107年ぶりとなる初出場・初優勝は逃したものの、難攻不落のウイングドフットGCで開催された全米オープン(9月17日~20日/ニューヨーク州)で、最後まで優勝争いを演じたマシュー・ウルフ(21歳/アメリカ)の名は、世界中にとどろいたに違いな…

 107年ぶりとなる初出場・初優勝は逃したものの、難攻不落のウイングドフットGCで開催された全米オープン(9月17日~20日/ニューヨーク州)で、最後まで優勝争いを演じたマシュー・ウルフ(21歳/アメリカ)の名は、世界中にとどろいたに違いない。

 トップで迎えた最終日。ブライソン・デシャンボー(27歳/アメリカ)に逆転を許して、惜しくも2位に終わったが、ラウンド後のウルフの表情に落胆の色はなかった。そして、その第一声は「(今大会では)ものすごくたくさんの手応えを得た」と自信に満ちたものだった。



初出場の全米オープンで優勝争いを演じたマシュー・ウルフ

 第3ラウンドでは、ティーショットが不安定でフェアウェーを捉えたのは、わずかに2度。それでも、「65」をマークして単独トップに立った。通算5アンダー、2位のデシャンボーに2打差をつけて最終日を迎えた。

 しかしその最終日は、ウルフの流れではなかった。思いどおりのゴルフを展開できず、3番パー3でティーショットを左に大きく曲げて、ボギーが先行。続く4番でデシャンボーがバーディーを決め、あっという間にトップに並ばれた。

 9番パー5では、デシャンボーが11mのイーグルパットを先に決め、ウルフも3mのイーグルパットを入れ返して意地を見せたが、後半最初の10番でボギー。後半もミスのないプレーを続け、付け入る隙を与えないデシャンボーとの差は広がるばかりだった。

 終わってみれば、ウルフは5つスコアを落として通算イーブンパー。片や、デシャンボーは3つスコアを伸ばして通算6アンダーと、6打差をつけられての敗戦となった。

 ラウンドを終えて、「ウイングドフットで行なわれた過去2回の全米オープンだったら、5オーバーで優勝だったのに......」と、ウルフはほんの少し悔しさを覗かせたが、4日間の戦いについては、満足しているようだった。

「負けてしまったけど、このウイングドフットで4日間を通算イーブンパーでプレーできたことは、すばらしいことだと思う。この結果を誇りに思って、前を向いて、次の戦いに向かっていきたい」

 今回、この全米オープンで初めてウルフのプレーを見た人は、きっとその独特な"変則スイング"を見て驚いたことだろう。

 打つ前のルーティーンでは、アドレスに入ってから、一度ターゲット方向に左腰を切って、そちらにお尻を向ける動作を入れる。さらにバックスイングでは、左足を大きくヒールアップ。一度見たら忘れられない、ユニークなものだ。

 しかし、これらは「すべて飛距離に直結する」とウルフ。実際に今回の全米オープンでも、昨シーズンのドライビングディスタンス1位のデシャンボーを、オーバードライブするシーンが何度も見られ、今季の同スタッツでは平均333.6ヤードで5位につけている。

 ウルフは、ロサンゼルス郊外出身の21歳。ジュニアキャンプに参加したことがきっかけで、本格的にゴルフを始めた。

 スイングも個性的だが、性格も周囲に惑わされることなく、"我が道をいく"タイプ。オクラホマ州立大に進学し、2年生だった昨年6月、NCAAの個人タイトルを獲得すると、即座にプロ転向を決意した。

 2018年の全米アマを制した同じオクラホマ州立大出身のビクトル・ホブランド(23歳/ノルウェー)、8月の全米プロ選手権を制したコリン・モリカワ(23歳/アメリカ)らとプロ入り同期で、そろって注目を集めた。その中で、真っ先にツアー優勝を飾ったのは、ウルフだった。

 ウルフは、初のメジャー参戦となった8月の全米プロ選手権でも奮闘。優勝は盟友モリカワに譲ったものの、自身も最終日に「65」をマークして、4位タイという結果を残している。そして、今回もメジャー2戦目の挑戦となる初出場の全米オープンで2位。大舞台で強さを発揮している。

「ボクはメジャーで勝つ準備ができている。今回、それが改めて実感できた」

 熾烈な戦いを終えて、最後はそう言って胸を張ったウルフ。次なるメジャーは、11月のマスターズ(11月12日~15日/ジョージア州)となる。

 本来「初出場には難しい」と言われるオーガスタ・ナショナルGCだが、難コースに適応する能力が備わっていることを、ウルフは今回の全米オープンで証明した。初のマスターズでも、そのプレーぶりが大いに注目される。