専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第273回 いきなり「プレミアムクラブ」と言われても、何のことか、さっぱりわかりませんよね。 そこで、まずはメンバーシップコースの予約の歴史について、順序立てて説明させてもらいます…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第273回
いきなり「プレミアムクラブ」と言われても、何のことか、さっぱりわかりませんよね。
そこで、まずはメンバーシップコースの予約の歴史について、順序立てて説明させてもらいます。そのなかで、プレミアムクラブのことが登場するので、詳しくはそこで解説したいと思います。
日本のゴルフ場は2000強あると言われていますが、およそ90%がメンバーシップコースだそうです。メンバーシップですから、当然メンバー同伴か、メンバーの紹介がないと、ビジターはプレーできません。こうしたことは1990年代初頭、バブルが崩壊するまではわりと守られていました。
ところが、バブルが崩壊すると、世の中的に「ゴルフなんかやっている場合じゃない」となり、次第にメンバーシップ制度が崩れていきます。メンバーやメンバーの紹介者だけでは、予約が埋まらなくなってしまったからです。
そこで、コース側はメンバー制を守りつつも、ビジターをこっそりプレーさせたい――そう考えて、打ち出した手段がこれです。
◆友の会・年次会員制度
例えば、1年間3~4万円を払えば、平日のラウンドが割引でプレー可能。8~10万円払えば、土日も割引でプレー可能、といったものです。
バブル崩壊後は、特に平日の営業が苦しくなって、こうした「友の会」を始めるコースが増えました。この制度は、理事会で承認を得られれば実現できるので、多くの倶楽部で「平日は仕方がない」と承認されることになっていったのです。
◆ゴールドクレジットカード予約
また、メンバーでなくても、ゴールドやプラチナのクレジットカードの持ち主であれば、ゴルフ場が予約できるようになっていきます。しかも、普段はなかなか予約の取れないプレミアムコースで、です。
ゴールドカードを持っているお客は信頼度が高く、価格を高く設定しても利用してくれます。だから、コース側も割引ナシなら「数組、入れてもいいか」と思うようになっていくんですね。
過去に神奈川の超名門倶楽部が、クレジットカードで予約したビジターのお客さんを受け入れたことがありました。ひと組で12万円ほどの売り上げがあるからで、そこまで払ってラウンドをしたいのなら「どうぞ」ってことなんでしょう。
◆予約サイト百花繚乱
それからしばらくして、いよいよゴルフ場の予約サイトが登場。そうしたサイトがどんどん増えて、今やパソコンやスマホで簡単に、誰もが都合のいい日に好きなコースを予約して、プレーできるようになりました。
しかも、コンペまで予約できますから、もはやメンバーシップ制度は、平日においてはほぼ崩壊しました。
◆プレミアムクラブ
こうした状況のなか、予約サイトの"高級版"みたいな扱いで登場したのが、冒頭でも触れたプレミアムクラブです。
2000年度の初頭あたりから始まったもので、数万円の入会金や年会費を払って同クラブに入会すると、さまざまな特典が得られます。その特典について、以下にざっと挙げてみます。
(1)名門コースがラウンドできる
ネット予約不可の名門コースでも、プレミアムクラブ会員であれば、予約が可能に。通常、井上誠一や上田治などの名設計家のコースはかなり敷居が高いのですが、そこでプレーできるとなれば、名門好きにとってはたまらないシステムなのではないでしょうか。
名門コース側としても、予約数が限られているため、さほど負担にはなりません。それに、プレミアムクラブの運営会社は、大手ネット通販会社やゴルフ関連会社だったりするので、付き合いもあって、「そういう話なら」と受けてしまうんですな。
(2)コンペ&競技会の開催も
プレミアムクラブでは、定期的に同会員による親睦コンペや月例などの競技会を実施しています。それも毎月、どこかしらの名門コースで行なわれます。
普通はラウンドできないコースでコンペや競技が行なわれて、それに参加できるなんて、夢のよう。ホームコースと勘違いしてしまいますね。
