欧州遠征中の日本代表は、26日、ツアー最終戦となるフィジー代表とのテストマッチを中立地であるフランス・ブルターニュ地方のヴァンヌで迎える。 エディージャパン時代には倒せなかったフィジアンマジック。走り出し、ボールをつなぎ出したら、なかなか…

 欧州遠征中の日本代表は、26日、ツアー最終戦となるフィジー代表とのテストマッチを中立地であるフランス・ブルターニュ地方のヴァンヌで迎える。
 エディージャパン時代には倒せなかったフィジアンマジック。走り出し、ボールをつなぎ出したら、なかなか止まらない南の島出身のアスリート軍団に対して、こちらも欧州に来てからの2試合で記録した7トライ全てをBKスリーで奪っている、ジョセフジャパンが築きつつあるランニングラグビーで立ち向かう。

 ハイブリッド芝だったプリンシパリティスタジアム(旧ミレニアムスタジアム)と違い、フランス北西部ヴァンヌのスタッド・ドゥ・ラ・ラビーヌのグラウンド状態はどう見ても超・重馬場だが、そんな悪条件があっても双方が自分たちがこだわるボールを動かすラグビーに活路を見出そうとするのは間違いないだろう。

 その一方で、ジェイミー・ジョセフHCが試合のポイントのひとつとして強調するのが「スクラム」。
「フィジーはとても強いスクラムを持っている。ここで不利になると自分たちのゲームプランが限定されることになってしまう」
 7トライ全部をBKスリーで取ったり、キックも使いながらアンストラクチャーに持ち込むことを厭わない思い切ったアタックが光るジョセフジャパンだが、「押されるという感じはなかった」(HO堀江翔太共同主将)というスクラムの安定がウェールズを地元で追い詰めるパフォーマンスを見せたベースにあったことも確かだろう。

「いい状態できてる。慎さん(=長谷川慎スクラムコーチ)からこういうスクラムを組むという明確なビジョンが出されて、それに対して各ポジションに対する細かい落とし込みもされている。フロントローはこうする、LOはこうする。NO8、FLはこうする。短い期間で各自がそれぞれの役割が理解できていると思う」
 フロントローとして最多キャップを誇るPR畠山健介は、新たな組み方にチャレンジしているジャパンのスクラムの現状をそんなふうに肯定的に捉えている。
 HO堀江共同主将と共に、前回、日本がフィジーに勝った2011年のパシフィック・ネーションズカップ時にもプレーした経験を持つ畠山はフィジーのスクラムの印象を次のように語る。
「2013年にフィジーとやったとき、すごい押されたイメージが残っている。それに、いまはフランスでフィジーの選手たちもプレーしていたり、セットピースに対する意識が変わってきたというのも聞いている。グラウンドも良くないし、かなりプレッシャーがかかってくるのではないか」

 畠山によると、フィジーのスクラムの方向性は「バックファイブの意識が高い。日本と同じマインド」だという。
 確かに、それはフィジーの先発FW8人中7人がフランスでプレーしていることと無縁ではないかもしれない。
 畠山が語ってくれているとおり、いまジャパンが取り組んでいるスクラムは長谷川コーチがFW陣に落とし込んでいるもの。その長谷川コーチ自身、2003年のワールドカップでジャパンの第1列としてフランスと対戦した時のスクラムに衝撃を受け、その後、ヤマハ発動機FW陣で「どのチームも組み方が違う」というフランスにスクラム稽古に行くなどしながら、8人でどう組むかを追求してきた。
 ヤマハ発動機のPRとしても長谷川コーチの下でスクラムを組み続けてきた仲谷聖史は、やはりフランスでプレーするFW陣が多かったジョージアと対戦した後、「まだ求められているスクラムには到達していない。もっと、8人全体で、組んでいく感じがしないと。後ろからの圧力があって挟まれている感じがいいスクラム。もっと積み上げられる。でないと、あの圧力には対抗できない」と、自己評価していた。

 ジョセフHC体制になって4戦目。共にフランスにゆかりを持つ同士がどんなスクラムを組み合うのか。ランニングラグビーのベースを支える、前8人の男たちのせめぎ合いが勝敗の少なくない部分を左右することになる。(文:出村謙知)