写真特集>>名カメラマンが厳選。美しき世界のF1グリッドガールたちMotoGP第8戦で優勝したマーベリック・ビニャーレス   MotoGPはシーズン第8戦を終え、7戦のレースで異なる6人の優勝者が出た。9月20日に決勝レースが行なわれたエミ…

写真特集>>名カメラマンが厳選。美しき世界のF1グリッドガールたち




MotoGP第8戦で優勝したマーベリック・ビニャーレス

 
 MotoGPはシーズン第8戦を終え、7戦のレースで異なる6人の優勝者が出た。9月20日に決勝レースが行なわれたエミリアロマーニャGPは、内容・結果ともに、波瀾に満ちた今年のシーズン展開を象徴するレースになった。

 先週の第7戦サンマリノGPに続き、第8戦はミザノワールドサーキット・マルコ・シモンチェリで開催された。今年のMotoGPはさまざまな点で例年と異なる様相を呈しており、シーズンを語る際には枕詞のように「ストレンジ」「クレイジー」「ビザール」という形容が必ず用いられる。そもそも冒頭の書き出し、「シーズン第8戦を終え、7戦のレース」というところからして、数字の計算があわない奇妙な文章だ。

 これは周知のとおり、開幕戦のカタールGPではMotoGPクラスが、新型コロナウイルス蔓延の影響でキャンセルになったことに起因する。そのために、今年のMotoGPクラスは中小排気量のMoto2・Moto3と比べると、開催レース数がシーズンの大会数よりも1戦少ない計算になっている。

 その2020年7戦目で今季6人目の初優勝者となったのは、マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)だ。シーズンが再開した7月半ば、MotoGPクラスにとっては今季最初の戦いになった2連戦をファビオ・クアルタラロ(ペトロナスヤマハSRT)が連勝して以来、毎戦入れ替わり立ち替わり、異なる選手が優勝してきた。その7選手のうち、クアルタラロを含む4名がMotoGP初優勝という事実もなかなかに尋常なことではないが、今回優勝したビニャーレスは、昨年終盤の第18戦マレーシアGP(11月3日決勝)以来、10カ月ぶりの勝利になる。

 ビニャーレスは、土曜の予選でポールポジションを獲得。日曜の決勝では独走優勝を達成......と書くと、レースウィークを彼が完全に支配していたようにも見えてしまう。だが、事実は決してそうではない。

 土曜午後の予選で、圧倒的な速さを見せていたのは、MotoGP2年目のフランチェスコ・バニャイア(プラマック・レーシング/ドゥカティ)だ。皆から「ペコ」の愛称で呼ばれるバニャイアは、前週のサンマリノGPで最高峰クラス初表彰台の2位を獲得。実はこのレースは、右脚脛骨(けいこつ)骨折からの復帰戦で、まだ松葉杖をついて歩くような状態だった。

 2週連戦の今回も脚の状態に大きな変化はなかったが、前戦の表彰台が大きな自信になって、フリープラクティスの段階から上位につけていた。土曜午後の予選では、ビニャーレスが圧倒的な速さでサーキットのオールタイムラップレコードを更新した直後に、さらにそれを上回るタイムを叩き出した。しかし、ごくわずかにコースの限界をはみ出していたとしてラップタイムがキャンセルされ、2列目5番グリッドからのスタートになった。

 日曜のレースでは、6周目にビニャーレスを抜いてトップに立つと、あとはぐいぐいと引き離して独走モードに持ち込んだ。シーズン5人目の劇的なMotoGP初優勝選手が誕生するのは確実にも見えたが、レースが終盤に差し掛かった21周目に転倒。これにより、2番手を走行していたビニャーレスがトップに浮上した。ビニャーレスも3番手以降を大きく引き離していたために、バニャイアが消えたことでトップを独走する形になった、というのが今回のレースの「ストレンジ」な顛末(てんまつ)だ。 



MotoGP第8戦のマーベリック・ビニャーレス

 転倒ノーポイントで終えたバニャイアは、レース後に「転んだラップのデータを見ると、その前の周と同じ箇所でブレーキングして同じラインを走り、バイクのリーンアングルも同じでスピードもまったく一緒だった」と明かし、「なにか路面の汚れにでも乗ってしまったとしか思えない」と寂しそうな笑みを浮かべた。

 とはいえ、それもレースだ。どれほど速く走っても転倒で終えてしまえば、そこから先のことはすべて「たら・れば」でしかない。優勝した選手は、最後まで高い水準を安定して維持し、コンスタントに走り続けていたからこそ、勝利を引き寄せることができたのだから。

 その点に関していえば、今年のビニャーレスは、予選で驚異的なスピードを発揮しても日曜の決勝でずるずると順位を下げることが多く、「土曜日に速いライダー」というあまりうれしくない呼称も得ていた。だが、今回の優勝でその汚名をみごとに返上した格好だ。

「今回の決勝レースでは、燃料が満タン状態の序盤からうまく走れるセットアップがみつかった」と話し、「このセットアップの変更で、ブレーキングの際にもタイトなラインでコーナーへ入っていけるようになった」と、決勝レースでも速さを発揮できた理由を説明した。

 しかし、その反面では「(もしもバニャイアが転倒していなければ)レース終盤に追いつくことはできたと思うけれども、追い抜くことまでできたかどうかはわからない」とも述べて、バニャイアの圧倒的なスピードを正直に認めてもいる。

 そしてこの結果により、シーズンの推移を示す20年の年間ランキングもじつに「クレイジー」な様相を呈している。

 現在、首位に立っているのは84ポイントのアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)。2位はクアルタラロで83ポイント。3番手のビニャーレスも83ポイント。優勝回数の差で、クアルタラロが上位に来ている。4番手は、今回のレースで2位に入ったジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が80ポイントで続く。7戦を終えて、ランキング首位が、わずか84点ということがそもそも奇妙だし、首位から4点以内に4名がひしめく状態も、そう滅多に見られる光景ではない。

 さらにいえば、このランキング上位4名のなかでじつはもっとも高い安定性を発揮しているのは、最高峰クラス2年目で優勝をまだ経験していないミルなのだ。ここ4戦のリザルトを比較すると、ドヴィツィオーゾ(1−5−7−8)、クアルタラロ(8ー13ーDNFー4)、ビニャーレス(10ーDNFー6ー1)、ミル(2ー4ー3ー2)という結果で、ミルの安定性が際立っていることがよくわかる。

 20年のMotoGPクラスは、全14戦が予定されている。つまり、今回のエミリアロマーニャGPを終えて、ちょうど全カレンダーの折り返しを迎えたことになるわけだ。次の日曜(27日)に決勝が行なわれる第9戦カタルーニャGPから、シーズンは残り7戦の後半戦に差し掛かる。緊密なチャンピオン争いと、まったく予想のつかない戦いは、これからますます混迷の度を深めてゆく。残るレースの数だけ、つまりここから先に7回のどんでん返しが続いたとしても、決して驚くにはあたらないだろう。