27日に行われたF1第10戦ロシアGPではメルセデスのルイス・ハミルトン(35)=英国=が歴代最多タイ記録となる通算91勝目を飾るかが注目された。結果は3位だった。ポールポジションからスタートを切ったが、途中でレーススチュワードから10秒…
27日に行われたF1第10戦ロシアGPではメルセデスのルイス・ハミルトン(35)=英国=が歴代最多タイ記録となる通算91勝目を飾るかが注目された。結果は3位だった。ポールポジションからスタートを切ったが、途中でレーススチュワードから10秒のピットストップペナルティーを科されて事態が一変。ペナルティー消化で一時は11番手まで後退してしまい、チームメートのバルテリ・ボッタス(フィンランド)に勝利をさらわれた。
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F1最多勝に並ぶことができなかったメルセデスのハミルトン(メルセデス提供)
「もちろん、これは予期していたこと。彼らは僕を妨害しようとしている。ただし、これで構わない。今は集中力を切らさないようにしないといけない。これからどうなるか見てみよう」。レース後のハミルトンの発言が物議を醸した。ペナルティーを出したレーススチュワードの判断に敢然とかみついたからだ。
ペナルティーは決勝前のレコノサンスラップ(下見走行)で、スタートの練習を規定と反する場所で2度行ったことが問われ、「5秒ペナルティー×2」を科された。
スタートの練習をするのは問題ないが、「スタート練習はピット出口信号の先の右側のエリアでのみ行うことができる」という取り決めがあったという。ハミルトンはピット出口から100メートル以上も先でスタート練習を繰り返したために罰則を受けたようだ。
ただし、この取り決めがあるのはF1の競技規則ではなく、ロシアGP期間中の26日に国際自動車連盟のレースディレクターから各チームに通達された「イベントノート」。日本語に訳せば「大会注意事項」だ。それには「ピット出口信号の先」とは明記されているが、何メートル先の地点までなのかについては触れていない。
ちなみに日本の道路交通法を参照すると、駐停車禁止場所の項目があり、「交差点の側端又は道路のまがりかどから5メートル以内の部分」と具体的に規定している。同じスポーツでも野球規則には必ず数値を使って厳格にルールが定められている。走塁については次の場合、ランナーはアウトとなると前置きして「ランナーが、野手のタッチを避けて、塁間を結ぶ直線から3フィート離れて走った場合」などとしている。
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F1ロシアGPのスタート(メルセデス提供)
それらと比較すると、F1は細かい内容が盛り込まれている技術規則は別として、競技面に関しては、どの規約がルールブックとして適用されるかを含めて非常にあいまいだ。ハミルトン本人も「ルールがどうなっているのか、何がどのように間違っていたのかを確認する必要がある。こんなくだらないことで5秒のペナルティーを2つももらった選手はいない。しかも僕は誰も危険にさらしていない」と抗弁した。
F1の規則には不可解なものもある。例えば、赤旗中断中にピットレーンでタイヤ交換ができること。F1ではドライのレースではタイヤ交換が義務付けられており、赤旗中断の前にタイヤ交換を済ませて順位を下げた選手にとっては非常に不公平になる。「赤旗=レースがストップ」であれば、赤旗が出た時点でタイヤ交換などの作業を禁止にすべきだと思うが。
「歩くルールブック」と呼ばれて、選手からも信頼を置かれていたチャーリー・ホワイティング前レースディレクターが急死したのは昨年の第1戦オーストラリアGPの開幕直前だった。そこからF1の規定に関する問題が頻出しているようにも見えなくない。
ハミルトンは勝利を逃したことで、ミハエル・シューマッハー(ドイツ)が持つ最多勝記録に並ぶことができなかった。レース中にペナルティーが出されなければ、大差をつけての勝利でつまらないレース展開になっていたかもしれないが、後味が悪くなったことだけは間違いない。
[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]
トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)
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