ジョージア、ウェールズ、フィジーと対戦した欧州ツアーを1勝2敗で終えた日本代表が最終戦を戦ったフランス北西部ブルターニュ地方のヴァンヌを後にした。 エディージャパン時代とはアプローチが異なる、アンストラクチャーに持ち込みながらトライを重ね…

 ジョージア、ウェールズ、フィジーと対戦した欧州ツアーを1勝2敗で終えた日本代表が最終戦を戦ったフランス北西部ブルターニュ地方のヴァンヌを後にした。
 エディージャパン時代とはアプローチが異なる、アンストラクチャーに持ち込みながらトライを重ねるスタイルでジョージアを下し、ウェールズと対等に渡り合っただけに、大きな期待感を抱かせたフィジー戦。終わってみれば、アンストラクチャーからのアタックの権化と言える南の島のフィジカルかつスキルフルなランナーたちの走りを止められずに計5トライを献上。日本も、後半11分に元NECのWTBネマニ・ナンドロに5つ目のトライを決められ(ゴール成功)、35-6と大きくリードされた後に反撃。FB松島幸太朗の2トライとFLマルジーン・イラウアの1トライで追い上げたものの、最終的には38-25で敗れた。

「とてもフラットだった」
 ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチはこの日のジャパンの動きをそう表現した。
 単調で精彩を欠く、というような日本語に置き換えてもいいだろう。
「立ち上がり、フラットになってしまった結果、自分たちのミスからフィジーに最初の何個かのトライを与えてしまった」
 前半15分、22分のフィジーのトライは精度を高めてきたはずのキックが意図通りには蹴られなかった結果、フィジーBKにインゴールを明け渡すかっこうに。
 同32分にはフィジーFLペゼリ・ヤトが危険なタックルによって退場処分となり(イエローカードの累積によりレッドカード)、15人対14人で戦い続けることになったが、その後も同36分、後半3分、11分とトライを重ねていったのはフィジーばかり。

 ことに、「しっかり気持ち入れて、もう一度、ひっくり返えそう。点数を取っていこう」と確認し、PR畠山健介→伊藤平一郎、FL布巻峻介→松橋周平という早めの選手交代もおこなったハーフタイム直後、日本ペースで敵陣深くまで攻め込みながら、パスミスで失ったボールを拾った相手の動きに反応できず、一気にトライまで持っていかれた後半3分のトライは致命傷になった。
「フィフティ・フィフティの状況ではボールに対して、ハングリーになるべきだった。選手たちは素早くポジションを取ろうとしたが、結果的にはスローになってしまった。サポートが欠けていた。同じページを向いていなかった。エネルギーの問題だったと思う。やることがわかっていてもエネルギーがなければ、チームメイトをサポートするのは難しい」(ジョセフHC)
 後半8分にPR仲谷聖史→東恩納寛太、LO梶川喬介→谷田部洸太郎、同13分にCTB立川理道→アマナキ・ロトアヘア、WTB山田章仁→カーン・ヘスケスと、いつも以上に早い選手交代でチームにエネルギーを注ぎ込む采配が生きた面もあって、前述どおり終盤連続3トライを重ねた。
「後半はトライを取れたし、いいキャラクターは出せた」
 そうジョセフHCが評価したとおり、欧州遠征3試合で計10個のトライを記録した新生ジャパンが決定力を持ち合わせているチームであることは間違いない。

 アンストラクチャーな状態でプレーすることが染み付いているフィジーに対して、短い準備期間しか与えられない厳しい条件の中で磨き続けてきたジョセフジャパンのアンストラクチャーな仕掛けは通用しなかった。
 アルゼンチン戦の後、欧州を移動し続けての3連戦ということで疲れがあったこと、ウェールズ戦の後ということでモチベーションとしても難しかった面があったことも選手の証言として聞かれた。
 そうした経験も含めて、集合前には半数以上がノンキャップ組だった若いチームがこの1か月間に起きたことを糧に大きく成長を遂げたことは疑いのない事実だろう。
「4週間でずいぶん遠くまできた。チームの半数は初めて日本代表としてプレーする選手たちだったが、ジョージアに勝ち、ウェールズにも勝てそうだった。今日は完敗だったが、それでもとても素晴らしいツアーになった」
 少なくとも、そんな新指揮官の言葉が信じるに値するものであるパフォーマンスを垣間見ることができた欧州での戦いとなった。(文:出村謙知)