実のところ、名門コースはプライドが高いので、ビジターを入れることはほとんどありません。でも、平日はガラガラで困っていました。そんななか、プレミアムクラブがコンペや競技会を開催してくれる。名門コースとしては、非常に助かるわけです。
マナーや品位の問題も、時間と空間を貸す主催者に任せてありますから、コース側の負担は少なく、いろいろとメリットが多いのです。
このように、お客さん、コース側と双方にいいことずくめのプレミアムクラブですが、まだ淡々と活動している感じで、ブームとまではいきません。
それは、なぜか? 次にデメリットを見てみましょう。
(1)毎回名門はしんどい
名門コースでのラウンドとなれば、毎回ジャケットを着て、かしこまってプレーしなければなりません。メンバーならともかく、ビジターにとってそれは、精神的にしんどいんです。
毎日、ステーキやうなぎを食べてみてくださいよ。胃がもたれるでしょ。結果、「たまには、ざるそばが食べたい」と思うのと同じです。
お金だって、バカになりません。平日とはいえ、名門コースのビジター料金は結構しますからね。プレミアムクラブ会員として割引があったとしても、ボディーブローのように財布に響いてきます。
結局、いざという時、たとえば「大事な接待で、名門コースでのラウンドを準備しなければいけない」――そういう時のために、キープしておく感じになるんじゃないですか。
(2)猫に小判=オヤジに名門
プレミアムクラブの何がすごいのか? それは、井上誠一や上田治、赤星四郎といった昭和の名設計家が造ったコースでラウンドできることです。
だから、彼らの設計思想、設計理念などを勉強しておく必要があります。それも知らずにプレーしても、それは"猫に小判"=オヤジに名門であって、名門コースのありがたみがまったく感じられず、そのよさを何ら理解できずに終わってしまうでしょう。
「東の井上。西の上田」と並び称された井上誠一と上田治。実は、ふたりの設計家には、ものすごいライバル心がありました。特に上田治のほうに......。
その昔、"井上・上田戦争"が北の大地、北海道で繰り広げられます。
札幌ゴルフ倶楽部輪厚コース(1958年開場)を設計した井上誠一は、すでにその名を北海道に轟かせていました。そしてそのタイミングで、上田治にも設計の依頼がきます。そこで上田治は、井上誠一にも負けない、すばらしいコースを手がけるのです。それが、樽前カントリークラブ(1963年開場)です。
当時、噂によると景気のよかった某重工グループが「お金はいくら使ってもいい」と、上田治に依頼したとか。実際、クラブハウスが牧舎風なのに、中は超モダンでびっくりします。
で、肝心のコースの仕上がり具合はどうだったのか?
上田治設計の南・中コースは、コースレート74.8(チャンピオンコース)。この数字から、そのコースのすごさがおわかりだと思います。あとは、ご自身の目で確かめてみてください。
こういう設計のロマン話は、好きな方にはたまらないでしょう。プレミアムクラブを使いこなすには、ある程度の知識が必要になりますね。
最近はビジターであっても、多くのメンバーシップコースでプレーできるようになりました
さて、時はさらに移り変わって今、プレミアムクラブの先のスタイルに関心が寄せられています。それがこれ、です。
◆1人予約ランド
今や、(株)バリューゴルフが運営する予約サイト『1人予約ランド』でも、名門コースでプレーできるようになっています。現在、かなり人気を博しているそうです。
『1人予約ランド』については、今度あらためて掘り下げますので、詳しくはその際にお話しさせていただきます。
◆超最新予約システムは「アパ直」方式
コース側が予約サイトに依頼すると、手数料を取られます。だったら、お客さんからの予約を、コース自らが受ければいい。ということで、徐々に主流になっているのが、この方式です。
平日であれば、誰でもラウンドできるようにして、ホームページから予約してもらうわけです。さすれば、コース側は手数料を取られることもないし、お客さんも最安値でエントリーできます。まさに「アパ直」予約。
最近のメンバーシップコースは、「平日は誰でもプレーできる」といった形に変化しつつあります。そうして、自分のところで直接予約を受け付けます。そのほうが、安くて、手っ取り早い。これも、IT化が進んだおかげです。
いろいろとコースを選びたいなら、予約サイトを利用して、好きなコースが決まっているなら、直接コースに予約。目的別に予約方式を選ぶ時代になりましたね。