、コース側にアプローチしたと言います。
そこで、コース側が半信半疑で組数を確保し、エントリーを待つことに。そうしたら、ぼちぼちお客さんが集まり出して、「これはイケる!」となった次第だそうです。
ひとつのゴルフ場で、せいぜい2、3組の営業にしかなりません。けど、それが毎日となると、結構な収益になるんですね。それで、他の各コースも興味を抱いて、同システムを導入するコースが徐々に増え、今や全国的に展開されています。
現在、登録コースは北海道から沖縄まで広がって、1000を超えています。運営会社も2016年に東証マザーズに株式を上場しました。昨年の売り上げは、約57億円。堂々たるものです。
では、ひとり予約のシステムはどうなっているのか?
まず使用者は、バリューゴルフ運営の『1人予約ランド』に登録をします(無料)。登録事項に自分の年齢や住所などを記して、自分の好きなアバターを選びます。あとは、登録されているコースから行きたいコースを選んでエントリーするだけです。
ここで、予約のコツなどを少し伝授したいと思います。
(1)確実にラウンドしたい場合
ひとり予約のラウンド確定は、プレー前日の夕方です。ですから、4人空いている予約欄に申し込むと、プレーが確定しない恐れがあります。ひとりでラウンドさせてくれるコースは、ほとんどありませんからね。
そうならないためにも、すでにひとり、ふたりと知らないオジさんがエントリーしているところに、相席を申し込めばよろしいのです。多くの場合、ラウンド確定は「2人から」になっていますので、それで、ほぼ確実にラウンドできます。
見知らぬ方とのラウンドになりますが、わりと常連の方が多いので、みなさん愛想がよろしいです。別にプライベートを詮索されるようなこともなく、腕前もおおよそ予想の範囲内です。わりと楽しいですよ。
(2)コースによってバラツキがある予約日
ひとり予約が可能なコースは全国で1000もありますが、ひとり予約可能なスケジュールは、月に1組だったり、毎日5組受け付けていたり、コースによってさまざまです。
ですから、狙いは、頻繁にひとり予約のスケジュールを取っているコースです。そこに狙いを定めて予約をすれば、スケジュール枠内の好きな時間帯に予約ができるし、ラウンド決定の確率もグンと上がります。
(3)第二のホームコースに
関東だと栃木や茨城あたりで、平日毎週のように『1人予約ランド』を使ってラウンドをしているシニア層がたくさんいます。プレー代は、ランチ付きで3980円というのがざら。年金生活を送っていても、あまり負担にならない料金でプレーを楽しめるってものです。
ホームコースを持って月例に出ることなんて、もうだいぶ前に卒業した。今は健康のために淡々とラウンドし、いつか訪れるエージシュートのチャンスに備えたい――そういう人が実に多くいるんです。まさに"ひとり予約族"ですね。
新型コロナウイルス感染拡大で大騒ぎだった頃は、ひとり予約はフル稼働でした。だって、ひとりなら、会社の同僚や周囲の仲間などに、ゴルフをやっていることがバレないじゃないですか。おかげで、誰にも悟られず、ラウンドして家に帰る"隠れひとりゴルフ派"が、数カ月前には結構いたみたいですよ。
(4)名門クラブ&コンペ開催
『1人予約ランド』では、滅多にラウンドできない名門コースも、限定企画でラウンドできます。実は会員になっていると、そういう告知がメールなどに頻繁に送られてくるのです。
だから、前回の連載で紹介した予約サイトの高級版的な『プレミアムクラブ』に入っていなくても、事足りてしまいます。しかも、会費はタダ。すごいですよね。
さらに、コースの一部時間帯を借りて、コンペも開催されたりします。こういうのを見ると、"ビジターの反乱"というか"ビジターの逆襲"みたいなものを感じて、痛快に思えます。
ひとり旅をしながら、全国のゴルフ場を巡ってみるのもいいかもしれませんね。illustration by Hattori Motonobu
(5)日本全国「ゴルフぼっち旅」
『1人予約ランド』の登録コースは北海道から沖縄までありますから、ひとりで旅行しながら、「明日はどのコースを回ろうかな」と全国各地のコースを巡って、日本一周することも可能です。
これ、面白いじゃないですか。「日本100コースラウンドぼっち旅」みたいな企画をやってみてもいいかもしれませんね。
最近、お笑いタレントのヒロシがソロキャンプを扱った動画で再ブレイクしていますが、彼にゴルフを教えて、やってもらうのはどうでしょう? 道の駅などを活用し、車で寝泊まりしながら全国を回る感じですかね。ゴルフ場で風呂には入れますから、案外できるかも......。
そんなわけで、騙されたと思って一度、ひとり予約をしてラウンドしてみてください。新しい世界が開けますよ。